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綺羅五芒星  作者: 床擦れ
自軫之章至井之章

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張之章「成都に巫の名を求め、二柱は衢を縦横す」 四話

 陵光りょうこう監兵かんぺいやすんでいたのは、青龙(Qīnglóng)()ばれる大池おおいけまわりだった。

 成都チェンドゥいて爾後じご青龙(Qīnglóng)()しつらえられた林園りんえんなかを、居処いどころこまれば使つかっていたのである。西行せいこうせば成都チェンドゥ中心ちゅうしんまち格段かくだん雑多ざったとなっていく。

「いいなあ」

ぜにい。我慢がまんしろ」

 陵光りょうこう言葉ことばに、監兵かんぺいはふてている。成都チェンドゥあるいていると目移めうつりがして、監兵かんぺいおさなさでは堪忍かんにんにくいらしい。

 きとからだはこび。もと戦神せんじんだから、矢鱈やたら機敏きびんである。ひとおおときにはうごぎないように、監兵かんぺいうでっていてもいた。

 監兵かんぺいはだ陵光りょうこうからしてみれば、すこつめたい。

「ここはなにかな──」

 陵光りょうこう監兵かんぺいいたまま、ひとりでちた。

 さきにはおおきな方形ほうけい建屋けんおくかかげられた後端こうたんれば、()という見付みつけた。たしかこの左側ひだりかわは、しょくくずしたものだったと記憶きおくしている。

 ならばかんか。陵光りょうこうは、おおやけものという意義いぎかんった。

になる?」

「こういったものはな」

「──つまんそうだけどな」

 監兵かんぺいにとってはそうだ。すくなくとも、このかんきらびやかではい。なに陵光りょうこう興味きょうみしたのかとえば、こういった建屋けんおくのある理由りゆう意図いとであった。

──どうせであればてん使つかえないか

 そんな気分きぶんである。そして、その気分きぶんたのはおそらく、今日きょう行楽こうらくするとだんじたからでもあった。

監兵かんぺい

「ん?」

「いや」

 すこ気晴きばららしになった、とうべきだったのか。

「いいんだよ」

 わなかったはずだが、監兵かんぺいはそうかえしてきた。

 また、西にしく。

 すこしずつ、わるりょうおおくなった。成都チェンドゥ南北なんぼく分断ぶんだんするながれのかわわたれば、なら楼閣ろうかくがややもちいさくなる。

 このわり陵光りょうこうには、てんしろ内城ないじょう外城がいじょうかさなった。

 監兵かんぺい好奇心こうきしんいまだ、無尽蔵むじんぞうである。

「おお──」

 そら見上みあげている。しろおおきな、てつつばさがある。

「あれにはひとってるんだよね?」

「そうだったか」

「そだよ。こわいね」

 まあ、そういうものだろう。陵光りょうこうにはとく感慨かんがいがあるわけではかった。そら車駕しゃがってうつるものではなく、おのれぶものだった。そうやってかんがえるのなら、監兵かんぺい陵光りょうこうとでは、そらとはちがうものだ。

ぶのがか、ちるのがか」

 陵光りょうこういてみた。

 監兵かんぺいこたえは簡単かんたん

ぶのがいやだ」

というものであった。

 まだひるである。たかいが、すこしずつかたむいていた。ゆうからよるけて、またとどめられそうな場所ばしょさがしておきたかった。

 陵光りょうこう監兵かんぺいれられるままあるいて、てつつばさ宿駅しゅくえきたもとる。

 土地とちひらけがちだが、やすもうとおもってやすめるところすくないようだった。これなら、ちかくのかわわたってもうすこきたか、とおぎてさら西にしくのがいか、どちらかであろう。

