登り窯と美味しいパン
父とラルフは、倉庫のレンガを使い比較的大きな釜を作ってくれた。
畑仕事の合間に作ってくれたので10日ほどたったが、釜には細いレンガの煙突があった。
4日ほど前ラルフは父と相談して馬に乗り少しでも安い苗を買うため農園をまわって、良い苗と雌鶏を一羽買って来てくれた。
それで裏の畑は広がって、早朝から父とラルフは畑仕事とその周りに柵を作る作業を繰り返している。
ラルフは山の木を伐り、大きな丸太を畑や隣の鳥小屋に柵を作っている。
山の木を伐り出し、斧で調理用の薪も作ってくれている。
今のところその気配はないが、寒くなり雪が降ると山から獣が出てくる可能性があるからだ。、
以前に植えた野菜の収穫はできないが、それでも葉物野菜は成長して、スープの中にその菜っ葉を入れることが、多くなった。
力仕事をしている父やラルフ、食べ盛りの弟、顔色の悪い母、そしてガリガリ幽霊のような私、何とか皆にお腹いっぱい食べさせないといけない。
昨日、葡萄酒が出来たので、父とラルフに飲んでもらったが、なかなか好評だった。
ラルフは髭面で叔父さんのような見た目であるが、まだ21歳になったばかりであった。
目が綺麗で、顔立ちは整っていて髭をそれば、なかなかのイケメンなのかもしれない、なんて思いながら彼をみてはいけない。
わたしはもうすぐ14歳だが、ガリガリ君の姉のよう容姿なので、ラルフも私にそんな風に思われたら気持ち悪いだろう。
昨日、発酵させたブドウの実をしぼり、最後に絞った汁を小麦粉に練りこんだ。
一晩寝かせてさっき見たら、少し生地はふっくらしていた。
今日さっそく出来上がった釜に火をいれ、パンを焼いてみようと思う。
上手くできる自信はないが、私は元パン屋の娘、パン屋の経営者、何とかなるだろう。
鶏もいつも3個ぐらいしか卵を産まなかったが、今日は奇跡的に4個生んでくれた。
明日から毎日4つ卵を産んでくれると、嬉しいんだけど。。。
ラルフが時々馬で近くの街に行き、野菜やパンを買って来てくれるが、パンは固くて不味いので、この国はあまりまだ発酵技術が進んでなく、一部の金持ちだけが、美味しいパンを食べているのかもしれないと思った。 ラルフがここに来るときお土産に持って来てくれたパンも、焼き方がましなのか、近くの街のパン屋に比べたらましであったが、膨らんではいなかった。
母と一緒に卵に入った卵と野菜のスープはできたけど、外の釜で私はパンを焼こうと釜に薪を入れ火を入れた。
葡萄の酵母でパンが美味しく出来れば、、、私は祈るような気持ちだったが、いつも間にか家族が私の周りに集まってきた。
「姉さま、朝食はまだ❔お腹空いた」と騒いでいたが、待っててね、フッカフッカでホッカホカのパンを食べさせてあげるからね。パンを実際は作ったことがないので、薪を少なめに入れ、手前に丸く成形したパン生地を鉄板の上に乗せ、じかに火があたらないところに、火加減もあまり温度をあげないよう気を付けながら、祈るような気持ちで蓋をしめ、パンを焼いた。
10分ほどして、すこし様子を見に蓋を開けたら、すこし膨らんでいた。
すっかり感激してそのまま、見ていたら、すこし焦げ目がついてきたので、ラルフが手早くその辺にあった小枝ではさみ熱い鉄皿をとりだしてくれた。
弟はすぐパンを食べたそうだったが,熱いので少し冷まして朝食に食べようね。
家族が皆私のパンをみて感激しながら館に入ったが、フゥと釜の方を振り返ると釜のすぐ後ろに、いつも私がベッドに入り眠りに入る前に現れる男が釜を見守りように立っていた。
私はその姿に昼間もこの男は出現可能なのか、と思ってしまい、今度男が昼間出てきたら話しかけてみようと思った。
その日の朝の朝食のパンの美味しさときたら、仄かにブドウの香りがして、あたたかく、フカフカ。
久しぶりにパンを食べたという思いだ。
母も久しぶりに笑顔を見せてくれ父はマリアはパン焼きの天才だと褒めてくれた。
弟は持ってほしいと騒ぎだしたので、ラルフは慌てて自分の味わうようにして食べているパンを差し出したが、だめだめ、弟を甘やかしちゃとラルフに言った。
昼の分は取ってあるから、また昼食にだしてあげるから、がまんしなさい、と弟に言い、弟にぶどうジュースを差し出した。
このブドウパンは商売にならないかな、でも今は皆の分を作るのが精いっぱいだし、、、私はそんな思いをあれこれ、巡らしてみた。




