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第86話「7の魔法」

僕は一心不乱に集中してピアノにかじりついていた。


 時たま、手を休め、ピアノの音が鳴らなくなったタイミングを見計らって、サポート役の人が水分補給のための飲み物が入ったペットボトルを部屋に入り、ピアノのいつも決められた位置に置いてくれる。


 僕はそのペットボトルを感覚で位置を悟り、正確に無駄な動きなく取った。


 「ゴクッゴクッゴクッ」


 ペットボトルの水を半分くらい飲み干した。手で持った時の重みから、大体、残りの量が分かる。




 もう1時間が経った。


 今日のコンサートではショパンのピアノ協奏曲第7番「ピンクの男」を演奏する。


 ショパンが霊界で作曲した最大傑作だ。


 世間では僕の新作演奏会という名分だが、今日はある勝負に出ようと思う。


「ガチャ」


 誰か部屋に入ってきた。


「ノブさん!! そろそろ個人練習は終了の時刻になります。今度はホールでオーケストラと合わせる練習になります」


 いつものサポート役だ。


「はい」


 僕はオケとのピアノ練習に向かった。


 


  


 


 サポート役に誘導案内されて、ピアノの前に座った。


 聞き取りやすい声で会場アナウンスが流れ出した。


「えー、、ここで皆さんにお知らせがあります。。これから演奏されるピアノ協奏曲は死後の世界の天国でピアノの詩人、フレデリックショパンが作曲したものです。ノブさんは特殊な幽体離脱という睡眠中に魂が天国に行く方法でフレデリックショパンに会い、ショパン本人が作曲したピアノ協奏曲を教えてもらいました。その天国でのショパンの新曲を今から演奏いたします」


「ハハハハハ」


 あまりに突拍子もない内容に静かな笑いが起こった。


 コンサート会場に突然の信じられないアナウンスが流れ、観客たちの動揺し、ザワザワする音が聞こえてる。


「ショパンの未発表新曲『ピアノ協奏曲第7番 ピンクの男』です」




 演奏会が始まった。


 ショパンに霊界で直にレッスンしてもらいながら覚えた45分ほどの大作だ。


 ショパンが夜の静かな田んぼに船を浮かべながら、涙を流しながら手紙を書き、その手紙から曲想を生み出したとは言っていたが、、「ピンクの男」って誰のことなのか、どういう意味から名付けたのかは今度、ショパンに会ったら聞いてみよう。




 この「ピンクの男」は、、エチュード10-3を彷彿とさせる箇所がある。


 悲しみに似た静かなゆっくりした舟歌のような旋律から始まり、徐々に激しく怒りと絶望のような早い連打の和音が勢いを増し、やがて頂点に達し、また徐々に静かな諦めにも似た曲調へと回帰する。


 音の繋げ方やドラマ性、音の感情の高まりと迫力、静かさと激しさのコントラスト、、全てが完璧で奇跡的な超傑作。


 ピアノ協奏曲史上最高峰の名曲なのは間違いない。


 ショパンも「僕の一番お気に入りの大好きな曲」と言っていた。




 別れの曲との唯一の違いは諦めにも似た悲しみの旋律に戻ってから、徐々に明るい喜びのような和音になっていき、、まるで別れを告げられたけど、、また一緒にいられることになりました……みたいなクライマックスでは飛び切り今までショパンの作品では聴いたことがない「喜びの大爆発」「大歓喜のハッピーエンド」で曲が終わるということだ。


