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綺羅五芒星  作者: 床擦れ
自軫之章至井之章

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柳之章「三柱を疑わ可から使むに、人人出師す」 二話

 宿舎しゅくしゃまわりが一拍いちはくいて騒然そうぜんとした。陵光りょうこう執明しゅうめいこえがりきるまえに、なんとか監兵かんぺいちかくの一人ひとり二人ふたりせいしていた。

 しかしあたりを見回みまわせば、監兵かんぺいばしたへいはなれた路傍ろぼうからだけている。おと気付きづいた数多あまたへいが、一挙いっきょ緊張きんちょうはしらせていた。

──監兵かんぺいだった

 陵光りょうこうは、もうすこ仕方しかたったかもしれないとこころすみおもっている。

「とにかく、かれれてきて」

 とも執明しゅうめいが、陵光りょうこう視界しかいそとった。

監兵かんぺいは」

れてって」

承知しょうちした」

 陵光りょうこうはややも、本当ほんとう執明しゅうめいだけでそとおさえられるのかとかんがえた。だが監兵かんぺいたづなにぎために、陵光りょうこうるべきということではないかと思考しこう往復おうふくした。

 陵光りょうこう監兵かんぺいぎゃくきそうになったのを、って宿舎しゅくしゃなかはいっていった。

 うちさわがしい。戸口とぐちからそばだってすぐに、へい数人すうにん陵光りょうこうへとけてきている。

 どうするべきか。寸時すんじかんがえてから、陵光りょうこうけんあらわさず、徒手としゅのみでへいたいすとめた。

 執明しゅうめい使つかっていた步枪ブーチアンらしき武具ぶぐかわし、手脚てあし使つかってっていく。ひとうごきは陵光りょうこうでも簡単かんたんせいせるものである。だからけん使つかえば、加減かげんむずかしかった。

監兵かんぺいっておく」

「なに?」

武具ぶぐすな。そして徒手としゅでも、でる程度ていどにしろ」

「うむ」

 陵光りょうこう加減かげんむずかしいということは、つまり監兵かんぺいにはもっといちじるしいはずであった。

 陵光りょうこう監兵かんぺいれて、宿舎しゅくしゃちゅうろうはしった。監兵かんぺいはなれかければ、無理むりにでもちかくにせて自由じゆうかせないようつかいもした。その態度たいどたもったままで、へいほとんどを陵光りょうこうっている。

 陵光りょうこううしろから、かべいたおとがした。

「監兵か。つよすぎるぞ」

兄々にいにいったとおりにしたもん。でてる!」

 監兵かんぺい足元あしもとには、へい力無ちからなせっていた。

──まさかんでいないだろうな

 とは、陵光りょうこうおそれたところであったが、いろがまだいのをて、そのままにした。

 きざはしのぼっていき、丁淩ディンリン部屋へやまえにまでいた。しろ装飾しょうしょくまっている。

 陵光りょうこうけんあらわした。

「いいの? して」

 こえくに、監兵かんぺいくちがっているらしい。

かんがえてのことだ」

 陵光りょうこうかまわず、けん交差こうさった。けたあとができ、中央ちゅうおうるとくだけたように四散しさんした。

 ひらいてからえたのは、椅子いすすわ丁淩ディンリンと、みどりふくへい二人ふたり見張みはっている様子ようすである。

 へい肩元かたもとにはあか五稜ごりょう高級こうきゅうというわけではいだろうが、什長じゅうちょうくらいではあるのだろう。表情ひょうじょうれば、すくなくとも使つかわれるだけのがわにはえなかった。

 へいらはだけで驚愕きょうがくしている。だがからだだけは、步枪ブーチアンはし陵光りょうこうへとけていた。

 監兵かんぺいそうになる。陵光りょうこうめた。そして一歩いっぽへいふところもぐり、步枪ブーチアンさき右手みぎてにぎってねつめた。

 陵光りょうこううちから步枪ブーチアンけ、えきとなってしたこぼれていく。左手ひだりてへいかたてていた。

わかろう」

 陵光りょうこうしずかにげた。もう片方かたほうへい陵光りょうこうねらっていたらしいが、つぎにはたかさけんだ。

 う。ゆかゆび数本すうほんちていた。

監兵かんぺい! おまえは──」

「ちがう! 兄々にいにいけんしてたから」

 監兵かんぺい鉤爪かぎつめやいば内側うちがわ数滴すうてき

 やってしまったか、というのが陵光りょうこう落胆らくたんもとだった。監兵かんぺい性分しょうぶんかんがえれば、指数本ゆびすうほんであったのがまだすくいだったろう。

 どうにもできない。けた步枪ブーチアンえきで、ゆかあないている。ほかわざわいきるまえに、丁淩ディンリンさき部屋へやからした。

 陵光りょうこう監兵かんぺいすことどまり

へいはこぶ」

ということをやろうとした。このまま放置ほうちしてうらみをるよりかはい。監兵かんぺいこまかくは理解りかいしていなかったようだが、ひとみだけうえけるようなかおうそいていないとえた。

 数人すうにんずつ。うしなっているもの傷痍しょういかかえて、宿舎しゅくしゃ戸口とぐちみちびくまではした。

 屋外おくがいからおびただしくおとまじわりがひびいてくる。たぶん執明しゅうめいへいあらそっているのだ。すでそとかけている丁淩ディンリン陵光りょうこういて、ほかくちからようとしめした。

