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224話 お相手は……

「わたくしと婚約していただけませんか!?」


 セリスは顔を赤くしつつ、とても真剣な顔で言い。


「……は?」


 対する俺は、たぶん、とても間の抜けた顔をしていたと思う。


 聞き間違いでなければ、セリスに求婚された……?

 なぜ?

 嫌われていることはないだろうし、人として好かれているであろうことはちゃんと理解していた。

 もしかしたら……と、さきほどのように考える時もあった。


 だがしかし。


 俺の考えが正しかったとしても、なぜいきなり求婚に発展した?

 セリスは、そこまで大胆な人ではなかったと思うのだが……

 いったい、なにが?


「あ、えとっ……婚約をしていただきたいのですが、ただ、そのままの意味ではなくて。いえ、そのままの意味ではあるのですが、他にも意味があるというか裏があるといいますか……」

「えっと……落ち着いてほしい。深呼吸を」

「は、はい……すー……はー……」


 言われた通り、セリスは深呼吸をした。

 そうして落ち着いたところで、改めて話をする。


「……今回の依頼は、やや突飛なものでして」

「その内容が、セリスとの婚約?」

「はい。ただし、フリで構いません」

「ふむ?」


 どういうことなのだろう?

 首を傾げていると、セリスが続きを説明してくれる。


「その……わたくしは今、色々な方からお見合いを申しこまれていまして」

「なるほど。そうなるだろうな」


 セリスは若く有能な領主。

 そして、美人だ。

 彼女を妻として迎えたい、と思う者は多いはず。


 むしろ、今までそういう相手がいなかったことに驚きだ。

 領主ということを除いても相手は選び放題のはずなのに。


 不思議に思い首を傾げていると、セリスがどこか疲れた様子でため息をこぼす。


「わたくしが今まで一人なのは、領主としての行いを優先してきたというのもありますが……意中の方がまったく振り向いてくれない、という理由もありますわ」

「なんと」


 すでに想いを寄せている相手がいたのか。

 それは驚きだ。

 いったい、誰なのだろう?


「はあ……この反応ですもの」

「?」

「まあ、そちらは今は置いておいて……話を戻すと、現在、色々な方からお見合いを申しこまれています」

「断るのかい?」

「はい、そのつもりなのですが……」


 再びのため息。

 ただ、そこに込められている感情は先のものと違った。


「一人、断ることのできない方からお見合いを申し込まれてしまいまして」

「断ることのできない相手?」

「……王太子殿下です」

「なっ……!?」


 その展開はさすがに予想しておらず、驚きの声がこぼれてしまう。


 さすがに王太子からもお見合いを申し込まれているとは思わなかった。

 なるほど。

 それなら断ることは難しい。

 成立するしないはともかく、門前払いなんて下手をしたら不敬になってしまう。


「そのような話、わたくしのところに来るわけがないと思っていたのですが……」

「そうだろうか?」

「え?」

「セリスならば、王太子の目にとまっても不思議ではないと思う」


 若くしてエストランテの領主に収まり。

 多くの民に慕われるような治世を敷いて。

 色々な困難に襲われるものの、それら全てを乗り越えている。


「それは、わたくしの功績ではなくて、主にガイ様のものなのですが……」

「そんなことはないだろう」


 確かに、俺は敵を討伐したりした。

 ただ、単純に敵を倒せば終わり、という話ではない。


 被害の把握とその対処。

 同じ問題が起きないようにするための予防策。

 周囲の街などへの情報共有……などなど。

 やるべきことは山程ある。


 セリスは、それを涼しい顔をしてやってのける。

 俺ではとても無理だ。


「そしてなによりも、セリスはとても綺麗だ」

「……ふぇ!?」


 セリスにしては珍しく、間の抜けた声がこぼれた。


「ああ、いや。これはセクハラとかそういうつもりは本当にないんだが……セリスは純粋に綺麗だから、ぜひ我が家に、と思う人がいてもおかしくはないだろう。むしろ普通だろう。王太子もそう望んでも、わりと当たり前ではないだろうか」

「あ、いえ、その、えっと……」


 セリスは赤くなって。

 赤くなった顔を隠すように両手で覆い、俯いた。


「……それくらいにしてください」


 恥ずかしかったらしい。


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― 新着の感想 ―
そうそう、既成事実を作って、巻き込んで、外堀を固めて逃げ場を防がないとこの朴念人には伝わらないねぇ(;^ω^)
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