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綺羅五芒星  作者: 床擦れ


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17/40

張之章「成都に巫の名を求め、二柱は衢を縦横す」 一話

 成都チェンドゥはいってからというもの、監兵かんぺい()()()()している。

「あまり余所見よそみをするな。不審ふしんだ」

になるから仕方しかたがないの」

 陵光りょうこう注意ちゅういうながしても、監兵かんぺいがえんじてくれない。

 たしかに、監兵かんぺいとおりかもしれなかった。重庆チョンチン十分じゅうぶんおおきな城街じょうがいだったが、この成都チェンドゥけて巨大きょだいである。

 楼閣ろうかくちがう。石造いじづくりにちかものから、全面ぜんめん玻璃はりられたようになっている。

 みちちがう。重庆チョンチンにも橋梁きょうりょうささえられたみちったが、成都チェンドゥのそれは窮屈きゅうくつではい。

 こういった物達ものたち窮屈きゅうくつにしないことが、どれだけむずかしいか。

 玻璃張はりばりの楼閣ろうかく見惚みとれていた監兵かんぺいうでを、陵光りょうこういた。

 監兵かんぺい光物ひかりものきだとまえからわかってはいるが、ほかかみさがすこと、そしててんかえ方法ほうほうさがすことが、いまもっと重要じゅうようなのだ。

「もうちょっと──」

くぞ」

 陵光りょうこうにははやく、この成都チェンドゥでのしらせのあつかたさぐ必要ひつようがあった。

 二柱ふたはしらえず、ながあいだたびしているきゃくだとよそおった。ところちがうのだとつたえれば、相手あいて言葉ことばつうじないとか、土地とち不便ふべんしているということはさつしてくれる。そして素直すの

我不ヲオブウ知道チイダオ

などとしるせば、ある程度ていどのことはおしえてくれまいか。

 陵光りょうこう道中どうちゅうあたまひねっておもいついたさくであった。

 そしてなんとか、このさくとおった。かみあらかじいておいた我不ヲオブウ知道チイダオせると、大抵たいてい

()看看(kàn kàn)(ba)?」

というぶんを、一筆いっぴつしるしてくれる。ゆびしながらわれることもおおいから、おそらくは

──あっちにってみろ

たる意味いみではないか。

 われるがままにすすんでみると、大抵たいていそのさきには网吧(wǎngbā)とか网咖(wǎngkā)というものがる。

 二柱ふたはしらためしに、はいってみようとした。

走开(zǒu kāi)

 网吧(wǎngbā)見張みはっているらしきおとこが、二柱ふたはしらこばんでいる。

 うしろでは監兵かんぺいが、网吧(wǎngbā)なかたのしそうにながめている中、陵光りょうこう疑問ぎもんあらわにした。

何故なぜですか」

 おとこはあまり機嫌きげんくしないまま、ゆび陵光りょうこう背後はいごけている。

──監兵かんぺいがどうかしたのか

 そうおもっていると、やや説明口調せつめいくちょう言葉ことばこえてきた。

未满(wèi mǎn)十八岁(shíbā suì)不能(bùnéng)(jìn)

