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第10話 2回目の勤務


 2回目の呼び出しは予定よりもすごく早かった。

 俺がパンケーキを食べた翌日である。クリスティンは手紙をよこすと言っていたが、困ったような顔で俺の実家にやってきていた。

 たまたま俺は在宅していたが、勉強のために外に出ていなくてよかった。


「申し訳ございません。お嬢様の強いご要望でして」


 彼女は珍しく表情がある。申し訳なさそうに眉を下げていた。多分、本当にフィーリアさんのわがままだったんだろう。


「問題ないです。俺は暇ですので」

「すみません、ありがとうございます。それでは外の馬車でお待ちしておりますね」


 クリスティンが出ていくと、俺は急いで準備をする。フィーリアに変なところは見せられないので身だしなみのチェック、髪を整えて服と靴も出来るだけ綺麗なものを着用した。100万ゴールドでちゃんとしたものを買っておこう。

 いただいたお金でちゃんと裕福に暮らせていると示すことも必要だと思うし。急いで馬車に向かうとクリスティンは既に中で待っていた。


「お待たせしました」

「いえ、それでは出発しましょうか」


 馬車が動き出し、ルギャルー公爵家に向かう。


「そうだ、クリスティンさん。王国第一洋菓子店の予約とお支払いありがとうございました。パンケーキ勉強してきました」

「いえ、仕事ですので。お嬢様の満足度は公爵の満足度でもございます」

「よく思っていただけると良いのですが……。公爵がどうして俺を指名したのかいまだにわかりませんからね」

「公爵は必ず理由を持って行動をしておられる方ですから、私も存じ上げませんが……カイノ様を指名したご理由があるはずです」

「ご期待に添えるように頑張りますよ」



***


 2回目となるともう新鮮さは薄れている。専用の待機室でコック服に着替えてすぐにキッチンに向かい、さっさと準備を始めてしまう。


「材料はたりますか、パンケーキの素材は準備しておきましたが」

「ありがとうございます。足ります」


 最高級の材料を見ても驚かなくなった。リボン付きの卵を手に取り準備を始める。ふわふわのパンケーキを作るには卵をメレンゲのように泡立てるのが重要だ。小麦粉は丁寧にふるいにかけ、ふわふわ感が消えないように優しくかき混ぜる。

 スイーツというのは奥が深い。同じような材料なのに混ぜる順番や温度、混ぜ方や分量で全く違うお菓子に変身する。クッキー、ケーキ、タルト、パイ。味も食感も違う、でも材料はほとんど同じ。

 

 たっぷりのバターで焼き上げるパンケーキ、外はこんがり中はふんわりで素材の味が楽しめる上品な味。ホテルライクなすっきりした大きめの皿に2枚重ねて、ホイップクリームとチョコクリームも甘さは控えめにしている。フィーリアはベタベタに甘いクッキーを美味しいと言ってくれたので甘い方がいいかとも思ったが……今回は王国第一洋菓子店のパンケーキをリスペクトで作ってみた。

 

「クリスティンさん。毒味をお願いします」


 俺はクリスティンのためにもう一皿用意しておいた。仕事人な彼女を唸らせたい気持ちもありつつ、やっぱり多くの人に食べてほしい。


「ありがとうございます。こんなにいいのでしょうか」

「いいんです。クリスティンさんにも食べてほしいので」

「一口いただいたら、お嬢様の分を運んで……私のはあとで食べます。ありがとう」


 彼女はナイフとフォークでパンケーキを切って小さな一口。普段は無表情な彼女がぱっと目を見開いた。


「いかがですか?」

「美味しいです。表面はサクッとバターの香りが強く、中はふわふわで卵の味がしっかりしていて……甘さが控えめだからもう一口食べたくなるというか。すみません、ベラベラと」


 彼女はぽっと恥ずかしそうに口を閉じると、そそくさとフィーリアの分のパンケーキを運ぶ準備を始めた。食レポ、めっちゃうまい。クリスティンは仕事ができる人だからか言語化がとても上手く、彼女に感想を聞いてよかったと思う。

 上品さに特化してみたが、今度は新鮮なフルーツ……例えばいちごなんかを食べやすくスライスして乗せてもいいし、はちみつではなく甘いシロップにすればよりスイーツよりになっていくだろう。

 パンケーキ=朝食という自分の中の常識を覆されて、俺自身も結構驚いている。自分が苦手だと思っていた世界に触れて知らなかったことを知って……。


「カイノ様、フィーリアお嬢様がお呼びです」


 戻ってきたクリスティンに声をかけられて、我にかえる。今日は呼ばれるのがだいぶ早かったような。


「もうフィーリアさんは?」

「一口食べて、すぐにパティシエを呼ぶようにと。とてもお喜びですよ」


 その言葉に安心した俺は彼女の待つ食堂へと向かった。


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