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第31話「オーケストレーション上達進化コンサート」

「ショパンのオーケストレーション上達進化コンサート」



というのがひそかに開催された。


 ショパンはオーケストレーションが苦手であるという常識をそろそろ打ち破り、みんなにオーケストレーションで認められたいという願望があった。



 なので、自ら企画したのだ。



 ショパンは大々的にこのコンサートの宣伝活動をしてきた。



霊界の各地で記事の広告も掲載し、テレビ局もたくさん放送するために、全てテレビで流してくれと自らテレビ局に足を運んで、お願いまでした。


 生前はそのような自身の宣伝活動をあまりしなかったショパンだが、霊界では変化したのだ。


記者たち「ショパンさん。これからコンサートが始まります。みんなの期待はかなり高いと推測されます。緊張とかありますか?」


ショパン「緊張よりもワクワク感が強いです。これから私がより天才だということが証明されますからね。オーケストレーションはとにかく苦手でありましたが、才能が無かったのではなく、努力をしなかっただけだったんだってね。楽しみにしていてください」


ラフマニノフ「ショパン、自らハードルを上げるようなこと言わないほうがいいぞ?万がーって時にどうする?」


ショパン「とにかく、もうオーケストレーションは極めたとまで言うつもりはないが、かなりの水準まで達した。ラフマより上手い思う」


ラフマニノフ「楽しみだな!!!俺を超えるのか!!」


 こうして、ショパンのコンサートは霊界で最も権威と歴史のあるコンサートホール「バラゼヤン」で行われた。


 オーケストラの人たちが席に全員座り、指揮者の人も台に立ち、ショパンもゆっくりと歩いて登場した。


「パチパチパチパチ」


 大拍手する観客たち。歓声を上げるものもたくさんいた。


 コンサートでは以前、ショパンとラフマニノフがイチゴジャムを食べたときに使った小さな円形の机と同じものがたくさん用意された。


 そこで、ジンサ考案の食事をバイキング形式でショパンの演奏を聞きながら食べるというものだ。


 観客の数はざっと1000人程。


 みんなショパンの根根強いファンばかりだ。


 チケットの倍率は極めて高く、ショパンへのみんなの期待が表れているといえる。



 演奏が始まった。


 ラフマニノフは一番後ろの席で、優しく我が子を見るような眼差しで見学していた。

 

 一番後ろにしたのは、ショパンがラフマニノフを意識して、緊張しないためだ。


 ショパンが一番後ろで見守っていてほしいと懇願したのだ。


 観客たちはほぼ静かに見守っていた。


 約1時間30分の演奏は順調に終了した。



 アンコールとして、ショパンは贅沢にもラフマニノフのピアノ協奏曲3番を全楽章演奏した。


 ただ、ラフマニノフを演奏する前に、ショパンは自身が作曲し、演奏したピアノ協奏曲「夏」に関して、やけに終わった時の拍手が少ないなと思ったが。


 このピアノ協奏曲「夏」は1時間30分の大作であり、ショパン史上最高に手をかけた傑作という自負があった。


 5楽章から構成されている。


1楽章「セミの鳴き声」

2楽章「夏祭り」

3楽章「ひまわり」

4楽章「海水浴」

5楽章「花火」


 ショパンはテレビの生出演にすぐにコンサート終了後に向かった。


 テレビで専門家たちとコンサートの感想や意見を言い合い、討論するというものだ。


 これは霊界中で放送されることになっている。


 それはベートーベンとモーツァルトの2人が専門家のコメテーターとして呼ばれていた。


ショパン「それではよろしくお願いします。どうでした??ぶっちゃけ、今回の私のオーケストラの使い方は。ピアノ協奏曲は。一応、全力を出したつもりですが」


モーツァルト「厳しいこと言います。全く上達していないどころか、ひどくなっているようだ。オーケストラと言えないレベルだ。下手なんてもんじゃない!!」  


ベートーベン「そうだな。同感だ!ショパン。お前はやはり、ピアノしかうまくない。ピアノしか取り柄が無い。弱点克服はあきらめなさい。霊界に来て、200年音楽をやってきたのに全然管楽器の使い方がなってない」


