表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
綺羅五芒星  作者: 床擦れ
自軫之章至井之章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/40

井之章「孟章は来援したり、泰山の区園を探る」 三話

 各々おのおのまったいきしている最中さいちゅうだった。いているはずだったが、陵光りょうこうなぞは孟章もうしょう詰問きつもんらしき言葉ことば一瞬いつしゅんいきまらせた。

 すこつばんだあとに、陵光りょうこうくちひらいた。

「やらかした、とうと正直しょうじきには」

「んだ? そんなにけがれたことをしたのか」

「そういうわけではい。ただ何故なぜ敵対てきたいしたのかということ自体じたいが──」

「わからねえか」

「ああ」

 孟章もうしょうおのれ碧緑へきりょくかみいて、くちほほゆがませている。

 舌打したうちがる。

孟章もうしょう苦労くろうけたな」

んだよ。あんだけさわいでたら見付みつけるにまってる」

 すこやすもう、と孟章もうしょうくわえた。おのれらがどうこうというより、丁淩ディンリン具合ぐあいからそうおもったらしい。

 些細ささいに、かすれるおとつつまれた。

 おときながらも、監兵かんぺい執明しゅうめいはどうしているのかと陵光りょうこうくばった。執明しゅうめいこしけて静寂せいじゃくとしているが、監兵かんぺい姿すがたい。いつのに、とあたりをさがした。

 くさおとがしている。孟章もうしょうほうからではないかとかんじた陵光りょうこうは、そちらにけた。

 やはりそうであった。孟章もうしょう背後はいごで、監兵かんぺい瑠璃色るりいろげられていた。

兄哥あにき──」

 監兵かんぺいこえはつした瞬間しゅんかんうしろから孟章もうしょうかみおもはじめた。

 孟章もうしょう大力だいりきぬしとはいえ、乱暴らんぼう手練てだれている監兵かんぺい不意ふいかれると、対処たいしょのしようがい。

いてえからめろ! 豎子ぼうず!」

 孟章もうしょう大呼だいこしているが、監兵かんぺいおさえたがらなかった。つなくようにからだかたむけてさえいる。

 これでは、いきなり仲違なかたがいするのではないか。そう不安ふあんになった陵光りょうこうは、いそいで監兵かんぺいそばまわった。そしてつづけている監兵かんぺい手首てくびつかんで、ねつめた。

「あつっ!」

 孟章もうしょうかみから、監兵かんぺいはなれた。けるとき吐息といきが、孟章もうしょうくちからこぼれている。

 陵光りょうこう監兵かんぺい手首てくびつかんだままで、孟章もうしょうあたまきずいていないかをたしかめていた。もちろん孟章もうしょうもそこまでもろ身体からだではかろうが、という前置まえおきもしながらである。

 監兵かんぺいにぎには、よわねつつづけている。わめかれはしたが、あまり簡単かんたん自由じゆうゆるすにもいかない。

「すまねえ」

 孟章もうしょう陵光りょうこうしゃしてきた。陵光りょうこうまゆしかめつつ、それにこたえた。

い。──監兵かんぺいわたしとなりいておくが、孟章もうしょうくなよ」

「だな。しばらくのあいだに、こういうことわすれちまってた」

 孟章もうしょうあざけようわらっていた。あたまさすかたるに、本当ほんとうはだいぶいたかったのかもしれない。だがこうしてながせるのは、孟章もうしょうらしい部分ぶぶんでもある。

──こういうものこそが徳者とくしゃなのだ

 などと、陵光りょうこうはつくづくおもっていた。

 とはいえ、である。

 陵光りょうこう監兵かんぺいいて、孟章もうしょうとのあいだおのれはさんですわらせた。監兵かんぺい孟章もうしょうがわきたがったが、そこはかためてしたとした。

「──はあ。んで、執明しゅうめいは」

 孟章もうしょう今度こんどは、執明しゅうめいけている。

 執明しゅうめい片膝かたひざてながら、ほか会話かいわくことにてつしていた。再会さいかいじゅんじてなぜ言葉ことばはつしないのか、そういう意図いと孟章もうしょうったのだろうと、陵光りょうこうおもっている。

いでしょ? せっかくはやめにえたんだから、すこしくらいいてても」

「それも、そうだな」

 執明しゅうめい返答へんとうに、孟章もうしょうこまかくうなずいていた。かおくもっているようにもえた。

「でも、なんだけど」

 執明しゅうめいはなしえようとしている。話題わだいけるのに、陵光りょうこう相手あいてとなった。

違和いわが」

よろいい。いてきちゃったわよね?」

 執明しゅうめいめずらしく、めるような微笑ほほえみをたたえていない。くびかしげて、だけであおっている。

 陵光りょうこうおのれうでた。汉中ハンチョンあがなったくろはだぎそでである。つねよろいとしていた金銀きんぎん腕甲わんこうではい。

 途端とたん

──やってしまった

と、慚愧ざんきした。げることに夢中むちゅうで、よろい存在そんざいをついわすれていた。よろいければ、なに変事へんじこったとききわめて不利ふりになる。ひと相手あいてには必要ひつようくても

「もしもかいれば、このころもでは不安ふあんですね」

という判断はんだんは、容易ようい出来上できあがった。

 このなかでは唯一ゆいいつ孟章もうしょうだけがよろいまとっている。頑丈がんじょう腹帯はらおびうろこ模様もよう腕被わんぴ腰布こしぬのまったわっていない。なにこってから孟章もうしょうばかりにたよるのも、あまりに偏重へんちょうとなる。

