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97 金の亡者 ランド・アルマーク編8 代償


「が、は……っ!?」


 凄まじい剣技で四肢を破壊され続けたランドは、突如として胸の奥から沸き上がった「激痛」に目を見張った。

 先ほどまであれほど滑らかに伸びていた赤い触糸が、急に黒く変色し、ボロボロと灰のように崩れていく。切り裂かれた肉体の再生が完全に止まったのだ。


「なぜだ……なぜ再生しない……?! 僕は、不死の神に、なったはずだ……!」


 ランドは血を吐きながら地面に倒れ伏し、絶望に身を悶えさせた。『賢者の石と肉体の永続』に記された条件は絶対だった。ー愛する者の魂を『完全な生の残滓』として捧げること。

 しかし、儀式は失敗していた。なぜなら、彼が捧げたはずの生贄は、まだ死んでいなかったからだ。


「おい! しっかりしろ、アリエル!」


 鋼鉄は剣を地面に突き刺すと、物置小屋の血の海の中に横たわる少女へと駆け寄っていた。アリエルの胸の傷は深かったが、奇跡的に急所を外れていた。

 鋼鉄は懐から最高級の回復薬(ポーション)を取り出すと、震える手で彼女の青白い唇へと流し込む。


「ゴホッ……、う、うう……」


 魔法の薬液が染みわたり、アリエルの胸の傷口が淡い光と共に塞がっていく。彼女の瞳に、ゆっくりと光が戻ってきた。

 生きている。アリエルが生きているということは、術式に必要な「魂の分解」が完了していないことを意味する。不完全な魔力の奔流が逆流し、ランドの肉体を内側から破壊し尽していたのだ。


「ラ、ランド……様……」


 意識を取り戻したアリエルは、自分の命を救ってくれた鋼鉄の手を振り払うようにして、ふらふらと立ち上がった。

 そして、地面でのたうち回り、見る影もなく崩壊していくランドの元へと這い寄っていく。


「アリエル! 行くな! そいつはお前を殺そうとしたんだぞ!」


 鋼鉄の制止の声も、今の彼女の耳には届かない。アリエルは涙で視界を滲ませながら、醜く肉体が腐り落ちていくランドの身体を、拒むことなくその細い腕で抱きしめた。


「どうして……どうしてこんなことをされたのですか……っ!」


 大粒の涙が、ランドの頬へとボロボロと落ちていく。裏切られ、殺されかけた。それでもなお、彼女の瞳にあるのはランドへの怒りや憎しみではなく、ただただ深い、引き裂かれるような悲しみだけだった。


「私は……私は、ランド様をお慕いしていたのに……! あなたのためなら、私は、何だって……っ」


 アリエルは声を上げて泣き叫び、ランドの胸に顔をうずめて泣きすがった。その純粋すぎる愛の涙と、彼女の温かい体温が、崩壊していくランドの冷たい肌に触れる。


 ランドは、自分に泣きすがる少女を呆然と見つめていた。彼女の魂を奪えなかったから、自分は死ぬ。しかし、もし最初から彼女に「生贄」としてではなく、「協力してほしい」と真実を伝えていれば、彼女は自ら命を捧げたかもしれない。

 己の冷酷さと強欲さが、最強の素材であった「彼女の愛」を台無しにし、自らを破滅に導いたのだ。


「ア、リエル……、僕は……」


 ランドの口から、掠れた声が漏れる。その瞳に宿るのは、狂気か、それとも初めて芽生えた後悔かー。




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活動報告に全体のストーリーラインを上げてますので、良ければ見ていってね~! 小説家になろう 勝手にランキング
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