表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
綺羅五芒星  作者: 床擦れ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/40

翼之章「陵光は監兵と会い、重慶の市に誠を站む」 四話

 あしおもたい。

 山中さんちゅうにはかいる。まえにはかんんでいた蛇怪じゃかいけて一目散いちもくさんげていたが、陵光りょうこうよわりをて、してきている。

 陵光りょうこうこぶしるい、なんとか退しりぞけた。おこせなくなったのと同様どうように、何日なんにちかでけんあらわせなくなった。

 だいぶみずからだはいった。そのせいで相殺そうさいをされている。

 市街しがいはいころには、まわりの人々ひとびとがよりもおそ歩調ほちょうで、重庆ちょんちんきた目指めざした。

 九百きゅうひゃくを、ひとつき以上いじょうけている。もっとあるこうとおもっても、むしばまれたからだがそれをこばんでいた。

 家屋かおくかげこしろした。まだるが、ここまでで精一杯せいいっぱいである。さがしてみたが、あたりには見当みあたたらない。このまま衰弱すいじゃくして、すばかりになりえた。

──それはけなければ

 陵光りょうこうかべりかかりながら、からだこした。うずきなどはいが、活力かつりょくそのものがくなっている。すこあるけるかとおもったが、うごきが覚束おぼつかなくなっていた。

 監兵かんぺいかくまわれている、くりやちかくである。ここにたよるしかないと、自然しぜんあしかっていた。

 陵光りょうこうくりや屋宇おくうえた途端とたんに、からだかせた。

 っていた霧消むしょうしていた。

 すこねむい。いままで疲弊ひへいしても睡魔すいまかった。よほどよわくなったのだと、残念ざんねんにもおもう。まわりはあやしんでいるのか、べてはない。

 すこねむるほうがいのかと、陵光りょうこうおもった。

兄々にいにい兄々にいにいがいるの!」

 はなれたところこえこえる。監兵かんぺいだとすぐにわかった。

──あせるな

 そういたかったが、うまくこえせない。

 朦朧もうろうとするなか陵光りょうこうくりやへとはこまれていた。だれかにかかえられていたが、監兵かんぺいだっただろうか。

 ゆかかされた陵光りょうこううえで、老女ろうじょ監兵かんぺいこえっている。

(フオ)!」

(huǒ)干嘛(gàn ma)?」

快点(クアイディエン)!」

 監兵かんぺい使つかえとけたのか。老女ろうじょこえと、おくから怒鳴どなおとここえとがこえる。それをまた、老女ろうじょ怒鳴どなかえしていた。

 陵光りょうこう監兵かんぺいかかえられた。

兄々にいにいたすけたげるからね」

 かかえられたまま、かまどあたりにはこまれていた。よこには黒鉄くろがねくちなかで、つよかれている。

うの、って!」

 監兵かんぺいあおぎにしたがって、陵光りょうこういきおおきくった。

 蛇怪じゃかいたたってからおこせなかったである。どんどんと陵光りょうこうはなからまれた。それでも陵光りょうこうなかのこったみずは、すぐにはからだ自由じゆうにしない。

 一刻いっこくほど、そうしていた。片方かたほうかまどねつされすぎれば、べつかまどえて、かれつづけた。そのあいだ監兵かんぺい陵光りょうこうかかつづけ、疑念ぎねんした厨子ちゅうしんでくるのをせいしていた。

 老女ろうじょなにわない。くりやつとめをしながら、たびたび様子ようす程度ていどである。

 つよであったから、この一刻いっこく陵光りょうこうからだくなっていった。恢復かいふくしきったとまではかないが、おのれうごいて、所作しょさ自由じゆう()()もどしている。

 言葉ことばはつせるようになった陵光りょうこうは、まず老女ろうじょへとあたまげた。

不是我(bùshì wǒ)对吧(duì ba)?」

 老女ろうじょ言葉ことばはそれきりであった。さとしはするが、不快ふかいだというかおではい。むしろ何処どこかで、安心あんしんしたとっているようであった。それから老女ろうじょは、監兵かんぺいかたしてれてきた。

