ラルフの作った薪オーブン
だんだん寒くなり外でのパン作りが大変になってしまった。
石窯は薪の温度調節が難しいので釜のそばで管理しなくてはいけないし、薪の残り火で焼くピザを焼くときは山から吹く寒い風で体が冷える。
ラルフは居間にある煙突掃除をしてくれたので冬の間、暖炉でのパン焼きも考えていたが、ラルフは厨房の中に下では薪を燃やし上段はパン焼きができる、いろいろ工夫して薪オーブンを作ってくれた。
これなら私も屋敷の外に出ることなくたくさんのパン屋、ピザ、アップルパイを作ることができる。
また厨房の家族の皆にも薪をあまり温度調整しなくても美味しいパンを焼くことが出来ると好評だ。
冬用に蓄えたたくさんの農作物や薪のため、父もラルフも手が空いたので、最近はパン焼きを手伝ってくれている。
街のパン屋さんに持って行く回数も増え週に3回と増え、パンの他ピザやアップルパイ、ブドウのクッキーなど種類も増えて店の半分以上を私のコーナーで占めている。
冬になると近郊から馬車で買い物に来る客も少なくなるが、私のコーナーは店に並べるとすぐなくなるらしい。
母のドレスも好評で我が家はだんだん食べること、着ることに困らない生活が送れるようになった。
今年の冬は何とかこれで乗り切れると思っていたある日、私は街で飢えた親子を見つけた。
彼等は風を遮ろうと、パン屋の壁にに親子3人で座っていた。
私は以前のことがあるので注意深く彼らを観察していると、男の子がお腹が空いたと泣き出した。
「父親らしき人はもうパンを買うお金もないんだよ」と子供の頭を撫でてなだめていた。
私は思わすラルフにこの人達を助けてあげよう、と言った。
彼は、「彼等を助けるのは素晴らしいことだが、この件は一度家族にも相談してからのほうが良い」と言った。
ラルフの言う通り私たちはもう貴族ではないし、経済的に恵まれてもいない。
私はその家族に声をかけ、パン屋の隅で今出したばかりのマルパンを5つだけ彼らの渡した。
そして、また2日後にここに来るので、その時またここに来るよう、彼等に言った。
帰りに肉屋さんにより、大きな肉の塊を買った。
お店の主人も最近寒くてお客が減り、仕入れた肉があまっていたので、喜んで少し古い肉を安く出してくれた。
私はお腹をすかせた彼等にもと思ったがすでに一家の姿はそこにはなかった。
「お嬢様、そんな大量の肉をどうするんですか」とラルフに聞かれたので、とっさに庭の釜で肉の燻製を作るのよ、楽しみにしていてね、と言った。
肉の燻製は日持ちがするし、私は作ったことがない燻製だったが、上手に作って、皆に喜んでもらえると良いな、と思った。