ショパン「そんなバカな!!!私としてはラフマニノフよりも優れているように思えたが」


モーツァルト「ラフマニノフより?笑わせてくれるな!世間知らずだよ。出直してきなさい!」


ショパン「観客のみんなにインタビューを聞きたい。どんな感想だったのか」


記者「用意しております!!!」


観客1「あれだけ大々的に宣伝しておいて、全くの期待外れでした。あれだけ期待外れにさせるのはショパンしかできないと思います。ある意味、本当に天才だなと!」


観客2「ショパンの夏ってピアノ協奏曲はオーケストラが目立っていなかったです。詐欺ですよ。コンサート名でオーケストレーション上達進化って、恥ずかしいですね」


観客3「ピアノしか作曲できないんだって、ショパンの魅力なのかもしれませんね。本当にひどかったです。予想を遥かに下回る出来に泣きたいです」


観客4「メロディー、旋律の美しさは申し分ない。ただ、それだけだ。メロディーがいいだけだ」


ショパン「うわあああああああああ!!!!」


 ショパンはいきなり消え去り、家に閉じこもってしまった。


 ショパンは自分にはオーケストレーションの才能がないのだと認めたくなかった。


ベートーベン「ああ、せっかく私たちと意見交換し合っているのに、ふてくされて退場してしまった。どうしようもない男だな!!!」


モーツァルト「マイナスな批判をされただけで逃げてしまうとは。相当、ショパンの今回のコンサートの思い入れは強かったみたいですね。」


 ショパンは一人、泣いていた。


「ううう。うううううう」


 ものすごい表情で悔しがった。


 ラフマニノフがいきなり姿を現した。


ショパン「ラフマ。今は一人にさせてくれないか?悔しくて、残念で死にそうなんだ!自分に絶望したよ。自分が憎い」


ラフマニノフ「ショパン。コーヒーを淹れたから飲め!」


ショパン「いらないよ。いつものやつだろ?」


ラフマニノフ「今までにない俺オリジナルの最高のもんだ」


ショパン「ん!!!うまい!!!うますぎる!!!!!ラフマでもこんなコーヒー作れるんだ!!!」


ラフマニノフ「お前が悔しくて泣いてしまっているときに慰めになる癒されるコーヒーを開発していたんだよ!!実はお前のコンサートでやった曲の楽譜を10日前に、見てしまってな。これはダメだ。酷評は間違いないと分かったから、なんとかショパンが酷評され、落ち込んだ時のためにと思って、この元気になるおまじないが入ったコーヒーを用意しようと必死になっていたんだ」


ショパン「ラフマ⋯君は最初からこうなることがわかっていたんだね。ウウウウウ。僕にはオーケストレーションの才能はもうないから、あきらめたほうがいいのだろうか。今回の出来事は本当にショックだ」


 ショパンは顔を真っ赤にして涙を流しながら、ラフマに聞いた。


ラフマニノフ「でも、この元気になるコーヒーは俺のコーヒ一屋で一番人気になったぞ!!!今までで一番美味しいって言ってくれた人が多かったんだ。そして、ダントツで売れている。霊界最大のコーヒー屋になれるかもしれないな。俺のコーヒー屋は。お前のおかげで」


 ラフマニノフ流の励まし方だった。


ショパン「それ、本当なの?僕がきっかけで作ったコーヒーがダントツで売れているの?なんか元気出てきたよ!励まされたよ!ありがとう!でも、事実なの?作り話じゃなくて?」


ラフマニノフ「ショパンの作曲したピアノ協奏曲『夏』はこれから俺が一緒に作り直してやる。お前にオーケストラについて指導しながらな。そうすれば、この曲は俺たちの共作になる。力を共に合わせて作った大事な曲になる。だから、お前の行動は無駄になってないし、逆に俺たちの絆を深めてくれるんだよ」


ショパン「うううう。ラフマ。本当にありがとう」


 ラフマニノフはショパンの肩に手を乗せ、やさしく支えながら励ました。


ラフマニノフ「目標がまたひとつできてよかったじゃないか。ショパン。もし、オーケストレーションが俺よりも優れてしまったら、俺の存在価値が薄くなる。俺は、お前のオーケストレーションが苦手なところを穴埋めする役目があるのかもしれないな。だから、ショパンはずっとオーケストレーションが苦手なままでいてほしいのが正直なところだよ。苦手だから、俺たち、うまくいくと考えてくれたらな。それに何よりオーケストレーションが苦手なショパンが好きだ。何もかも完璧な奴より欠点が何かしらあったほうが可愛く思えるんだ。魅力的だ。人間は不完全だからこそ魅力的で愛されるんだよ」


ショパン「ラフマ、僕を励ましてくれているんだね。君は本当に最高の人間性を持っているね!」


ラフマニノフ「オーケストレーション上達という目標を達成するまでの道のりが一番面白いんだ。何もかも極めてしまったら、次にあるのは退屈でつまらないという喪失感なのかもしれないな。目標は達成するまでが面白いんだよ。明日からこのピアノ協奏曲『夏』を改訂していこう。俺たちでもっとすごいものにしていこう。でも、なんか俺が後からショパンと協力して作り直して俺たちの友情の証みたいな存在になるって考えると、本当に嬉しいよな。お前も喜べよ。お前のこ

のピアノ協奏曲は一切無駄になってない!」



ショパン「ありがとう!!!」





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