 別れの曲の超パワーアップバージョンだ。


 45分で人生の全てのドラマが凝縮された音の究極のエッセンス。


 普段は曲に標題をつけないショパンだが、この曲だけは


特別だと言っていた。


 ラフマニノフのピアノ協奏曲2番のメロディーが少しアレンジして入っている。


 ショパンはラフマニノフに影響されたのか……


 ショパンは弾くたびにラフマニノフを身近に感じたいという想いがあるのかもしれない。


 ラフマニノフとは常に繋がっていたいらしい。


 壮大なメロディー、名人芸的ピアニズム、超絶技巧による難易度は僕の知っているショパン作品の中で一番高い。


 ショパンにもこんな難易度の高いピアノ協奏曲史上最高峰の名曲が生み出せるのか。


 ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番より難しい。


 ラフマニノフと常に一緒にいて、、その全てを吸収し、


作品に昇華させた現在のショパンの集大成と言える。


 この作品のオーケストレーションは今までのショパンの作品とは思えないくらい進化している。


 オーケストレーションに優れたラフマニノフの教え方が異次元だったに違いない。 


 ラフマニノフは更にその上をいくピアノ協奏曲を生み出したが……


 ショパンは10年かかってこの作品を完成させた。


 ショパン史上最大の力作だ。


 ショパンはピアノ協奏曲といえど一曲のために10年もかけることは普通ならあり得ない。


 それだけ改良に改良を重ね、、パーフェクトな作品を目指した。


 どれだけの「愛情」がこの曲に込められているか。


 計り知れない。




 僕はこの傑作を霊界から地上世界に広めるためにショパンに頼み、僕の体に憑依してもらい、ショパンが僕の体を使い、楽譜を全て地上世界で書いたのだ。


 憑依のトレーニングは並大抵ではできない難しいものだった。


 ショパンが自分に憑依するなんて信じられなかった。


 




 ショパンを見ていると自分との才能の差に驚く。


 どんなに頑張ってもショパンを超えるという夢は叶わない。


 だけど、、、


 夢を追えば少なくても途中までは行ける。


 夢を追う途中に見た景色は何も代えられない感動だと


 素直に思える僕がいる。




 45分後……




 弾き終えた。


 割れんばかりの拍手が響き渡った。


 我ながら完璧な演奏だったかも。  




「ワアアアアアアアアーーー!!!」


 コンサートホールが凄まじい絶叫で地響きがした。


 こんな観客の反応は今まで聞いたことがない。


「ショパンはやっぱり偉大だなあ!! これだけのお客さんを感動させるなんて……音楽家の鑑だよ!!!!」


 そして、、それを手伝った僕もね。





 そういえば、、ショパンもラフマニノフも「7」という数字に縁があると言っていたな。


 ・このピアノ協奏曲は「第7番」で、、


 ・ネコカフェでのラフマニノフのコーヒーの番号が「77番」で、、


 ・エキスパートピアノ音楽学校でバラード4番とプレリュード鐘を弾いた報酬が「777億」で、


 ・ショパンは昔、、ゲームセンターのポーカーで「77777」のファイブカードを出した。。


 7に確かに縁がある気がする。


 「7」と「77」は自分で選べるかもしれないが、


 「777」と「77777」は偶然のラッキーなのだ。自分では選べないだろう。 


 偶然と必然で揃えたたくさんの「7」という数字の数々。


 残りの「7777」もきっと僕が知らないだけで、、どこかで揃えたのだろうか?? 誰かが揃えたのだろうか??


 日本では7つのボールを揃えると、、どんな願いも叶うというアニメがあるが、、その作者とは、、霊界で会ったことがあるが、、幸せそうにしていた。。


 エンジェルナンバーで「7」は正しい道を進んでいるという意味があるらしい。。


 そして、、願いが叶う前兆という意味でもあるらしい。。


 だから、、ショパンとラフマニノフの願いが叶ったのだろうか。。


 「7」を集めたから。。


 

 


 翌日、このコンサートは新聞の一面を飾った。


 いつも一緒にいる世界王のアゲハがコンサートで天国のショパンが作曲した地上ではまだ知られていない未発表曲を僕が演奏したと。


 この話は事実でアゲハ自身も死後の世界の霊界のショパンに会ってきたと公言したのだ。


 これは世界中で大ニュースになってしまった。


 世界王の影響力が一番ある人間のアゲハが記者会見で公式に宣言したからだ。




 「ショパンの霊界作品地上拡大作戦」は順調だ。


 だんだん、霊界の存在が有名になってくればいい。


 まだまだ信じてない人がたくさんいる。


 そんな人に声を大にして言いたい。


 「死後の世界は存在する」


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