「ならば、しにきましょう」

 そのように陵光りょうこうった。

いけど、どうやる?」

 こういうさく部分ぶぶんには、絶対ぜつたい執明しゅうめいくちはさむものであった。

よろいおそらく、いまチェなかるでしょう。だとすれば、ふたたなかむしかありません」

みなくの?」

「そのようにはしません。丁淩ディンリン殿どのこともある」

「で?」

 執明しゅうめい片膝かたひざてた。それを両腕りょううでかかえながら、陵光りょうこうへとたずねてくる。

 当然とうぜんだという調子ちょうしで、陵光りょうこうこたえた。

孟章もうしょうと、わたしで」

 った途端とたん孟章もうしょう意外いがいというかお陵光りょうこうた。

おれか? 執明しゅうめい監兵かんぺいは」

い。執明しゅうめい殿どのには不意ふいときに、単独たんどくげられるようにしていただきたい。監兵かんぺいは、その護衛ごえいを」

 監兵かんぺい面白おもしろさそうであった。だが陵光りょうこうにとっては

──土地とちかんがえれば、もっと適当てきとう

というかんがえがある。

 執明しゅうめい一柱ひとはしらごとのかお確認かくにんしたあとゆびかお沿わせている。

「そうね。ってらっしゃい」

 肯諾こうだくはやかった。執明しゅうめいおおよそ、それでいだろうとおもったらしい。

「では」

かれは、わたしたちよね?」

丁淩ディンリン殿どのですか。おねがいしたい」

「ええ」

わかっていただけたのなら、それでまいりましょう。孟章もうしょうこう」

「ん? ああ。そんじゃまあ、いっちょそうすっか」

 孟章もうしょうこしげた。

 執明しゅうめいへと監兵かんぺいよろしくたのむとげた陵光りょうこうは、指向しこうほどこし、いちどおくにまではいった山林さんりんからふたたまち方角ほうがくへとりてった。

 街路がいろちかく、視界しかいひらける直前ちょくぜんである。

 木々きぎあいだからこうがわに、まったくとはえずとも人衆にんしゅうつどっているのがえていた。

 陵光りょうこうすでに、大桿刀だいかんとうにしている。

「そんなもん、めずしいな」

 孟章もうしょう大桿刀だいかんとうへと関心かんしんけてきている。たしかに陵光りょうこうからしてみても、さきいのなか使つかはじめたばかりであった。

多少たしょうな」

義兄弟きょうだい多少たしょうってえと、そんなかんじもしねえが──」

「それより、孟章もうしょう準備じゅんびしたらどうだ?」

 話題わだいつような陵光りょうこうげんに、孟章もうしょう右手みぎて何度なんどかるにぎっている。

おれらの相手あいてひとだろ?」

ひとだとってるんだな」

「──まあな。そいつらにてん兵器へいき使つかうのか?」

 陵光りょうこうわずかに口籠くちごもった。かんがえをととのえたあとで、しかしとくちひらいた。

とおざけるんだ」

兵器へいきでか」

「そうだ。徒手としゅたたかえば間合まあいがれないだろう。ならば兵器へいき使つかい、けさせたほうくはないか?」

 孟章もうしょうだまっていたが、なにわないまま、にぎっていたみぎ掌中しょうちゅうおのあらわした。

 ちょう八尺はちしゃく柄周えまわ一尺いちしゃくはんみね部分ぶぶんにもしつらえられ、孟章もうしょうはそこを把持はじしている。

義兄弟きょうだいとおりだな。そうする」

 ひくこえだったが、すくなくとも信頼しんらいした口調くちょうだと陵光りょうこうかんじていた。孟章もうしょうなにず、陵光りょうこうという神格しんかくみとめるところがある。

 陵光りょうこうにとって、よく理解りかいできる安堵あんどであった。

「よし。すきができたら、くぞ」

 陵光りょうこうげた。

 孟章もうしょうくびから、陵光りょうこうへとけた。

──わかった

 ということなのだろう。それから木蔭こかげまぎれて、二柱ふたはしら只管ひたすら時機じきった。

 つづけたが中々なかなかすきまれない。

 きがおおいのである。それぞれの複雑ふくざつ交差こうさして、警戒けいかいしない瞬間しゅんかんされない。陽動ようどうをしてみるにもなったが、二柱ふたはしらだけでやることでもかった。

 丁淩ディンリンぎょし、陵光りょうこうらがはこばれていたチェに、警察ジンチャほか多々たたひとあらためをけているのもえる。あまり直接ちょくせつよろいれられるのもまずい。

まずくねぇか」

 陵光りょうこうおなじようなかんがえを、孟章もうしょうくちにしている。

まずい」

はやこうぜ、もうつべきじゃねえだろ」

 そうかもしれない、と陵光りょうこうおもった。ならばとうごことめた。

わたしうえから」

おれしたか」

「そうしてくれ。わたしさつないところから、一足いつそくチェにまで」

「よっしゃ、そうしろ」

 孟章もうしょうは、陵光りょうこう表情ひょうじょうしかりと見据みすえたあと単身たんしん木蔭こかげからった。

 その姿すがた衆前しゅうぜんあらわになるまえに、陵光りょうこううえへとがった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