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96 金の亡者 ランド・アルマーク編7 不死の身体


「化け物が……!」


 鋼鉄は即座に間合いを取り、剣を構え直した。その額を冷たい汗が伝う。だが、ランドはすでに彼の動きを目で追ってはいなかった。己の内に溢れる、人間だった頃とは比べ物にならない魔力と生命力の奔流に、ただ恍惚としていた。


「ふふ、これが『賢者の石』の力……。素晴らしい。世界が、信じられないほど鮮明に見える」


 ランドが軽く片手を掲げると、物置小屋の床に飛び散っていたアリエルの血と、錬金陣の残滓が、重力を無視して宙へと浮かび上がった。

 それらはランドの意志に従い、無数の鋭利な「血の結晶の槍」へと姿を変える。


「さあ、先生。僕の新しい力、その身で試してください」


 ランドが指を弾いた瞬間、赤い雨のような結晶槍が、凄まじい速度で鋼鉄へと殺到した。


「おおおおおっ!!」


 鋼鉄は雄たけびを上げ、剣を凄まじい速度で振り回して結晶を叩き落としていく。達人の剣技は、まるで鉄の壁のようだった。

 しかし、ランドの攻撃は止まらない。さらに床の石材を錬金術で分解し、巨大な岩の蛇を作り出して鋼鉄に襲い掛からせた。


 ズドォン!と激しい衝撃音が響き、鋼鉄の身体が物置小屋の壁を突き破って外へと吹き飛ばされる。庭の地面に叩きつけられた鋼鉄は、口から血を吐きながらも、すぐに立ち上がった。だが、その体はすでにボロボロだった。剣を持つ手は震え、脇腹からは血が流れている。


 壁の穴から、夜風に髪を揺らしながらランドがゆっくりと歩み出してくる。その姿は、傷一つなく、あまりに美しく、そして不気味だった。


「やはり、人間では僕の相手になりませんね。先生、お前もアリエルのように、僕の実験の材料にしてあげますよ」


 冷酷に見下ろすランド。しかし、その言葉を聞いた鋼鉄の目が、鋭く細められた。


「……材料、だと? 舐めるなよ。私がいくつ戦場を潜り抜けてきたと思っている」


 鋼鉄はフンと笑うと、剣を握る手に力を込めた。彼はただ圧倒されていたわけではない。これまでの短い打ち合いの中で、ランドの「弱点」を見抜いていたのだ。


「確かに、お前の肉体はすぐに再生する。心臓を貫こうが、首を撥ねようが死なないんだろう。……だが!!」


 鋼鉄の身体から、残された全闘気が爆発的に膨れ上がった。


「再生するってことは、『傷ついている瞬間』は確実に存在するということ、死なないなら、動けないように細切れにして、そのまま縛り付けるまで!」


 次の瞬間、鋼鉄の姿がその場から消えた。疾風怒濤の踏み込み。ランドが反応するより早く、鋼鉄の剣が閃いた。


 ザシュッ!!


「……っ!?」


 ランドの右腕が、肘の関節から綺麗に切り飛ばされ、宙を舞った。すぐに切り口から赤い触糸が伸びて腕を回収しようとするが、鋼鉄はそれを許さない。返す刀で、今度はランドの左膝の裏を深く一閃した。


 ドサリ、とランドの身体のバランスが崩れ、地面に片膝を突く。


「これでも再生が追いつくか!!」


 鋼鉄は猛獣のような咆哮を上げながら、超高速の連撃を繰り出した。両腕、両足の関節を、再生する隙を与えないほどの速度で正確に破壊し、切り裂いていく。


 不死生命となったランドの全能の肉体が、人間の執念と最高峰の剣技によって、一時的にその場に縫いとどめられようとしていたー。




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活動報告に全体のストーリーラインを上げてますので、良ければ見ていってね~! 小説家になろう 勝手にランキング
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