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綺羅五芒星  作者: 床擦れ
自軫之章至井之章

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19/41

張之章「成都に巫の名を求め、二柱は衢を縦横す」 三話

 女衆おんなしゅうにはよる三更さんこうよる五等分ごとうぶんにして三限目さんげんめ)までった。そのせいで陵光りょうこうんだまま、監兵かんぺいいとせねばならなくなった。

 ただこのみは、けつして空虚くうきょなものではい。雨瓔ユーインというを、れたのである。

 あのあと女衆おんなしゅううち黒髪くろかみから、かみ字面じづら場所ばしょしるしてもらった。

 つぎ陵光りょうこうるべきは、雨瓔ユーインというをどのように辿たどるのか、ということである。すくなくとも成都チェンドゥでは、珍奇ちんき音韻おんいんふくめて、多少たしょうれているらしい。

 とき

──執明しゅうめいすぎている

という感覚かんかくも、監兵かんぺいたしかめていた。

 監兵かんぺい同様どうように、ているとった。

「でもさあ、兄々にいにい

「──ん、なんだ」

つかれれてるね」

「そうか。にするな」

「まあ、いいや。執明しゅうめい姉々ねえね、というか雨瓔ユーイン? ちがったね」

 陵光りょうこう監兵かんぺいずに、何度なんどちいさいうなずきをした。

 たしかに、そのとおりだった。陵光りょうこう執明しゅうめいは、博識はくしきかつ貞淑ていしゅくった、相将しょうしょういずれもこなせそうな風格ふうかくがあった。たし異形いぎょうたいしたときも、水軍すいぐんひきいていなかったか。

 記憶きおくかさねてみると、あの雨瓔ユーインというおんな姿すがたいささか、ひとちかすぎるし巫覡ふげきちかい。陵光りょうこうおぼえている姿すがたにはわないのだ。

 監兵かんぺいた。そういえば監兵かんぺいも、老女ろうじょかくまわれているときはそのようであった。

兄々にいにい? これからは?」

手机ショウチー使つかえぬのなら、あの女衆おんなしゅうごとくはできまい。网吧ワンバというところにしても──」

「ん?」

 陵光りょうこう体験たいけんから、ああいうたよりづらい、とおうとしたが

──ならほかにどうしようか

というかんがえがさきて、言葉ことばてこなくなった。

 監兵かんぺいかおのぞきこまれている。って、からよろいおさめたふくろろしていないといた。

「とにかく、今日きょうはもううごかん。よるけてからまた、あるこう」

「うん、うん」

 監兵かんぺいうれしさをかくしていない。よほどたのしかったのだ、ということだけは陵光りょうこうにもかった。

 からす啼声ていせいとおる。はし朱色しゅいろとなる。

 よるけた。

 陵光りょうこうひたいつえつづけるよこ監兵かんぺい寝息ねいき。まだ陵光りょうこうあたまなかは、いまいち判別はんべつをしない。手掛てがかりと思惟しゆいすくなないのだ。

 そら群青ぐんじょうされてくると、監兵かんぺい自然しぜんました。

「いつもおなじだな」

 陵光りょうこうはふと、そんなことをった。

あさきれるもんね。兄々にいにいはよくないね」

「ああ」

 空返事からへんじをした。陵光りょうこうやくあたえられてからこのかた職務しょくむなまけなかった。しょ閲覧えつらん保安ほあんも、いくさも、そして白虎びゃっこからまかせられた監兵かんぺいへの教導きょうどうも。

「やることがおおい」

 陵光りょうこう結論けつろんとして、そうやって監兵かんぺいに伝えた。

やすまないとんじゃうらしいよ」

「そんなこと、だれいた」

ばあから」

くりや老女ろうじょか」

「うん」

 そうか、と陵光りょうこうかえした。

 ただ、ていればわかる。かみひとではちがうのだ。てん巡回じゅんかいつね見張みはらねばならない、ということわりがある。だから、鵜吞うのみにはしない。

監兵かんぺい、もうてるか」

「いいよ」

「ならこう」

 ふくろふたたにすると、成都チェンドゥ市街しがいさぐりにうごいた。

 ひとおおい。まだふゆらしいが、人々ひとびとかわごろもけるとか、ぎゃくさむいにもかかわらずにはだ露出ろしゅつしているとか、千差万別せんさばんべつである。

 陵光りょうこうにはむしろ、それがおおかくしているようにもおもえた。

 監兵かんぺいよこく。往来おうらい好奇こうきけてくる。それでも昨晩さくばん活気かつきびていると、かなり沈静ちんせいされていた。

 てんにもあさよるで、べつになるようなものる。

 陵光りょうこう左右さゆうた。まわりのいろ人馴ひとなれしているようなかおい。こちらも臆面おくめんているのならなおい。これからことがあるのに、げられてはもといのだ。おんないのかおとこいのかも、多少たしょうちがうだろう。

