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第17話 ハプニング


 2階に上がると部屋が思った以上に少なかった。多分、家族の寝室が並んでいるからだろうか。ただ、ほとんど使われていないのかドアが空きっぱなしになっていて部屋の中は空っぽ、湿気がたまらないようにとクリスティンが気を効かせているのだろう。


「フィーリア、鍵を落としてましたよ」


 と彼女が入って行った部屋の前で声をかけたが返答はない。ドアは微かに空いている。ノックをしてそっとドアを開いた。


「フィーリア、鍵が……」


 バサッと布が床に落ちる音、俺の目の前には……真っ白なレースの下着を身につけたフィーリアが驚いた表情でこちらを向いていた。彼女の足元にはいましがた脱いだドレスやコルセットが落ちている。


「あ……」


 彼女が胸元を隠すように腕をクロスさせきゅっと目を瞑った。真っ白で細くて長い真っ直ぐな足、女性らしい腰回りのライン、腕で隠れた胸元は予想以上にふっくら……


「ごめんなさいっ! 鍵、落としてたので! その、はいっ!」


 俺は無礼にも鍵を近くの棚に置くとあいさつもせずに彼女の部屋を飛び出した。ほとんど初めてみる女性のあられもない姿、しかも……雲の上の存在である公爵令嬢。

 悪いことをしてしまった罪悪感と興奮してしまった自分への劣情が入り乱れておかしくなりそうだった。一度キッチンに入り水をがぶ飲みしてから急いで馬車へ向かった。


 馬車の中では少しイラついた様子のクリスティンが待っていた。


「お待たせしました」

「お待ちしましたよ。はぁ、お嬢様ったら珍しく今日はワガママでした」

「そ、そうですか」


 様子のおかしい俺、彼女はすぐに異変に気がついた。


「何か、ありましたか」

「すみません、その……あの、鍵が」

「鍵?」

「フィーリアさんの鍵が落ちていて届けようと部屋に……そしたらその」

「もういいです。その先は言わないで、私もお嬢様も貴方をクビにはしたくないから」

「はい……すみませんでした」


 クリスティンは大きなため息を着くとぱしんと俺の手を叩いた。


「いい、私がフォローするから……お嬢様はきっと許してくださいます。次は、その気をつけて」

「ありがとうございます。クリスティンさん」

「みたものは忘れて」

「はい、忘れます」

「次にお嬢様に会う時には絶対に態度に出さないで」


 珍しく彼女に表情がある。怒っている……のではなく俺を本気で心配しているような顔だ。そりゃそうだ、公爵令嬢の部屋に勝手に入って下着姿を見てしまったんだから。場合によっては拷問されたって処罰されたっておかしくない。

 なにより騎士を目指していたものとして俺は最低である。最低限のマナーも忘れてしまったのか。


「はい……かしこまりました」


 また彼女はため息をついた。


「お嬢様、今日をすごく楽しみにしていたんですよ。貴方とお話しできるってあのドレスを選んだのですが、少しサイズが小さくて苦しかったんだと思います」

「そうだったんですか……」

「お嬢様はあまりドレスを持っておいでではないけれど、カイノ様のために1番素敵なものをと」


 俺のために……綺麗な服を


「フィーリアさんが俺のために?」

「えぇ。大変だったんですよ。なんどもなんども着せ替えに付き合わされて今日は全然家事が進んでいないんですもの。はぁ、まったく」

「すみません、本当にすみません」

「大丈夫ですよ。お嬢様はお優しいですから。その代わり、次からはお嬢様の願いをなんでも叶えてください。いいですね」

「はい。頑張ります」

「とにかく、あまり気にしすぎず……。さぁ着きましたよ」


 俺は、クリスティンに何度も礼をいって馬車を降りた。1人暮らしの部屋、解雇に怯えながら次の呼び出しを待つのだった。


 



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