129 力の体現者 切望のマリア編3 あ~ら? そそるわぁ♪
「チッ……! チョロチョロと、鬱陶しい執念深さだぜ!」
激しい金属音とともに、シンディ・バーンズは舌打ちを弾けさせた。
彼女の脚部に装着された『AF直撃魔法武装脚ハイフリード・ギア』が、大気を引き裂くような高周波の駆動音を鳴り響かせている。蒼白い魔力の残光を曳きながら、シンディは空間を蹴り、弾丸さながらの速度で肉薄した。
狙うは、眼前に立つ女の首筋。
ハイフリード・ギアの出力を限界まで引き上げた鋭い回し蹴りが、真空の刃となって襲いかかる。
「あ~ら? そそるわぁ♪ その猛々しいお目立ち足、ゾクゾクしちゃう」
対する『切望のマリア』は、身の丈を超えるほど巨大な鋼鉄の塊――『AF覇槌ダイダロス』を構え、妖艶な笑みを浮かべていた。重力など存在しないかのように、彼女はその超重量のハンマーを片手で軽々と振り回す。
キィィィィン!
鼓膜を震わせる衝撃音。シンディの放った超音速の蹴りは、マリアが盾のように掲げたダイダロスの側面に完璧に防がれていた。質量と魔力の衝突が、周囲の地盤を派手に爆砕させる。
「チッ、硬えな! オラッ!」
シンディは即座に軸足を切り替え、二の矢、三の矢となる連続蹴りを叩き込んだ。空を穿つような高速の足技。上段、中段、そしてフェイントを交えた踵落としが、猛烈な嵐となってマリアを襲う。
しかし、マリアはクスクスと愉しげな笑い声を漏らしながら、ダイダロスを軽やかに操ってそれらすべてをいなしていく。重厚なハンマーが、まるで彼女の手足の一部であるかのようにしなやかに舞っていた。
「ねえ、シンディ。もっと激しくして頂戴? あなたのその自慢の脚、どこまで私を楽しませてくれるのかしらぁ?」
「うるせえよ、変態女! 俺様の脚はなぁ、お前みたいなふざけた女を叩き潰すためにあるんだよ!」
シンディは空中で身を翻し、ハイフリード・ギアの魔力ブースターを最大点火した。
「喰らいな、バカが!」
螺旋を描く必殺の急降下蹴りが、マリアの脳天へと突き刺さる――かに見えた。
マリアの瞳が、怪しく歪んだ悦びに濡れる。
「ふふ、いいわ。でも、お戯れはここまでよ?」
ドゴォォォォン!!
マリアがダイダロスを容赦なく振り下ろした。シンディの蹴りと正面から激突し、爆風が二人を隔てる。シンディは凄まじい衝撃を殺しきれず、後方へ大きくバックステップを踏みながら着地した。
「チッ……なんて馬鹿力だ。だが、大振りのハンマーがありゃ、いつまでも俺様のスピードについてこられると思うなよ!」
シンディは不敵に笑み、次の突撃のためにギアに魔力を充填させる。ハンマーという武器の特性上、間合いを詰めれば懐はガラ空きになるはず――そう確信していた。
しかし、マリアはダイダロスを肩に担ぎ、妖しく微笑んだだけだった。
「あら、本当にそう思う? 私のダイダロスが、ただの重たいオモチャだなんて思わないことね」
マリアが小さく指を鳴らす。
その瞬間、シンディの全細胞が危険信号を発した。
「なっ……!?」
シンディの目が驚愕に見開かれる。
マリアが手にする覇槌ダイダロスが、不気味な魔力を放ちながら、瞬時にその体積を三倍以上へと膨張させたのだ。先ほどまでとは比較にならない、文字通り家一軒を丸ごと押し潰せるほどの規格外の巨槌。それが、城壁のような圧倒的な質量をもってシンディの視界を埋め尽くす。
「大きさを、自由に変えられる……だと……!?」
「あははっ! 驚いた顔も素敵よ、シンディ! さあ、私の愛を全部受け止めてぇ!」
自由自在に質量とサイズを変化させる絶対的な破壊の鉄槌が、逃げ場を失ったシンディの頭上から、圧倒的な絶望とともに振り下ろされようとしていた。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価をよろしくお願いします!
していただけたら作者のモチベーションが上がります!




