表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
綺羅五芒星  作者: 床擦れ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/40

張之章「成都に巫の名を求め、二柱は衢を縦横す」 五話

 陵光りょうこうらは宿駅しゅくえきやくしょからはなれた。陵光りょうこうまえで、監兵かんぺいあとである。西にしき、またいけって、そのほとりこしろした。

──やくしょとどまるべきなのか

 陵光りょうこうかんがえもしたが、結局けっきょくまわりにかいないとたしかかめて、すぐにはなれた。

 れたくないというより、とどまってはいけないと考えた。はなぎわはしで、巨大きょだいた。何度なんどてつつばさが、火中かちゅうった。

監兵かんぺいきずったか」

 やす最中さいちゅう陵光りょうこういた。

 監兵かんぺいまわし、肩胛けんこうれている。

「ちょっと、よそした」

 いた陵光りょうこう監兵かんぺいうしろにって、かたけさせた夹克ジャアクウがし、れているあたりを注視ちゅうしした。

なにがあった」

うしろからものげられた」

「それだけか」

 監兵かんぺいうなずいている。陵光りょうこうて、すこした。いやがる様子ようすかった。

「なら、いだろう」

 陵光りょうこうはまた、監兵かんぺい夹克ジャアクウかぶせた。そして宿駅しゅくえき方角ほうがくに、った。

 あかひかりぼやけている。

 くだんは、これほどおおきいのだ。

「もうすこし、とどまる」

「なんで?」

かいおおすぎる。私達わたしたちすこし、おさえねばならない」

「ああ──」

 監兵かんぺいも、陵光りょうこうさき気付きづいているらしい。

兄々にいにいね」

なにるか」

ひとんだらもどらないって、ばあってたよ」

「そうなのか」

「あたしたちには、わかんないけどねぇ」

 陵光りょうこうすこしだけ拱黙きょうもくした。

 せきおもいとつたえたいのか、後腐あとぐされをするなといたいのか。すくなくともひとという存在そんざい希薄きはくぎないとは、てきたうち理解りかいしている。

 あるいは、どちらでもあるのか。監兵かんぺい語彙ごいたないから、なりにっただけなのか。

明朝みょうちょう、またってみよう。どうなるかはわからん」

 陵光りょうこうしずかにうと、監兵かんぺい口角こうかくげてだくしていた。

 それから何日なんにちもを、成都チェンドゥ邏巡らじゅんてた。

 宿駅しゅくえきおりより数日すうじつかいりをひそめたが、それからあとはまた見掛みかけるようになった。度毎たびごと二柱ふたはしらかいほふり、まわりをまぬように奔走ほんそうした。

 かいきなかったが、原因げんいんはたぶん成都チェンドゥの、とく西方せいほう山水さんすいめぐまれているためであろうとおもえた。そのくらがりが湧元ゆうげんになっているのだ。

 因縁いんねんかさなりにかさなって、けば一月ひとつきちかくを成都チェンドゥごしている。まわりでは

──红发(hóng fā)勇士(yǒngshì)

なる言葉ことばも、うわさとして吹聴ふいちょうされはじめた。

 しくじったというも、いとはえない。

「おぉ、兄々にいにい

 監兵かんぺいぬすうつが、とおくからの陵光りょうこうらをとらえている。

「いい、はやくしろ」

 陵光りょうこう監兵かんぺいいて、ひと場所ばしょってすすんだ。

 いまところおもむこうとも、ってさせてはいけない。もしもられれば、かいあらわれたときあやうくなるのだ。

 監兵かんぺいというのも、路上ろじょうてられていたものである。それだけ目立めだった、ということでもある。

 陵光りょうこう迂闊うかつであった。こうもさわてられると、成都チェンドゥからの出奔しゅっぽんむずかしくなる。すでおのれ元々もともとやりたいこと、つまり雨瓔ユーインさがすという目的もくてき矛盾むじゅんしてはいまいか。