「もうすこし」

 監兵かんぺいはなれたがらない。

よることもある。いつまでもとどまれない」

「んん──」

 ねたか、と陵光りょうこうおもった。られたあみいている。そこまでの執着しゅうちゃくげる相手あいてかと、陵光りょうこうあきれかけた。

 んで、がそう。よわまとってれればい。仕方しかたいとした陵光りょうこうは、監兵かんぺいこしあたりを、一瞥いちべつした。

──ちがうな

 と、おもった。こしまるめている。

監兵かんぺいなにる」

もう。だけどおおい」

においだな? おおい。どれくらいだ」

「わからない。においがまじって──」

 そこまでか、といたくなる。監兵かんぺいはななにるのか判別はんべつかないとは、とく近頃ちかごろでは見聞みききしたことがい。

「すぐにこう。そなえろ」

 陵光りょうこうよろい着替きがえることもはしはじめた。監兵かんぺいもすぐにいついて、陵光りょうこうまえはいった。

 みち辿たどり、ひとつどい。まわりをるに、この宿駅しゅくえき取次とりつぎをしているやくしょらしかった。すこたかくにかげ一塊いつかいひるがえりながらんでいる。

 れだろう。かいもある。陵光りょうこうくうかたちもつび、まえける監兵かんぺいさえぎった。

「どいて」

「まだだ。しかろ」

 陵光りょうこうには重要じゅうようである。いまけているのはうすはだぎくらいなもので、戦装束いくさそうぞくではいのだ。

 監兵かんぺいにははやくも鈎爪かぎつめあらわれている。苛立いらだちにすこし、いろわっていた。

力尽ちからづくならいぞ」

 陵光りょうこうあらわにした。足元あしもと路装ろそうけかけている。

 監兵かんぺい本能ほんのうよわみをかんじ、戦火照いくさぼてましていった。

すこて」

 陵光りょうこう監兵かんぺいまえったまま、周囲しゅうい見渡みわたした。

 うええてはないがひとてつつばさした、どよめく民衆みんしゅう左右さゆうれば、はなれていく獣怪じゅうかいた。

──巣窟そうくつ

 たとえるのなられが、いちばん相応ふさわしい言葉ことばではないか。

 監兵かんぺいかえる。

「どう?」

「これなら、よろいあとだ」

「あたしじゃん!」

わかっている。やろう」

 陵光りょうこうはすぐに左手ひだりてけんあらわした。まねいて監兵かんぺいへ、はなれないようにつたえる。

 監兵かんぺい追蹤ついしょうする。そらひるがっているだけの羽怪うかいあとにして、宿駅しゅくえきなか手早てばやまどからのぞいた。

 まよいがしょうじた。

監兵かんぺいなかまかせる」

「なんで!」

禺猿ぐうえんる、内外共ないがいともおろそかにはできない」

 陵光りょうこう一際大ひときわおおきなまど見付みつけると、けんった。できたあなしめす。

 監兵かんぺいまるんで、やくしょなかへとんだ。

「さて──」

 陵光りょうこうそらた。た。さきはなれていった獣怪じゅうかいが、ふたたつどってきている。かなければならない。

 けんたてにして、火焔かえんおこす。民衆みんしゅう惰弱だじゃくかいり、より野蛮やばんかいだけがのこる。

 火焔かえんが、かたまりとなった羽怪うかい標識ひょうしきとなったか。いちどえがいて、陵光りょうこうあたまさきけてきた。

 ほむらまとったけんよこぐ。それだけで先頭せんとう数十すうじゅうかれた。それでもえたほむらかげを、つづ羽怪うかいもぐけてくる。

 陵光りょうこうはだぎを、ひとつのくちはしやぶった。

「ん──」

 陵光りょうこうはだたった寸時すんじかいくちはしけた。そのせいではだぎT恤(ティーシュウ)も、まええた。

 羽怪うかい続々ぞくぞくおそう。

 とらえると、あんがい色彩しきさいゆたかだと気付きづいた。くろえたのは多分たぶんいろゆたぎてつぶれていたのだ。どうも、まるからほそきまで多種たしゅであった。

 ひとくび羽怪うかいが、陵光りょうこうかおへともうとしてくる。

 陵光りょうこう右手みぎてつかみ、そのままつるぎるいつづけた。右手みぎてもとからまったのどる。それをきながらだった。

 吠声ぼうせいよこいぬようなもの、白色はくしょくやまあらしすことおくからきん隆々りゅうりゅうとした獣怪じゅうかいる。まだら大猫おおねこじみたものと、兕牛じぎゅう

──なせるか

 陵光りょうこう羽怪うかいあきらめて、獣怪じゅうかい手間てまった。

 俊敏しゅんびんいぬやまあらしけんわせてり、ちから斑猫はんびょう兕牛じぎゅうたてから、頭蓋ずがい頂点ちょうてんった。けんるたびにえるむくろ往来おうらい叫喚きょうかんいている。

 このままおさえられる確証かくしょうい。ごくわずかなすき使つかって、やくしょなかひそかにる。

 五体満足ごたいまんぞく監兵かんぺいである。

「よし」

 陵光りょうこううでるいつづけた。さきつかんだ人面鳥じんめんちょう斑猫はんびょう投擲とうてきし、らしてからった。つのけてきた兕牛じぎゅうも、そのつのとすと混乱こんらんして、げていく。

「まだまだ!」

るな監兵かんぺい!」

 監兵かんぺいこえ陵光りょうこうもどれとおうとしたが、姿すがたときにはすでに、羽怪うかいかこまれていた。

「ええい」

 夹克ジャアクウ邪魔じゃまだった。陵光りょうこうてて上裸じょうらとなると、監兵かんぺいかこまれたところへとくうんだ。

 なか監兵かんぺい八方はちほうからついばままれている。

 監兵かんぺいきん陵光りょうこう監兵かんぺいからだおのれかくすと、おおきく一閃いっせんした。

 千々ちぢ羽怪うかいころががっていく。もうすこしで視界しかいれようか。

「ぬうあ!」

 陵光りょうこうちからめ、火焔かえんおおきくして十字じゅうじった。

 羽怪うかいる。けるほどしずかになった。

監兵かんぺい

「え」

「──どうなった」

ひとすこし──」

ぐうらはころしたか」

「うん」

 いつのにかよるだった、おこしたのせいでわからなかった。陵光りょうこうまわりは路面ろめんいくつかけ、たおれているものもいる。

苦労くろうしたな」

「ううん」

 羽怪うかいげたさきで、巨大きょだいうなおとっている。近付ちかづいて、宿駅しゅくえきやくしょこうに雷鳴らいめいった。

 雷鳴らいめい素地そじなぞ、何処どこにもい。

 陵光りょうこう瞑目めいもくして、蔓延まんえんしたい、いた。

「あれ、兄々にいにい? どこいくの?」

すこて。監兵かんぺいはだぎやぶれているだろう」

「だいじょぶ」

なにがだ。あまはだすな、これを羽織はおれ」

 陵光りょうこうさきてていた夹克ジャアクウり、監兵かんぺい肩口かたぐちけた。

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