 あご陵光りょうこうしている。ちいさなこえうながしてもいる。そのまま、つとめがのこっているとはなれてしまった。

 双方そうほうに、言葉ことばまるものがる。

 陵光りょうこう椅子いすすわった。監兵かんぺいはその姿すがたを、ったままている。

「これまでをわすれたか」

 陵光りょうこうげんに、監兵かんぺいあわてて椅子いすってきてすわった。

「そうだ。すわればていすわれ。礼儀れいぎというものだ」

「ごめん」

い」

 すこ異様いようでもある。だけでえば、陵光りょうこう監兵かんぺいも、さしてとしわりはないのだ。

 陵光りょうこう紅顔こうがんが、監兵かんぺいいた。

「しかし礼儀れいぎは、ていだけがほどこすものではい。なにえんがあるのなら、すべからくほどこすものだ」

 監兵かんぺいせている。くちつぐんでいる。

たすかった。あのままだったら、横死おうししていたかもしれない。あやうかったのだ」

 陵光りょうこうると、監兵かんぺいすこしだけげた。すこうと、またらす仕草しぐさをした。

おそれるか」

「うん」

「それでも、たすけたのか」

「そう」

克己こくきとは、そういうものだ」

ちがう。兄々にいにいだもん、頑張がんばってるからこわいんだもん」

 監兵かんぺいらしい言葉ことばいたがした。純粋じゅんすいすぎるのはたしかにそうであったと、これまでのかかわりからおもした。

「これからわたしは、宿やどたずねようとおもう。まだからだもどっていない」

「──()()う?」

わたしから義理ぎりとおす。監兵かんぺいかかわらなくてい」

「でも、だめだったら、またこうなるんじゃないの?」

「それはわたしでなんとかする。いずれてんかえるのだ、自由じゆうかぬのならかくれながらごす。ほかちたかみも、さがす」

「あたしは?」

いまかんがえるな。あとい」

 陵光りょうこうがった。監兵かんぺいわきとおって老女ろうじょもとき、ふたたあたまげた。わからないながらにこえわして、何度なんどあたまげながら、筆談ひつだんなか

──みせ手伝てつだうのなら、まあいいよ

というゆるしを、けてもらった。

 それから、何か月なんかげつった。

 世間せけんでは正月しょうがつうらしい。老女ろうじょうのには

这个(この)(つきは)要忙(とても)起来了(いそがしいよ)

なのだそうだ。

 陵光りょうこうからだ回復かいふくしている。いまならおのれおこせるし、けんあらわせる。そらちからもどしていた。

 あれから何日なんにちものあいだ半刻はんこくばかりをかまどまえごせたおかげであった。いまたる口実こうじつふくめて、厨子ちゅうしふくまとい、食材しょくざい調理ちょうりしている。

小面(xiǎo miàn)两碗(liǎng wǎn)!」

肉呢(ロウナ)?」

豌杂一(wān zá yī)、|肥肠一《féicháng yī》!」

好咯(ハオロ)!」

 陵光りょうこうなべるった。ひきにく煮豆にまめいためて豌杂ワンザーつくり、めんで、タンかして辛味からみくわえる。肥肠フェイチャンぶたはらわたであるから、べつげた。

来咯ラオロ小面シャオミエン!」

 仕上しあげた麺物めんものが、きゃくもとはこばれていく。いそがしくなると、これが数百すうひゃく往来おうらいするのだ。

 この陵光りょうこうなべるいつづけて、わったあとには丁寧ていねい器具きぐみがいていた。

兄々にいにい、おつかれさま!」

 監兵かんぺいあかるかった。陵光りょうこうたばかりのときよりも、すこくだけていた。

「これくらいはする」

兄々にいにいてから、おきゃくさんがよろこんでいるよ」

まえ料理りょうりが、すこあらかっただけだ」

兄々にいにい美食家メイシイジャだもんね」

「それはなんだ」

「うへへ」

 監兵かんぺいが、つくえかってうすわらいをしている。

 陵光りょうこう監兵かんぺいいたを、使つかった仕草しぐさけてからいた。

兄々にいにいあまものきなんてねぇ」

「そういうものだ。はじめからしたくし、にがものはよりにがかんじる」

「おみせひとたちも、兄々にいにいてからおおきな飯店はんてんあじけなくなったってってるよ。むしろこっちのほううまいって」

当然とうぜんだろう。こうしておんけたのだから、最善さいぜんくす」

厨房ちゅうぼう綺麗きれいになってきたもんねえ」

けがれはになる」

 もうちょっかいはさないでくれ、と陵光りょうこうおもっていた。師弟していとして、距離きょりちかすぎれば問題もんだいなのだ。掃除そうじえて、陵光りょうこうとここうとしている。

わりだ。今日きょうやすむ」

「ん。いいよ」

 そういながら監兵かんぺいは、陵光りょうこううしろをいてくる。どうしても背中せなかになる。

「もう部屋へやはいるぞ」

「わかってるよ」

男女だんじょ師弟していべつたせ。ここは監兵かんぺいねやじゃない」

はなしたいことがあっても、だめなの?」

 陵光りょうこう逡巡しゅんじゅんした。かみいたあとで、ならはいれと、監兵かんぺい部屋へやなかさそった。

 二人ふたり対面たいめんしてすわると、かつて監兵かんぺい教鞭きょうべんっていたころおもす。もっともいまは、あのときのような厳粛げんしゅく雰囲気ふんいきい。

兄々にいにい

「なんだ」

わたしこうかなって」

 陵光りょうこうちいさくいきった。監兵かんぺい瑠璃色るりいろは、よるだとよくひかる。

「それでいのか。後悔こうかいだけはめろと、まえにはっているぞ」

「いいの。また兄々にいにい大変たいへんうのもいやだ」

「──よろいは」

「しまってあるよ」

 陵光りょうこう黙考もくこうした。立場たちばとして監兵かんぺいきびしくするいわれはあっても、後悔こうかいさせるいわれはい。あの老女ろうじょのこともかんがえれば、猶更なおさらそうなのだ。

れいしめす。それからかんがえよう」

「うん。あと」

「まだあるのか」

兄々にいにいはなんで、ああなったの?」

かんもとつけて、やぶれた」

「このへんに?」

ひがしだ」

兄々にいにい大変たいへんなら、みんなにも大変たいへんだよね」

くのか」

つよやつたたかいたくなったの」

 監兵かんぺいてんころ覇気はきを、すこもどしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