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綺羅五芒星  作者: 床擦れ
自軫之章至井之章

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鬼之章「危に東を指すを画し、泰山下に窿を望む」 三話

 おののいたか、怒気どきつめたくしたか。

 陵光りょうこうおそかい四肢ししねた瞬間しゅんかん珍物ちんぶつかこんでいた怪共かいどもかお陵光りょうこうへとけた。

 い、と陵光りょうこうおもっている。おんなもとめていた珍物ちんぶつからそむかれることは、そのまま守護しゅごする珍物ちんぶつ十全じゅうぜんつながるのだ。

 ならば猶更なおさら陵光りょうこうはもっとけられるようにためすのがい。

 威嚇いかくおびやかすより、かい殄滅てんめつしたい。残党ざんとうれば、またまつおそうかもしれなかった。

 陵光りょうこう下手へた火焔かえんおこさず、無慮むりょってみた。けんさきけている。

 よわそうなてき、というのはかいもっとたたかいたがる。本能ほんのうである。そして陵光りょうこういまままでにあつっていたかい姿すがたである。

 様態ようたいはなはだしくするためにも、陵光りょうこう周囲しゅういへの気配きくばりをだけでしている。うごきのはやいもの、そして仲間なかま意識いしきつよいもの。それらがまずは突進とつしんしてるのだ。

 はねかいと、ぐうなりをしたかいがそうであった。

 羽怪うかい然程さほどおおきくなかった。ねずみのようなたけじゅう二十にじゅうれてくる。

 陵光りょうこうあしうごかさないままにけんはらいつつ、禺怪ぐうかいうごきもっていた。禺怪ぐうかいあやおおく、派手じゃでですらいた。叫声きょうせい呵々かかわらようである。せてひくくし、きつ見開みひらいて陵光りょうこうすきうかがっているらしい。

 けんおおきくまわす。

 脇腹わきばらく。できた陵光りょうこうすきに、禺怪ぐうかいんできた。

──なり

 陵光りょうこうひらいた脇腹わきばらじるように上体じょうたいとし、そのうごきにけんしたがえさせた。

 いままで加減かげん終始しゅうししたせいか。ちからこもり、禺怪ぐうかいのみをろうとしたのにけんにめりんだ。

 自然しぜんか、禺怪ぐうかいたけらしくれた。

 陵光りょうこういききながら、がった視界しかいげた。てみれば、かいはまだしゅうしている。

 かいしゅうへとるのに、陵光りょうこうはしらなかった。るものからるように仕向しむけた。禺怪ぐうかいたぐいずるさを発揮はつきしてけようとしているが、獰猛どうもうさのえるかいはそうでもい。

 ちゅうなれしかかいは、その一端いつたんであった。

 むちようである。それをまわし、あるいはなにかにけて、うえから陵光りょうこうおそおうとした。

 しなやかではあるが、れないものでもさそうである。陵光りょうこうかってきたからかがめ、とおところいた。

 たれ、麋怪びかい甲高かんだかきながらちる。陵光りょうこう一瞥いちべつもせずに、ちた麋怪びかいくびった。

 珍物ちんぶつ無事ぶじか。陵光りょうこう目配めくばせをして、平気へいきそうだとみとめた。そしてそのときまるったから、幼子おさなごらしいともった。

 使つかわない。無駄くだねつまとえば、む。

──そんなものに、これだけまとうか

 陵光りょうこうすこしくかいさげす気分きぶんにすらなった。それでもいまは、徐々じょじょいみんでいけばいともかんがえている。

 それからは禺怪ぐうかい麋怪びかい、そして端々はしばしあらわれる羽怪うかい。これらを着実ちゃくじつたいらげていった。

 幼子おさなごへと近付ちかづいていく。あと一歩いつぽやく一四〇(ひゃくよんじゅう)センチメートル)という距離きょりまでて、また禺怪ぐうかい一匹いつぴき陵光りょうこうかってきた。