 こう、ほほまるおとこくろT恤ティーシュウ目印めじるしにして、一直線いっちょくせんった。

失礼しつれいします」

(ǹg)?」

 おとこうですこちぢまった。その程度ていど警戒けいかいはされるだろうとも、陵光りょうこうわかっていた。

雨瓔ユーイン

(a)雨瓔(yǔ yīng)?」

你知道吗ニーチイダオマ?」

 率直そつちょくに、雨瓔ユーインというおんなたずねてみた。

 おとこかおをちょっとる。かお徐々じょじょわって、多少たしょうおどろきか興味きょうみいたようだった。

 にぎられた手机ショウチー陵光りょうこうおもてせてくるとおもいきや、おとこ何方どちらかとえば舌口ぜつこうをよくうごかした。何度なんど同意どういもとめられたが、雨瓔ユーインというおんなことしりりたい陵光りょうこうにとっては、ながすしかない。

 そのうちに、おとこかお面白おもしろくないとはじめた。

 さがしているのだ。陵光りょうこう身振みぶりでつたえようとしたが、おとこはどこかにぶい。

 結局けっきょくなにわからなかった。

兄々にいにい無理むりしてない?」

「していない」

「いつもだと、もっと()()()()してたけどなぁ」

 単純たんじゅんつたなかっただけだ。やりかたまっているのだから、なにつかめないうちは、それにのっとってやればい。

 陵光りょうこうつぎたずねられそうな標識ひょうしきもとめて、またすすはじめた。

 まちあるくと、たいてい何処どこになにがあつまるのかはつかめてくる。おんな肖像しょうぞうというのは、こう服飾ふくしょくおおかかげられるようだった。

 陵光りょうおこうは、無知むちなままおとこ言葉ことばしたのがつたなかったとかんがえて、そういう店舗てんぽまえ順々じゅんじゅんめぐっていった。

──もしも雨瓔ユーインという膾炙かいしゃしているのなら

 などと、思惑おもわくしたのもある。

 ちがうようにも、おなじようにもえる女達おんなたち。ひとつひとつを見比みくらべて、執明しゅうめいかおさがしていく。ときいぶかしまれたが、陵光りょうこううやうやしくしてしのいだ。

わからんな──」

「なにが?」

 おんなかお、そのものがわからないのではい。それぞれに化粧けしょうくもうすくもなる。たして同者どうしゃなのか、あるいはせているのか。そこである。すくなくとも、礼儀れいぎしたがった胡粉ごふんべにかたい。

 執明しゅうめいらしい、むらさきがちにひかかみさがそうともしたが、このひとかみげもするらしかった。

 絶対ぜったいさない、舌打したうちがた。

兄々にいにい

「どうした」

こわい」

 陵光りょうこうはややもがっていた背筋せすじばして、もとととのった姿すがたもどした。

 ふかほそく、いきく。

──どういうとどまりかたをしようか

 陵光りょうこうあたますでに、そこへまわっていた。こう服飾ふくしょく店舗てんぽめぐって、もういちどよるむかえている。

 監兵かんぺいかせたあしっている。

やすめるさがそう」

 陵光りょうこうった。

「そだね、いこ」

 監兵かんぺい陵光りょうこう言葉ことばに、すこかおやわららげていた。

 また、未明みめいである。

 やすんでいる最中さなかそら俯瞰ふかんしてみると、帯鈎たいこうごとならんだ三星さんせいひがしおおきなほしがひとつ色付いろづいていた。

 ひかり明滅めいめつ仕方しかたに、陵光りょうこう嫌悪けんおした。てん変異へんいしてないかという焦燥しょうそうが、理屈りくつ以外いがいところてられるのだ。

 監兵かんぺいは、そういったところないのだろうか。

 陵光りょうこうしたると、からだまるめた監兵かんぺい長椅子ながいすうえで、だらしなくくちけている。

すにしても」

 そういかけて、めた。

 監兵かんぺいきたらしい。陵光りょうこう楼閣ろうかく頂上ちょうじょうながめている。また、一晩中ひとばんじゅうかんがつづけていた。

──うごくのがいのか

 そういういを、陵光りょうこう反復はんぷくした。

 前後不便ぜんごふべんであるのなら、滞留たいりゅうきわめて風通かぜとおしがわるい。いま必要ひつようなのは、また流路りゅうろとおすことである。老女ろうじょっていた西安シーアンなどは、第一だいいち候補こうほではないか。

 陵光りょうこう目線めせんは、北側きたがわいている。

「いく?」

成都チェンドゥでは、もういだろうからな」

 監兵かんぺいよわうなった。

 そういえば昨日きのう成都チェンドゥめぐるとったらよろこんでいた。まともにまちせていなかったか。

 教壇きょうだん戦場せんじょうではきびししくるべきだろうが、すこけ、つかれているだろういまならば、息抜いきぬきをさせるのもいのだろう。

 はやかえりたくとも、ぎてうごけなくなれば、さいなるいみはまる。これはけたい。

監兵かんぺいうごとおしもわるい、すこし成都チェンドゥよう」

「いいの!?」

い。つぎかうなららすにもやくつだろう。いては転倒てんとうするのだ」

「うん」

ともに。まえのような混乱こんらんこしたくない」

 陵光りょこういていたふくろった。それぞれに準備じゅんびをしながら、監兵かんぺい

──きたい

まかせて、成都チェンドゥ市街しがい縦横じゅうおうするのだとめた。

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