 前後ぜんごて、せまくちさがした。即断そくだんができない。陵光りょうこうはすぐにえた。

監兵かんぺいまえけ」

「──うん、おねえちゃんは」

わたしからぶ。まわりをろ、くのならなせ」

 陵光りょうこうはそれだけった。

 監兵かんぺい陵光りょうこうそと二度にどずつてから、そとていく。らしい金切かなきこえが、すぐにみみはいった。

 陵光りょうこう寸毫すんごういて宿舎しゅくしゃ戸口とぐちけた。丁淩ディンリンかたささえている。まだ体調たいちょうとうではいらしい。

 視界しかいあかるくなると、すぐにこえった。

執明しゅうめい殿どの執明しゅうめい殿どのきますぞ!」

 陵光の声に、周りの兵が睨んだ。目を向けてきた兵から、監兵と水弾に襲われた。

 丁淩ディンリンチェひがしほうめられていたはずである。いそいでてきたから、よろいひろわねばならない。やることはおおい。

陵光りょうこう!」

 執明しゅうめいこえうえからってきた。咄嗟とつさ

──あまり見上みあげてはいけない

かんがえて、陵光りょうこうかざすだけでこたえた。執明しゅうめいからは、ふたたびの返事へんじい。だが、いま仕草しぐさだけでつうじているはずである。

 陵光りょうこう丁淩ディンリンともチェへとはしった。そのうごきに監兵かんぺいしたがっている。

「おねえちゃんは!?」

「あまりさぐるな、まずいてこい」

 二柱ふたはしら一人ひとりひとである丁淩ディンリンは、ささえられながらとはいえはしるのにはなはくるしそうでもあった。むねおさえて、ときどきせきんでいる。

 チェいたころには、丁淩ディンリンいきえであった。

「ここで」

 陵光りょうこう丁淩ディンリン両肩りょうかたおさえ、すわらせた。うしろで監兵かんぺいが、へいないかを見張みはっている。

監兵かんぺいいか」

「ん」

「ここで丁淩ディンリン殿どのチェを守れ」

「いいの?」

 監兵かんぺいこえしずんだがした。もしかすればさき失敗しっぱいやんでいるのか。

い。りつすればめん」

 陵光りょうこうとしても、これしかない。よろいひろわねばならず、丁淩ディンリンチェ満足まんぞくでなければならない。陵光りょうこうよろいひろいにくつもりであり、いま混乱こんらんおそわれたとき必要ひつようなのは、不全ふぜん規律きりつよりも圧倒的あっとうてき抑止よくしであった。

 監兵かんぺいかおた。おさなさがうすくなっているがした。

ってくる」

 陵光りょうこうみじかげて、よろいはいったふくろりにかった。

 街衢がいくである。へいうごきをるに、執明しゅうめい位置いちさぐっているらしかった。

 いまならば、陵光りょうこううごきやすい。

 たかくしないよう慎重しんちょうになり、さき陵光りょうこうらがひそめていた建屋けんおくかげへともぐった。

 ふくろみつつ。りはしたが、へい数人すうにん検分けんぶんしている。

 へいしたからうごいていない。そのすき陵光りょうこうした。

 一人ひとりばし、二人目ふたりめせ、三人目さんにんめまたあいだけんやいばてた。步枪ブーチアンけられていたが、やいばしをつよめて使つかわせなかった。

 せたへいくびめて失気しつきさせ、やいばてられているへいひとみらしたのを見計みはからい、そのたれていた步枪ブーチアン両断りょうだんした。

 陵光りょうこうくちひらいていたふたつのふくろじて、どうはさむようにかたけ、丁淩ディンリン監兵かんぺいへともどった。

執明しゅうめい殿どの!」

 チェちかくにまでかえった陵光りょうこうは、そうこえげた。ほかたたかっていたはずの執明しゅうめいたのである。

 周囲しゅういにはへいからだころがっている。

「──いくらほど」

 陵光りょうこういた。

監兵かんぺいちゃんがやるまえに、わたしがやっておいた。平気へいきよ」

 わせながらはなしていると、どうにも執明しゅうめいですら、大変事だいへんじになっていまいかという不安ふあんかかえているらしい。

加減かげんりましたか」

わたし得意とくい

「そうですか。チェげましょう。丁淩ディンリン殿どの如何いかに」

 陵光りょうこういつつ、チェかっていた丁淩ディンリンうかがった。まだ蒼白そうはくとしているか。

せなさい」

丁淩ディンリン殿どのチェぎょせましょうか」

いまげるほうさきかれためにも」

 執明しゅうめいチェひらき、丁淩ディンリンめるようにせた。そして自身じしんは、チェうえけている。

なにを」

わたし天板てんばんる」

あやういですよ」

一番いちばんいでしょ。それが」

 陵光りょうこう其々それぞれ武具ぶぐ使つかかたおもした。たしかにそうだとおもい、ならば陵光りょうこう丁淩ディンリンよこき、監兵かんぺいうしろにそなえさせるべきだとさとった。

 いそんだ。ぎょせきすわった丁淩ディンリン

よろしいですか」

けると、丁淩ディンリンちからはいっていないまま、右手みぎて親指おやゆびてた。

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