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綺羅五芒星  作者: 床擦れ


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柳之章「三柱を疑わ可から使むに、人人出師す」 四話

 左右さゆうる。へい各々おのおのに、とどまっているチェ監察かんさつしているようであった。かずすくないが丁寧ていねいである、と陵光りょうこうにはおもえた。

 ただ、確実かくじつとらえようという気配けはいともちがう。兵共へいども完全かんぜんにはまっていない。

 陵光りょうこう丁淩ディンリンうかがった。ぎょするが、かなり筋張すじばっている。りなんとうべきだった。

 吉凶きちきょう丁淩ディンリンぎょうでにもかっているだろうし、三柱みはしら目立めだたぬことにもかっている。すくなくとも人々ひとびと陵光りょうこうらにてきしてしまえば、まえよりもずっとうごにくくなるのだ。てんかいしょうじたときおなじようなことを、陵光りょうこうらをかいがわとしてほどこされかねない。

 丁淩ディンリン手机ショウチー手繰たぐっている。

 地図ちずたしかかめているのだろうと陵光りょうこうさつした。ここにるまでにはやまおおかった。そういうてしてみちすくない。その不安ふあん丁淩ディンリン仕草しぐさあらわれたのだ。

執明しゅうめい殿どの

なに

監兵かんぺいうしろで、すぐにられないように」

 陵光りょうこうった途端とたん監兵かんぺいして猜疑さいぎをぶつけてきた。

「なんで!?」

 そのくちを、執明しゅうめいいたおおった。

「ね?」

 やさしく執明しゅうめいうと、監兵かんぺいいきゆるませていた。つぎ陵光りょうこう言葉ことばけたのは、その執明しゅうめいであった。

せない?」

きびしいです」

進路しんろは」

ってもふさぐにやすい。ここは山間さんかんです」

 陵光りょうこうから言葉ことばした執明しゅうめいは、やりりのなか納得なっとくしたらしい。そして陵光りょうこう

──これは間違まちがいいなくいになる

という予感よかんは、すぐにつたわったらしかった。どこかあきれたようないき執明しゅうめいからこえたこと証左しょうさであろうと、陵光りょうこうおもっている。

「もうひとつ」

 陵光りょうこうはまた、会話かいわ突端とつたんいた。

丁淩ディンリンつたえるのね」

「はい」

 陵光りょうこうにとって、執明しゅうめいあつかづら相手あいてである。だが必要ひつようときに、これだけみじか言葉ことばでもたつしあえるというのは、むしろなによりもらく相手あいてであった。

 現地げんち言葉ことば簡単かんたんに、執明しゅうめい丁淩ディンリンいている。丁淩ディンリン前方ぜんぽうへとひとみさだめながらも、みみだけ執明しゅうめいこえけていた。

 やりりをえ、丁淩ディンリン何度なんどうなずいた。

「──只能(zhǐ néng)这样了(zhèyàngle)

