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第38話「夢で見た世界」

よく晴れた日、ショパンは生前、夢の中で見たある風景の場所が霊界で存在しないか調査していた。


 覚えているのは、普通の土の一本道に、横に草や木が生えて、ある場所でひとつの交差点にさしかかる。


 そこには「立ち入り禁止」の看板が立てられてて、その看板の先にはまた同じような道路が続いている。


 そこに古民家がひとつあった。


 その看板の先に行こうとすると、地面に大きなワープホールみたいな穴が開き、そこに吸い込まれて、夢から覚めたのだ。


 人間は睡眠中、霊界を訪れていることがあるから、もしかしたら霊界に本当に存在するかもという期待があったが、今まで200年ほど経つが、まだ実際に本気で探し始めたことはなかった。


 今度こそと思っていた。


 ラフマニノフは不在だった。


 ラフマニノフは音楽学校の校長としての仕事をしていた。


 ショパンは霊界の「人生記録所」に来ていた。


 自身の生命コードを入力すると、自身の今までの前世や物質界での生活の様子など、自分のすべてを細かく、詳しく調べることができるのだ。


 睡眠中の夢の内容まで調べることができるが、その夢の場所も調べられるかもしれないと思ったのだ。


 しかし、いつ見た夢なのかも見当つかない。いつ見た夢なのか、日時を入力しないと調べられない。片っ端から、全ての夢を調べるわけにもいかない。


「ピコーン」


 ラフマニノフから生命時計で連絡が来た。


ラフマニノフ「大丈夫か、ショパン。お前は今、人生記録所に来ているね。俺には分かる。でも、そこではお目当ての場所は探し当てられないだろう。実は、映像から場所を特定してくれる映像による場所特定所があるらしい。今、お前が心配で俺も何かできることがないかって、いろいろと音楽学校の仕事の休憩中も考えていたんだ。今、場所特定所のアドレスを送るから、そこに行ってみろ!」


