戻ってきた執事
昨日はたくさん野菜スープを作り、それにパンのミミを付け食べた、
夜べッドに入り、眠りのつこうとすると必ず男が出てきて、私を見下ろすように見ている。
私は完全にこの男を無視した。
子爵家に昔からとりついていた霊のようだが、大した害はなさそうだ。
貧乏神かもしれないが、神には違いないので、霊よりましかも、などと考えている。
他の家族にはどうやら見えないみたいだし、私が無視していればそのうちどこかに行くだろう。
今日の朝も卵を焼き、クレープを作った。
皆はそれを喜んでくれたが、私は不安だった。
パンのミミは今日の昼でなくなってしまう。
すぐ近くのパン屋にはなんとか歩いていけるが、その先の街のパン屋には馬車がないと行けそうにない。
昼は暖炉を使ってアップルパイでも焼こうか? ピザもいいなぁと思ったが、使ってなかった暖炉なら煙突とか掃除が必要だし、屋根も一部壊れているので煙突を掃除するのは難しい。
父は屋根裏部屋は、危ないので、上に行ってはいけないというけど、一度窓から煙突を確認したほうがよい。
暖炉が使えないなら冬は厳しそうだし、パンはやけそうにない。
庭にパン焼き釜をつくってもらうか、厨房にパン焼き専門のコンロを作ってもらうしかない。
器用な父らしいが、そんなことが出来るのか聞いてみないとわからない。
コッコちゃんたちにも雑草とミミズと虫だけでは、すこしたりないので、食事の残り物と思っても、何も残らないので残飯がでない。
卵、弟が楽しみにしているし我が家の貴重なたんぱく質なので毎日卵を産んでもらわないと困る。
母が今日の午後昼食のスープを作ってくれると言うのでお願いして、私は小麦粉で饅頭のような物を作ろうと思った、
中に2種類の、甘みがすこしあるものとジャガイモのようなものを八百屋で買ったので、入れようと思った。
釜でパンがやけないなら、焼くか、茹でるか、蒸すしかない。
饅頭の中身のジャガイモは少し塩を入れ、細かくしてから茹でた。 甘めの芋も同じくサイコロ切りにして茹でておいた。
小麦粉に水を入れ、芋を包む生地を作った。 芋はザルのなかに入れ水気をきっておいた。
饅頭の皮に中身の芋を入れ包み、木で編んだざるを鍋の中に入れ、すこし下に水をいれ、饅頭を蒸した。
母はスープを作る手を休め、私の作る饅頭を見ていた。
そして「まあ、美味しそう」と嬉しそうだった。
少し小さめにだが、たくさん作ったので食べてほしい。
父と弟が裏庭の畑と鳥小屋作りから戻り、私の作った饅頭と母のスープを昼食にだしたら、美味しそうに食べた。
自分の分の饅頭を食べてしまった弟は私の饅頭を物欲しげに見ていたので、一つあげた。
そうそう、弟は育ちざかりだものね。 早く大きくなって姉をたすけておくれ。
母も自分の分を父に一つ譲っていた。 皆にまた作ってくれ、とお願いされたので当分の間我が家の定番になりそうだ。
昼食が終わり、私は倉庫にレンガがあると父に聞き、父が庭にパン焼き釜を作ってくれると言うので倉庫に見に来た。 倉庫には妻財と農業道具とたくさんのレンガがあった。
お爺様はこのレンガで何かを作ろうとしていたようだ。
よく見ると別荘の土台には、このレンガが使われている。
パン焼き釜を何処に作るか、父と検討していると、なんと執事のラルフが馬に乗り戻ってきた。
彼は涙を浮かべ、自分にはどこにも行くところがないので、ここに置いてほしいと言った。
父は困ったような顔をしていたが、小さい頃から子爵家にいて、家族もいない彼を無碍には追い出すことはできなかったようだ。
彼はほとんど馬で走り続けていたようだ。
「屋敷に入り、休むよう」父はラルフに言った。
母は先ほど作ったスープを温め始めたので、私は小麦粉をコネて丸くちぎり、煮立ったスープにいれた。
饅頭をすべて食べてしまったので、代わりに少しでもお腹にたまる物をと思った。
彼はスープをアッと言う間に飲み私は朝残っていたぶどうジュースだした。
「お嬢様、お元気になられて」と私を見て言ったがやはり長く私を見ていたせいか、母と同じく違和感を感じているようだ。
ラルフは袋からパンをたくさん出してきた。 そして大きな乾燥肉も出してきた。
父が渡した退職金の一部で私たちのみやげに買ったものだ。
以前、私達が住んでいた一番近い街の一番大きなパン屋で買ったものだった。
たよりになるラルフが戻ってきてくれて父と弟は嬉しそうだったが私は卵の取り分がますます少なるなるなぁと思った。