 腰元こしもとてこを、丁淩ディンリンいている。決心けつしんかれなかでもかたまりはじめているらしい。

わたします」

 陵光りょうこうチェけつつった。執明しゅうめいかたれる。陵光りょうこうにとってつめたたすぎるである。

わたしじゃい?」

貴女あなたには間合まあいがある」

監兵かんぺいは?」

きわまってからでよろしい」

陵光りょうこうである必要ひつようは」

うごけ、れます。間合まあいも不過分ふかぶんい」

「ならきなさい。でも監兵かんぺいすとなったら、どうしましょう?」

 執明しゅうめいためしているのだ。ぬすむような肚立はらだたしいが、同時どうじめてもいるのだ。それをかんった陵光りょうこうきわ

「そうなれば、きにさせよ」

と、おのれかんがえたままにつたえた。

 路面ろめん建屋けんおく外縁がいえんには禿げた山肌やまはだ目立めだつ。チェからりた陵光りょうこうは、あたりをそのように見渡みわたした。

 陵光りょうこう紅色べにいろかみえぬわけい。さらえば、緊張きんちょうした目立めだ総身そうしんあらわしたのも不可解ふかかいであろう。

 陵光りょうこうに、へいらのしかいた。

站住(zhànzhù)!」

 りながらってくるものる。へい一人ひとりであった。

 陵光りょうこうはわざとしずやかなかおけ、へい応対おうたいした。

なにでしょう」

 へいした。たぶんふだたぐい、このであれば身份证シェンフェンチュンせとっているのだろう。何度なんどちからめるあたり、かなりかしにている。

 陵光りょうこうくびよこり、ないいとしめした。へい猶更なおさらいぶかしんだ。

 丁淩ディンリンぎょするチェが、すきいてはしはじめる。まわりはいていた。だが反応はんのうおくれていた。

 まえへいこえげかけている。言葉ことばとしてきるまえ陵光りょうこううでり、側頭そくとううでたたきつけた。

 へいぶ。

 せようとしにものを、ぎゃく陵光りょうこう背負せおげた。

 叫声きょうせい步枪ブーチアンかまえられていると陵光りょうこうは、そらみつつ左手ひだりてけんあらわ先端せんたんとした。

 へいかお恐懼きょうくいが、動顛どうてんる。おなことこってなかったのだろう。

──うえだな

 陵光りょうこうはすぐにんで、ならんでいる屋宇おくうへとった。

 たたかれているほど、うえてきるのを嫌悪けんおする。陵光りょうこうしたうかがい、ちかくの兵共へいども一斉いつせいあおがれていた。

 これで丁淩ディンリンも、多少たしょうぎょやすくなる。

 陵光りょうこうびつつ、ともがらチェうごきにも注意ちゅういしながらへいおそった。

 うえからかぎりは、執明しゅうめいチェなかから左右さゆう応戦おうせんしているらしい。監兵かんぺいしていない。

──えろよ監兵かんぺい

 そのように陵光りょうこうねんじている。

 チェかう方角ほうがくへいれば、陵光りょうこう排撃はいげきした。加減かげんはする。そのため陵光りょうこうた。

 へいけんてるときにはてずにした。けんはらて、はたく。それでもねつへい皮膚ひふ少々しょうしょうあかくなっていた。なお勇敢ゆうかんなままであったへいには、ふくうえからはだをなぞるよううすきずけた。

 もう一度いちど屋宇おくううえつ。へいチェしているのか。

 まだ、そこまでではい。ともがらかうさきへいすくない。もうとどまらぬほういかもしれない。

 陵光りょうこうかおうとした。数歩すうほして、あしうら突張つっぱった。

──らす

 陵光りょうこうはまたり、へいきつついくらかのうしなわせた。

 へい胆気たんきおとろえてきている。

 ともがらすこはなれたろうとはかった陵光りょうこうは、がり、くうんで、チェかったであろう東方とうほうけてまたたった。

 湟源ホアンユエンひがしよん五里ごりである。

 ともがらチェ陵光りょうこう見付みつけ、その天板てんばんへと着地ちゃくちした。そのれとおとられたのか、よこまどから執明しゅうめいかおしてきている。

陵光りょうこう、どう」

 窓枠まどわく腰掛こしかけ、かぜかみかおへとまとわせながら執明しゅうめいたずねてくる。

 陵光りょうこう片膝かたひざて、わせた。

ものすくないでしょう、ですが──」

わかった」

承知しょうちなされましたか」

さきわからない、でしょ」

 陵光りょうこう一度いちどくびたてった。

執明しゅうめい殿どのはまだいましめられますか」

当然とうぜん。この中はいそがしいわね」

 諧謔かいぎゃく執明しゅうめいまじえてくる。

 陵光りょうこうわらうことはない。おのれ執明しゅうめい奔放ほんぽうさすらぜて、つね仕切しきっていたと自負じふしている。そういうこころかお強張こわばらせた。

「とにかく。このまま」

 陵光りょうこう天板てんばんしばらく、とどまるとつたえた。

 そのままチェみちはしっていた。

 そこからやすどころい。湟源ホアンユエンから六十ろくじゅう西宁シーニイというまち西端せいたんはいった。

 まえとおったこともある。おぼえているのは、湟源ホアンユエンよりも際立きわだっておおきい市街しがいであるという観察かんさつだった。まるところ湟源ホアンユエンよりもあやうい、などという憶測おくそくつ。

 陵光りょうこう目立めだたぬよう、チェ天板てんばんから屋宇おくうかげへとった。

 湟源ホアンユエンときおなじようにともがらまもり、全体ぜんたい俯瞰ふかんするためである。ついさっきのれい大逸だいそれて行為こういするなど、まった必要ひつようい。

 陵光りょうこうはなれてチェいつつ、所々ところどころひとうごきをた。そしてかんがえた。

──ここからさきおおきな市街しがいとお

 つまり包囲ほうい一旦いつたん、ここまでであろうという推測すいそくがある。

 仰々ぎょうぎょうしいチェるか。へいなど警邏けいらするものないか。陵光りょうこうつぶさたしかめた。

 るはる。だが、どうにもまばらである。もしかしたら市街しがいおおきいゆえに、そこまで各所かくしょかずけないのか。

 ならばあしはやめてもい。陵光りょうこうが、いきいたときである。

兄々にいにい、どう?」

 突然とつぜんこえ陵光りょうこうは、咄嗟とつさそなえていたけんてた。緊張きんちょうもあった。姿貌しぼうすべてまえに、言葉ことばづかいでおもした。

監兵かんぺい何故居なぜいる」

 チェとどまれ、とどまらせよとったはずではないか。伝達でんたつ不全ふぜんもよおしたのだと、陵光りょうこうすこしばかり慍然うんぜんとした。

 監兵かんぺいも、陵光りょうこう表情ひょうじょうにはさとい。

「ちがうの兄々にいにい。おねえちゃんが兄々にいにいきなって──」

 わけがましくもある。陵光りょうこう発露はつろしかけた感情かんじょうおさんで、すこし文脈ぶんみゃくしらべた。

執明しゅうめい殿どのは、ほかっていたか」

兄々にいにい一緒いっしょなら平気へいき、って」

 執明しゅうめい意図いともつて、監兵かんぺいほうったのは真実しんじつらしい。ふむ、と納得なっとくふくまない相槌あいづちって、執明しゅうめいかんがえをはかった。そして

──監兵かんぺいたづなわたしにぎれ、ということか

という解釈かいしゃくで、なんとかんだ。

わかった。ならば、これからひとまもれ」

「うん」

わたしから、一丈いちじょうえてはなれるな」

 陵光りょうこうおもいた、監兵かんぺい羈縻きびするため発案はつあんである。

 監兵かんぺいれたこえ返事へんじをした。

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