お引っ越し
うつらうつら寝ていると夜が明けたのか部屋は徐々に明るくなっ来た。
恐々目を覚ましてみると、やはり何もない部屋に私は寝ていた。
掛けてある毛布がペカペカで肌寒く腕をさすってみると木の枝のように細くガリガリだった。
嫌だ、いやだ寝てる間に栄養を吸い取られてしまったのか、それともまだ酒が頭からぬけないのか?
あれこれ考えちいるうちに、部屋のドアが開き少しやせ気味の外国人が私のことを「マリア」と呼びながら近づいてきた。
私の名は聖菜ですマリアではありません、と叫びたかったが、あまりの驚きに声がでなかった。
私に「朝食をとったら馬車で引っ越しだ」と男は言った。
その時私は自分が異世界に転生してしまったことに気づいた。
良くゲームであるあれだ、麗しの令嬢も転生したのか? それにしては、腕がガリガリすぎる。
栄養を取らないとと思い食堂に行くと美しい女性とチビの少年が座って待っていた。
この美しい人が私の母? このチビが私の弟? と思っていると、「骸骨姉さま、おめざめだ」と
ふざけたことを言うので、近くに行き頭をピシャとぶってやった。
レディに向かい失礼なチビだ、と思っていると弟らしき少年は大きな声で泣きだした。
食事用のテーブル近くにいた男が慌てて、少年をなだめにかかった。
「坊ちゃま、泣かないでください、食事がまずくなります」と優しく頭を撫ぜた。
この男は誰? 私が不思議に思い男を見ていると、「お嬢様も、こんなに元気になられて」と彼は泣き出した。
「2人とも引っ越しに日に泣くなんて縁起がわるいな、今日は特別な朝食を用意しているので、ダニエル泣くのはやめろ、今日はラルフも含め最後の晩餐をしよう」と父親らしき人が言って、母親がスープとパンをもってきた。
ラルフは我が家に長くいる執事らしい。
チビは喜んで食べていたが、私はそのまずさになかなか食が進まなかった。
母が心配して「まだ、調子が悪いの?」と聞いてきた。
体調は良いけど、食事がまずいの、とも言えずにいると、ダニエルが僕が食べてやろうか?と手を出したので、優しくピチャと手を叩いてやった。
まずさを噛みしめながら食べてるんだから余計なことはしないの、と言いたかったが、何も言わず食べた。
これが特別な食事? 普段は何を食べてるんだろう?と疑問だったが、きっと家具も食料品も新しい屋敷にすでに移動させているのだろうと、納得した。
おんぼろな馬車に乗り、ガタゴトと屋敷を出発した。
時々執事のラルフと父は交代で馬車の馭者をやっている。
フィに私は私の後ろに誰かいるような気になった。 振り向いてみると誰もいない。
死神が私にまだとりついているのか? と背筋が寒くなったが、無視して私は歌い始めた。
ヤーレン、ソーラン、争乱、争乱,と歌っていると、父は何かのおまじないか?と聞くので呪文だと言っておいた。
風が吹くとすぐ飛びそうな体で私は毛布にくるまり馬車からの景色を見ていた。
夏にしては肌寒い秋の始まりのような早朝だった。
昼になり大きな街についたので、どこかでご飯を食べようと私が言うと、父は顔を引きつらせ「あまりお金がない」と私に言った。
私令嬢じゃなくて、貧乏なの? 貧乏な令嬢なの?
ダニエルがパン屋を見つけたので私は興味本位パン屋を覗いた。
あまり美味しそうなパンはなさそうだな。 私は端に置いてある、パンの耳をたくさん母に買って貰った。
パンの耳は味があるので、これに牛乳でもつけて食べれば、たくさん食べらるると私は思った。
父はここで少し買い物をしていこう。
「今度行く家には何もない」と言ったので私は思わず、何もないの?とオウム返しに聞きてしまった。
母は野菜の苗が少しほしいと言い、苗を売っているところを覗き、ジャガイモと人参のような苗と株と大根の中間のような苗を買ってきた、
私は鶏の雄と雌が必要だと、父に言った。
野菜だけでは栄養が取れない。 何もないなら小麦粉もすぐ必要になる。
父はしぶしぶ、鶏の雄と雌を買い、小麦粉を買った。
はぁ、大丈夫か?この一家、私は馬車でこの先どこに連れていかれるのか、少々不安になった、
おかげで後ろにいるであろう男のことは、まるで気にならなくなった。