 おとこゆびを、きへうつした。そこには

未满18岁者じゅうはちにみたぬは禁止入内はいれぬ

と、かかげてある。

 陵光りょうこうはまた、監兵かんぺいた。たしかにほかくらべると、行動こうどう姿貌しぼうおさなすぎるか。

シイ

 二柱ふたはしら一端いったん网吧(wǎngbā)そとた。

 陵光りょうこう監兵かんぺいい、いまところ理解りかいつたえていった。

「えっ」

 監兵かんぺい相槌あいづちは、そのくらいである。

ゆえに、そとっていろ」

「いやだ」

「どうしても、やらねばならんのだ。あのおとこも、完全かんぜんこばみたければ監兵かんぺい指差ゆびささない」

たいの」

ほかでもれる。て」

 監兵かんぺいはじめたらまずい。陵光りょうこうてんころあばかたっているから、このでそれをしてしくない。

 ひとかみよりよわいのだ。かなら混乱こんらんこる。

はやもどってくる。もどってきたら、すこ自由じゆうになる。いくさるのなら、平時へいじいてもそのはずだ」

 わかったか、と陵光りょうこうねんして、ようやく監兵かんぺいむつとしながらも

「うん」

と、こたえた。

ってくる。どうなるかはわからんが、しらせはってくる」

 陵光りょうこう監兵かんぺいすこしずかなあたりにとどめて、ひとりで网吧(wǎngbā)へと再訪さいほうした。

 さきおとこがいる。つくえりかかり、態度たいどはそっけない。

你又(nǐ yòu)来了(láile)?」

 舌打したうちすらもぜられた。やはり歓迎かんげいされていないのだろうか。しかし苛立いらだちよりも、あきれにちかいとはえる。

 陵光りょうこう背負せおったふくろせ、さらに言葉ことばわからないと態度たいどしめしもした。

──納得なっとくするだろうか

 品定しなさだめをするようなを、けられている。

 おとこりかかる姿勢しせいめた。陵光りょうこうまえにまでて、ひとついかけてきた。

你有(nǐ yǒu)钱吗(qián ma)?」

 単純たんじゅんであるかられる。ぜにるのか、とたずねられたのだ。

 陵光りょうこうにはそれほど、わせはい。いなしめすと、おとこ溜息ためいきいた。

手机(shǒujī)(ne)?」

 さらにわれた。手机(shǒujī)とはなにか、陵光りょうこういたことはっても、あまりらない。

 またいなしめして、おとこ項垂うなだれさせた。

你遇(nǐ yù)上大(shàng dà)麻烦了(máfanle)──」

 仕方しかたがない、とおもっているのだろう。おとこ陵光りょうこういていとり、数々かずかずかがみいてあるつくえまえった。

 かがみまえに、すじった盤面ばんめんがある。たことのない記号きごうきざまれていた。

 おとこひとつをえらび、しつらえられた椅子いすすわって、盤面ばんめんゆびはじいている。

 こういったもの使つかうにも、どうせ不自由ふじゆうするだろうとおもわれているらしい。陵光りょうこうからしても、そのとおりである。

你想(nǐ xiǎng)知道(zhīdào)(shá)?」

 おとこっている。

 こので、このようにわれたのなら、手助てだすけはしてくれるらしい。陵光りょうこうはすぐさま、ふところかみ一枚いちまいした。

 かみにはあのときとも異形いぎょうたいしたかみしるしてある。

 執明しゅうめいと、孟章もうしょうと、孚應ふおうである。

 かおしかめられたが、陵光りょうこうおとこたよるしかない。

 おとこ盤面ばんめん使つかって、渋々しぶしぶとそれぞれのあらわしていった。

 鏡面きょうめんなかいくつかの帳面ちょうめんひらき、独立どくりつさせているらしい。

 あらわされたのは文章ぶんしょうばかりだったが、おとこわきにあった鼠形ねずみがたもの使つかい、のみにえた。すこからだらして、その鼠形ねずみがた陵光りょうこうわたす。

 陵光りょうこうったままでり、おとこのしたようにうごかしてみた。まえまった車輪しゃりんらしきものまわせば、帳面ちょうめんられていった。

 一番上いちばんうえ执明シュウメイしるされ、列挙れっきょされる。執明しゅうめい自身じしんすくなく、まったべつおとこかおが、大半たいはんめているようだった。

──ここでは手掛てがかかりはいか

 陵光りょうこうなやんだ。かんがえてみれば監兵かんぺい再会さいかいしたときも、かり使つかっているところていた。どれだけ馴染なじんでいてもえられては、文献ぶんけんからうことはむずかしい。

 孟章もうしょう。これもまた、彫像ちょうぞううつったものおおい。手掛てがかりはほとんいとってかった。

 孚應ふおう孚应フオウしるされたした文章ぶんしょうおおかった。詩文しぶんれい問候書もんこうしょなどがおおくて、これではつかところもあるまい。

 あるいは字形じけい相違そうい障害しょうがいなのか。このあたりは文官ぶんかんである陵光りょうこうにとって、いくつもおもたるふしがある。

 総覧そうらんえた陵光りょうこうは、おとこ視線しせんおくった。

──なにわからないか

 という気分きぶんを、にじまされている。

 あとのぞみがるかもからぬと、文章ぶんしょうばかりの帳面ちょうめんあらためていった。のみで大概たいがいつかんでいったが、つくはなしおおく、まなくてもものだった。

 落胆らくたんした陵光りょうこうは、うでんだ。

 手掛てがかりを無理むりにでもつかもうとはおもわない。成都チェンドゥにてつぎにできることを、さぐっているのだ。

好了吗(hǎole ma)?」

 おとこ椅子いすもたれて、陵光りょうこうはなしかけている。

 陵光りょうこううなずくのにすこしだけ、ひらいた。

──なら、もう

 そういう仕草しぐさをされた。素気そつけいが、いままでの行動こうどう陵光りょうこうだれかを、しかも三者さんしゃさがしているということを、さつしてはくれたらしい。

 おとこわかきわ玻璃はりいたっていない陵光りょうこうおもんはかってか単純たんじゅん地図ちずえがき、目印めじるしってわたした。

 目印めじるしちかくに、警察ケイサツかれている。こういう事物じぶつこうたよればよろしいとうのだろう。このあたりはてんにもちかいか。

 陵光りょうこうたかいたとおもった。なにもの以上いじょうつとめでの返礼へんれいかんがえていたが、おとこから

你在(nǐ zài)这里(zhèlǐ)只会(zhǐ huì)碍事(àishì)回去(huíqù)(ba)

はなたれて、ついにされてしまった。

 陵光りょうこうふくろ背負せおって网吧(wǎngbā)からった。調しらごとねつはいりすぎて、ややもかたむいている。

 陵光りょうこうどまった。そしてあせった。

──監兵かんぺいとどまっているか

 おのれ監兵かんぺいたせた場所ばしょへ、いそいでかった。しばしばすわれるところもあったから、そこにしてはいまいか。

 各々おのおの長椅子ながいすを、めぐっていった。

 ない。なおあせった。これは突飛とつぴことになっていないか。

「いや、て」

 陵光りょうこうしずめた。場所ばしょわかっているはずなのだ。おのれうごかなければ、すくなくともくらくなるまえにはもどるかもしれない。まさか今更いまさら監兵かんぺい陵光りょうこうさからってはなれる理屈りくついだろう。

 監兵かんぺいわかれたちかく。

 ふくろわきき、長椅子ながいすこしして、よるまではつことにした。

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