 あるきながらうめいた。

 はだぎけたせいで、陵光りょうこう監兵かんぺいも、よろいのままでうごくようになっている。ひと服飾ふくしょくたからわかる。このよろい煌々こうこうとしすぎている。

 もう行動こうどう隠匿いんとく両立りょうりつきびしい。

兄々にいにい

「よし、どうした」

「またにおいがするの」

 監兵かんぺいもなんとなく、大人おとなしくなってきたか。陵光りょうこう苦悩くのうが、伝播でんぱはじめたか。

「またか」

「また。だよ」

 陵光りょうこうかみいた。相手あいてであれば、監兵かんぺいまえぎてはいけない。はやめにけんを、あらわした。

 監兵かんぺい嗅覚きゅうかくしたがって、まちなかへとれる。まわりのはもうい。それははらくくった。

 眼前がんぜん楼閣ろうかく根本ねもとたしかに羽怪うかいうずいている。

監兵かんぺいまわりをけ。ひとかくまえ」

「ぬん!」

 監兵かんぺいはなれていく。

 だれなくなったと確信かくしんしてから、陵光りょうこううずへとんだ。

 えんえがくのなら、その流路りゅうろけんるえばい。おおきくるうよりもちいさくかずって、らすよりもけずっていくのだ。

 たぶん数百すうひゃくではないかと、陵光りょうこうている。

 渦中かちゅうひとおそわれているか。いや、おそわれていない。ならばあま過敏かびんにならぬでい。陵光りょうこうは、ただまえ神経しんけいった。

 監兵かんぺいはどうしているのか。すくなくともちかくにはない、てはこまる。とおくでこえる衆声しゅうせい勘付かんづけばきっと、そこにかっている。

──すこつよめるか

 陵光りょうこう剣身けんしんかざした。まとわせる火焔かえんさからせた。

 またるう。どうにもおおい。うずだけではいのか。

 他方たほううず隙間すきまからそらおびえる。あれもなのだ。

 すこきわまった、とおもった。ここまで煩雑はんざつしていると、羽怪うかいだけではもする。

 予感よかんとおくの、咆哮ほうこうった。

「ええい──」

 はらからいきく。けん円盤えんばんる。火焔かえん軌跡きせきついえないうちから、ってきた獣怪じゅうかいえた。なすしかない。うしろは羽搏はばたおとえない。

 重庆チョンチン蛇怪じゃかいつよさとはちがう、かずあつである。

 咆哮ほうこうからけてきた、斑猫はんびょうたたく。羽怪うかいかわす。一度いちどにやった。りながらかんがえよ。

 ふといままでの成都チェンドゥ地勢ちせいおもった。そういえばちかくにみずながれている。

 まさか、とさとった。

兄々にいにいよこ!」

 監兵かんぺいこえなにかんがえずからだまえばした。

 って、なおる。かいえた。そのまさかだった。

監兵かんぺいひとがしたか!」

「みえるのは!」

 かってきた羆熊ひゆうを、陵光りょうこう一太刀ひとたちした。

わたしうしろにい!」

 監兵かんぺい素早すばやく、陵光りょうこうく。流石さすがあそところではいとかんじているらしい。

 陵光りょうこうんできた羽怪うかいを、監兵かんぺいがいせぬようにふせいだ。

 だが羽怪うかいめぐり、もしもかこまれたらあまりにわるい。

だいなるほういか」

「やらせて」

け。わたしとどめる」

 監兵かんぺいうなり、斑猫はんびょう羆熊ひゆうれをほふりにった。そのうごきが羽怪うかいいた。

 けたうずを、陵光りょうこうはしからいていく。

 足元あしもとから介怪かいかいっている。

 かいとはすいよわければたいしてもいが、かずにてゆかができていた。おおすぎるのだ。群羊ぐんようこえが、介怪かいかいつくられたゆかからひびいている。

 ころすかいなか、ちららすかではなくて、どこまでえられるかであろう。かたさがさねばならない。

──何故なぜこんなに

 そういううたがいもある。

 おとからするに、監兵かんぺいはまだ余裕よゆうがある。

 陵光りょうこう火焔かえん都度つどおこして、足元あしもと介怪かいかいとおざけつづけた。ねつされるごと路面ろめんけゆく。

 これではくるしいから、そろそろるか。

「──ん」

 陵光りょうこうの耳にこえてきた。チェおとつづみのようでもある。ってたとわかると、余程よほど頓狂とんきょうか、ぎょもできないかの何方どちらかであるとはんじた。ならばいっそ、そのチェ使つかってみるか。

 甲高かんだかおとれたのだ。

 わずかかにった。

そおぅをん!」

 陵光りょうこうおけかがめた。あたまかすめるようにたまぶ。

 じゅうあまり羽怪うかいちた。陵光りょうこう火焔かえんかべして、うしろへ退いた。

 陵光りょうこうわきをすりけて、またいくらものたまはなたれた。

 水気すいきかんじた。

執明しゅうめい殿どの!」

雨瓔ユーイン!」

 おもわず執明しゅうめいげた陵光りょうこうに、おんなこえこたえた。こえ執明しゅうめいである。

 なぜるのかときたかったが、するひまい。

 ならばと陵光りょうこうは、監兵かんぺいた。

監兵かんぺいわれ!」

「いや!」

ちがう! もうわたしがやる、かいたのむ!」

!」

気付きづかないのか!」

 監兵かんぺい瞬時しゅんじまった。それからはなにわなくてかった。

 わる。陵光りょうこう獣怪じゅうかいる、監兵かんぺい介怪かいかいく、水弾すいだん羽怪うかいく。

 混乱こんらんすこし、均衡きんこうはじめた。あなえてきている。これならばれる。

そおぅをん!」

 今度こんどは、監兵かんぺいへとけられたのだ。まって執明しゅうめい射撃しゃげきするときける音声おんじょうである。

 獣怪じゅうかいちらばらばっていくのを陵光りょうこうは、執明しゅうめいであろうこえかえりみた。

 くろ袖無そでなしのはだぎ濃灰色のうかいしょく牛仔裤ニウザイクウにはらぬほうられている。

 ほう先端せんたんまわり、数多あまたたまはなたれた。羽怪うかいことごとどううがたれていく。

 羽怪うかいびつつ監兵かんぺいも、介怪かいかいごとえぐった。

──他に居ないか

 陵光りょうこうしずめていく。気配けはいほとんい。

 吐息といき。やっとけんほどけた。

大変たいへんだったわね──」

 雨瓔ユーインこたえたおんなが、まったチェへともどろうとしている。

たれよ」

なにかしら?」

 おんなすこし、()()()()としているか。

 陵光りょうこう監兵かんぺいしめして、このままにするのか、と無言むごんめた。

 雨瓔ユーイン、もとい執明しゅうめいは、当然とうぜんだろうというかお陵光りょうこうらに、チェゆびした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