ホワイト一家
朝からパンを焼き、馬車に乗り街に行こうとしたら、お父様が沢山に野菜を持って来てくれた。
芋や株、人参、玉ねぎなどお父様がいずれも丹精込めて作ってた野菜ばかりだ。
私が畑の肥料に鶏糞をいれることを提案してので野菜は土が良いせいか大変良く育ちたくさんの野菜ができた。
弟のダニエルも今日は一緒に行きたいと言う。
ダニエルは来年12歳になり4年間、貴族学校に行く予定でラルクに最近勉強を教えてもらっているが、あまり学校に行きたくない様子で勉強が進まないようだ。
ダニエルも街にでて、自分の立場を客観的にみることも社会勉強も必要だ。
今日はダニエルより小さな男の子に会うと思うけど、ちゃんと皆に挨拶するのよ、と姉らしく彼に言った。
私はさっそく朝焼いたパンを持って、パン屋さんに出向いた。
パン屋の意地悪オババも最近は愛想がとてもよく、私達に行くとお茶などをだしてくれる。
今日は弟も一緒だが、弟にもにこやかだ。
お茶をだしてきてくれたので、自分で焼いたブドウのクッキーをお茶菓子に少し出した。
皆でお茶を飲んでいると、この間の家族が店にやってきた。
男の子は8歳ぐらいだろうか? 私達が食べているクッキーに目が釘付けになっている。
今日はマルパンとブドウパンだけ店に置き、お金をもらい、彼等とお店を出た。
今日は野菜などたくさんの荷があるので、彼等の家まで馬車で送って行った。
馬車の中で男の子にクッキーを渡したら夢中になって食べていた。
彼の父も母も大変感謝してお礼を何度も言ってくれたが、目が自分達もクッキーが食べたそうだった。
彼等の家は街のはずれにあり馬車で5分のところにあった。
彼等は「汚い家ですがどうぞ」と言い私達を家にいれてくれた。
ダニエル、そんなキョロキョロ部屋をみるのは失礼だよ、と思ったが黙っていた。
部屋にはテーブルが一つあるだけで、他には何もなかった。
この家もこの街を出たと言う人に借りているという。
ホワイト一家がこの街に来たのは2か月ほど前で以前は隣の子爵領に住んでいたらしい。
以前住んでいた子爵領で傭兵たちがこの街は物が安いと話ているのをきき、この街を出た人が家を安く貸してくれると言うことでこの街に家族で来たらしい。
ところがこの街に来たら仕事がまるでなく、貯金は底をつき、食べることも困難になっているという。
私はさっそく肉の燻製をはさんだ丸いパンを彼等に差し出した。
彼等は涙を流しそのパンを食べていた。
この街には仕事がない、以前ラルフも仕事を探したことがあるが、この街にはなかった。
この街には仕事がないのだ。 経済が回っていない。
困ってた人々を救う教会もない。 だからこの街から皆出て行ってしまうのだ。
生活に必要な最低限なものはあっても、街の皆にお金が回っていないので、皆貧しくお金欲しさに辺境伯の兵士たちが来て3日間もバカ騒ぎして帰るのを許している。
ダニエルも一家が貪るようにパンを食べている様子を見て何か考えているようだ。
自分達も子爵邸を出る前はお腹が空いていて少しのまずいパンを分け合い食べていた。
昔のように思えても、ほんの少し前のことだった。
姉様のパン焼き技術、ラルフの何でもできる技術、母様の洋裁の技術、父様の農業技術、すべて皆生きていく技術を身につけている。
自分には今のところ何もない、平民になった今、一生家族やラルフに頼って生きるわけにはいかない。
食べるもののない貧しい家族を見てダニエルは貴族学校に行き自分も何かを勉強して生きる技術を身に着ける必要があると思った。
私は明日、ホワイト氏に屋敷にくるように言った。
屋敷に何か仕事があるだろう。 給金も私の方から少し出せる。
屋敷で手伝ってくれる人がいれば、ラルフも少しは楽になるだろう。
彼は屋敷で文句も言わず働き詰めだからね。
ここから屋敷まで大人の速足なら30分ぐらいだろう。
明日はここに午前中に迎えに来るとホワイト氏に言って、野菜を馬車からおろし、私たちは屋敷に帰った。
弟は馬車の中で、「姉様、ラルフはえらい」と呟いた。
私はそんな彼を笑って見ていた。 ダニエルも少しは社会勉強ができたようだ。