 何度なんど陵光りょうこうってきた相手あいてである。からくもく、鼻面はなづらからよこった。

 おそってくるかい姿すがたが、えるところにはくなっている。陵光りょうこうけんほどき、両手もろてけた。

 せていた幼子おさなごげる。陵光りょうこううでなかかおる。

くな」

 最初さいしょ、そう言葉ことばけた。幼子おさなごてみると、ひたいかすきずいている。意識いしき明然めいぜんとして、双眸そうぼうはそのまま陵光りょうこうとらえていた。

 どうかえろうか、経路けいろ陵光りょうこうかんがえた。そして、このまま幼子おさなごかかえてやまり、りきったところ自由じゆうにすれば間違まちがいとおもえた。

 それでこう。陵光りょうこうめたときである。

 やましげみがにわかにはじめている。えだおとほかに、にぶ跫音あしおとらしきものもこえてていないか。れているのである。すくなくともけているとはおもえない。

 幼子おさなごろそうかともおもった。ろして不条理ふじょうりやすのもいけないからめた。

 おと一層いつそうおおきくなる。えだれるおとが、かたくなっていた。

 斫音しゃくおんちかところ一発いつぱつともいななよう呼吸こきゅう

 陵光りょうこうころがした。むねはら幼子おさなごくるみ、てた。

 つちすこしかかったが、まずうごきはしていない。

 こした。は、何事なにごとかがこった方角ほうがくへとすでけていた。

 おおきなかげまわりにおなじように、それよりすこちいさなかげがある。すべてが四足しそくである。

 おおきなかげうしようであり、ちいさなかげうまようであった。

 はかるに十五じゅうごあまり

 うしごとかいひと)のかおあかうまごとかいからだあやがあり、みず気配けはいがする。とくうしかいほうが、ちからつようにおもえた。

 牛怪ぎゅうかいく。赤子あかご喤々こうこうのようである。

 陵光りょうこうたすべき幼子おさなごかかえたまま、左手ひだりてへとけんふたたあらわした。

 牛怪ぎゅうかいつたえてるのは、目的もくてき陵光りょうこうというより幼子おさなごであるということである。

 垂涎すいぜんもしている。るにおか相手あいてであるとさだめているらしい。ならば陵光りょうこうも、幼子おさなごはなわけにいかない。

 牛怪ぎゅうかい昂奮こうふんのまま、つのけてくる。

 陵光りょうこうちゅうけた。すぐに仕留しとめんともおもったが、まわりの馬怪ばかいかこんできている。

 このままちていくのもあぶない。陵光りょうこう真下ましたぎぬようすこし抑えて、まわりへと火焔かえんはなった。

 かべにもなるまい。馬怪ばかいかんじたみず本当ほんとうならば、かまわずに闖入ちんにゅうしてくるはずである。陵光りょうこうそなえた。

 たしてりたとき、そのとおりとなった。

 牛怪ぎゅうかい躊躇ちゅうちょしているが、馬怪ばかいえてくる。

 陵光りょうこうけんった。中程なかほど馬怪ばかいはだへとれた。しかしたわむようにはじかれた。

 みずに、らぎされるようにである。

──こうなるか

 陵光りょうこう下手へたけんあつかわず、幼子おさなごふところうちまるめさせ、うえけんかざして馬怪ばかいひづめからまもるにてつした。

 うえ馬怪ばかいぎるたびおもみがかる。陵光りょうこうえながら牛怪ぎゅうかいかおうかがった。

 睹視としされている。あしいてもいる。ならば意気いき軒昂けんこうであろう。

 げるか、ともかんがえかけた。確固かっこかんがえとなるまえまちへのがいおもいはかって、あたまやした。

 ここでえるのもつらさがある。いまところ打開だかい端緒たんしょい。

 だが幼子おさなごだけは、なんとかしようとおもった。さいわ馬怪ばかいほう幼子おさなご興味きょうみいらしい。

 陵光りょうこううでから、幼子おさなごはなした。同時どうじえん火焔かえんおこした。一端いつたんのぞいてである。

 すこしだけ、馬怪ばかいながれが途切とぎれた。

ゾウ!」

 陵光りょうこうつように大呼だいこした。

 幼子おさなごし、火焔かえん途切とぎれた一端いつたんからさせる。おのれたがえて、火焔かえんけて牛怪ぎゅうかいへとんだ。

 牛怪ぎゅうかい反応はんのうしている。陵光りょうこうにである。これならねらどおりであった。

 陵光りょうこうけない。つちこすれんばかりのたかさでくうみ、ごと牛怪ぎゅうかい間近まぢかつとけんげた。

 牛怪ぎゅうかい左目ひだりめとらえた。たてれ、牛怪ぎゅうかいもだねている。

 あばかたはげしくなるまえに、陵光りょうこうあしけんとうともおもった。牛怪ぎゅうかいのそのあたりをってもいた。

 だがそれが、警戒けいかいおこたらせていたらしい。

 えぬところからかたもの肩口かたぐちにぶつかる。

 牛怪ぎゅうかいつのではないか。そう陵光りょうこうかんじた。だから一度いちどけんくだきにかった。

 するとれて牛怪ぎゅうかいの、きっとこしであろうところかれた。

 陵光りょうこうにとって不利ふりとはえなくとも、牛怪ぎゅうかい大力たいりきである。その大力たいりきたいしてすこあなどぎていた。

 ばされるからだつぎにはよこから、とおざけていた馬怪ばかい群団ぐんだん陵光りょうこういた。

 じゅう餘匹よひき水気すいきかいまれる。陵光りょうこうにとって痛手いたでであった。

 丁度ちょうど鳩尾みぞおちはいったのもいくらかる。けられて、藻掻もがくしかできなかった。

 数度すうど咳込せきこんで、かたからあたまげる。

 つぎたのは至近しきんる、牛怪ぎゅうかいいたかおであった。

 また衝撃しょうげきがあって、陵光りょうこうんだ。

 完全かんぜんよわった、とうまでにはい。それでも一度いちど油断ゆだんおおいにきわまっているとはわかる。

 ひねった。幼子おさなご姿すがたかった。だからちかられてもい。

 陵光りょうこううえ怪共かいどもした、されども真正面ましょうめん見据みすえるようにたいした。

 赤熱せきねつしたけんりかぶる。めるなら必中ひつちゅうだった。

 とらえようというとき。どこかから牛怪ぎゅうかいへ、弾雨だんうそそいだ。

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