225話 口実として
「失礼しました」
ややあって、セリスが落ち着いて。
話を元に戻す。
「わたくしが置かれている状況について、ご理解いただけたでしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。ただ……」
それがどうしてセリスと婚約することに繋がるのだろう?
……ああ、待てよ?
なんとなく読めてきたかもしれない。
「もしかして……」
「はい。ガイ様を利用するようで申しわけないのですが、わたくしには婚約者がいる、ということにして……」
「王太子殿下のお見合いを断る、ということか」
納得した。
王太子殿下の人柄を知らないが……
まともな人なら、婚約者がいる相手にお見合いを申しこむことはないだろう。
そのことを知れば撤回するはず。
ただ……
「……その方法はやめておいた方がいいのではないか?」
「ガイ様は……わたくしとの婚約は嫌ですか?」
「あ、いや。そういう話ではないんだ。ただ……」
王太子殿下のお見合いを断るため、偽りの婚約を結ぶ。
もしも、それが表沙汰になったら、王太子殿下への心象は最悪になってしまうだろう。
今後、悪い流れになるかもしれない。
それともう一つ。
偽りの婚約をいつまでも結ぶわけにはいかない。
なにかしら理由をつけて婚約を解消した時、再び王太子殿下からお見合いを申し込まれる可能性があるだろう。
結局のところ、一時しのぎにすぎない。
「……わたくしは、そのまま本当に婚約をしてしまっても構わないのですが」
「はっはっは。セリスは冗談がうまいなあ、そのコツを教えてほしい。コツコツと学んできたのだろうか? コツだけに」
「……」
セリスがどんよりと暗い目をした。
ものすごく外してしまっただろうか?
「……ガイ様は、ものすごくストレートに、わかりやすく言わないと伝わないのでしょうか?」
「なんの話だ?」
「いえ……失礼しました」
「?」
「話を戻しますが……確かに、ガイ様の言う通りですね。婚約をしても、それは問題の解決にはならない……そのとおりです。突然のことに驚いて、視野が狭くなっていたようです、申しわけありません」
「謝ることじゃないさ。ただ、どうしたものかな……?」
考えてみるけど、良いアイディアは出てこない。
まあ、まだ話を聞かされたばかり。
じっくりと考えたり、アルティナ達と話し合うことで良い解決策が思い浮かぶかもしれない。
そんなことを考えていると、セリスが驚いたような顔に。
「あの……ガイ様は、わたくしのために打開策を考えてくださるのですか?」
「それはもちろん」
「ですが、さきほどは……」
「王太子殿下を相手に嘘を吐くのはまずい、と思っただけさ。他の方法で協力することは、まったく問題ない」
「そう……なのですか?」
「もちろんだ。セリスは友人だからな」
相手は領主。
歳もかなり離れている。
失礼というか、分不相応な考えかもしれないが……
しかし、俺はそう思っていた。
大事な友と考えていた。
「……友人……」
小さく繰り返して。
「ふふ」
セリスは小さく笑う。
「わたくし、ガイ様の深い理解者であると思っていましたが、まだまだでした」
「そうなのかい?」
「はい、まだまだです。もっと精進しなければいけませんわ」
「えっと……がんばってくれ?」
なにがそこまでセリスを駆り立てているのだろう?
不思議に思いつつも、とりあえず、応援の言葉を投げかけておいた。