ショパン「なんでラフマが僕の必要なものを知ってるか分からないけれど、とにかくありがとう。君には本当に助けられているよ!必ずこの恩返しはするから」


ラフマニノフ「今日、夕飯にお前特製のショパンチャーハンを作ってくれ。楽しみに待っているからな」


 ショパンはラフマニノフに紹介してもらった「映像による場所特定所」という胡散臭い名前の場所に向かった。


 大きな丸い形の建物で、全体が虹色に光っていた。


 ショパンは受付で、生命ポイントを10万ポイント払い、椅子に座った。そして、大きなヘルメットみたいな装置を付けた。


担当の者「ショパンさん。では、あなたが場所特定したい映像を可能な限り鮮明にリアルに頭の中で思い浮かべてくださいな」


ショパン「はい」


 ショパンは道路というより、あの立ち入り禁止の看板と、その先の古そうな家を思い浮かべた。


 印刷機から、紙が出てきた。場所が書いてある。


ショパン「これでやっとあの不思議な夢の場所まで行ける。本当に実際に霊界で存在していたとは。脳が作り出した無意味な幻覚かなと思ったけどな」


担当の者「もし、その場所に行きたいのなら、こちらの台に移動してください」


ショパン「行くことができるのか。よかった」


担当の者「行ってらっしゃい。ショパンさん」


 空間を移動して、ワープしてたどり着いた場所は、あの夢で見た場所だ。ショパンがずっと気になっていた、幻想的な感覚にさせられる場所。


 生前から気にしていた。


 この場所を想うと、なんともいえないMagicにかかったような魔法のようなファンタジーともいうような感動があった。


 ショパンは立ち入り禁止の看板の前に立った。


ショパン「これを越えようとして、いきなり地面から時空が歪み、穴が現れて、邪魔されたんだよな。今回は大丈夫かな??」


 ショパンは立ち入り禁止の看板をどけずに、またがって、越えた。何も起こらなかった。


 ショパンは安堵した。不思議の国にお邪魔するような迷い猫のようなワクワク感と一種の不安もあった。


 でも、内心、ウキウキが止まらなかった。こういう冒険は好きだった。


 看板の先の家の前に立った。


ショパン「誰かいませんか?こんにちは。フレデリックショパンといいます」


 ショパンは誰も応答しなかったので、扉を開けて、中に入っていった。


 そこにはおばあちゃんがいた。白髪頭の安心感のある感じだ。


 中には古そうな年季の入ったグランドピアノがあった。


ショパン「と、突然入ってしまってすいません。実は」


おばあちゃん「何も言わなくてもあなたがここに来ることは全てわかっていましたよ」


ショパン「えっ?どういうことですか?私はあなたを知らないのに。どこかで会いましたっけ??」


おばあちゃん「このピアノで何か弾いてください」


ショパン「おばあちゃん。その前に答えてください。なぜ、ここに僕が来ることを前もって分かっていたんです」


おばあちゃん「ここはあなたが生まれた場所だからです」


ショパン「えっ、僕が生まれた場所??」


おばあちゃん「あなたという生命そのものがこのピアノから生まれたのです」


ショパン「このピアノから僕が生まれた?? どういうことです??」


おばあちゃん「あなたが何よりピアノにこだわり、ピアノを愛しているのは、あなたがこのピアノから生まれたためです。あなたはピアノそのものだったんですよ。ピアノが意思を持ち、やがてそのピアノがただ弾くための道具として存在するだけじゃなくて、ピアノ曲を作りたいという、作曲して活躍したいという強い想いを持ち、それがあなたという存在を誕生させたのです」


ショパン「信じられません。ただの妄想ではないですか」


おばあちゃん「あなたは戻ってきたのです。このピアノにまた再会するために。さあ、何か弾いてください。あなたの一番大好きな曲を」


 ショパンは「相棒」というピアノ曲を弾いた。ショパンがラフマニノフに感化されて、作曲された20分程度の大曲である。


おばあちゃん「今まで、どうでした?? いろいろあったかと思います。辛いことも苦しいことも。もし、あなたが自分の存在を一時的に消したいならば、このピアノに戻ることができます。意識も何も無くなるので、存在していることが苦しいと感じることがなくなります。あなたが生前、この場所を睡眠中の夢で訪れたのは、すごく苦しかったロシア軍によるワルシャワ蜂起で、絶望したあなたは死にたいと強く想ったのです。なので、このピアノに会い、存在ごとまたピアノに戻り、意識を無くし、苦しみから逃れたいという想いがあなたをあの時、ここに連れてきたのです。しかし、立ち入り禁止の看板をくぐろうとして、あなたは地面に穴が開き、失敗した。もし、穴が開かなかったら、失敗しなかったら、あなたは睡眠中に亡くなっていたのです。何か邪魔が入りました。それは、私でも説明ができません。誰かによる仕業でしょう」


ショパン「話が難しくなってきて、混乱してます。とにかく、私はもうピアノに戻りたくないです。今、ラフマニノフという相棒がいて、私がピアノに戻ったら、絶対に泣くと思います。彼の涙を、悲しむ姿を想うと、どうしてもピアノには戻れない。僕はずっと存在することを、このまま生きていきたいのです」


おばあちゃん「ラフマニノフさんですね。きっと。何か方法を考えて、ショパンをこのピアノに戻らないように止めたのでしょう。ラフマニノフさんが霊界から何かしたのかもしれませんね。ラフマニノフさんはショパンさんが気になっていたらしいですから。ずっと昔から」


ショパン「ずっと昔から?? どういうことですか。それよりも今日、ラフマニノフにチャーハンを作ってやる約束なんです。だから、ピアノに戻ることはできません。どんなに苦しいことがあっても生きていきます」


おばあちゃん「でも、どうしても辛くなったら、またこの場所に来なさい。いつでも無に戻れる。意識を一時、失い、存在している苦しみを取り除くことができるという事実は、あなたを安心させることでしょう」


ショパン「それにしても、このピアノが僕、自身だったなんて、ピアノから僕が生まれたなんて、あまりに感慨深いです」


おばあちゃん「私はこのピアノの守り神です。この場所で待っています。定期的に、来てください。私はあなたをずっと見ています。私はあなたの親ですから」


ショパン「えっ??」


おばあちゃん「私はこのピアノの製造者です」


ショパン「じゃあ、あなたがいなかったら、僕はいない??」


 ショパンは本物の自分の生みの親に会うことができた。

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