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第26話「才能確認作業」

ショパンとラフマニノフは音楽学校「エキスパートピアノ」に偵察に来ていた。


 生徒たちの演奏を直に聞いてみたかったというのが理由だ。


 優秀な生徒は基本、学校の先生に推薦される形でショパンとラフマニノフに紹介されるが、先生の感性だけでなく、自分たちが実際に聞いて確かめるということも重視したい項目だった。


 直径数キロの円形会場にグランドピアノが数百個置かれ、生徒たちが全てのピアノで演奏している。こんな奇妙で壮大な風景は霊界でしか見れないだろう。


 霊界のこの会場は特殊な作りになっていて、普通、ピアノとピアノを至近距離において、それぞれ違う演奏をさせたら、音が混ざって演奏の良し悪しの判断がしづらくなってしまうということが起きそうなものだが、ここでは起きない。それぞれピアノに座った人に周りの音は聞こえないし、そこに近づいてきた人もそれぞれ隣の音が混ざり合うことなく、その近づいた一番近いピアノの音しか聞こえないようになっている。なので、ショパンとラフマニノフはそれぞれ何度も演奏の仕方が違うその生徒独自の味のみを楽しむことができた。歩きながら、何度も演奏のハーモニーが違うものが、動く列車の車窓の景色のように変わるのは、少し慣れない体験かもしれない。


 ショパンはある生徒の前で足を止めた。


ショパン「君、独特な演奏の仕方するね。すごい激しい演奏ばかりだ。ここまで嵐のような激しさを持つ演奏は今まで聞いたことがあまりないな。でも、その仮面は外したまえ。私たちに顔を覚えてもらえないならば、これからの音楽活動で不利になるだろう」


「あなたの忠告は全くアテになりません。私はラフマニノフさんのお気に召す演奏をしたかっただけです。ショパンには認められなくても結構です」


ラフマニノフ「アハハハハ」


ショパン「何を言ってるんだ!君みたいな態度をしてきた輩は初めてだ。誰だ!お前は!」


ラフマニノフ「芳樹だよ!」


ショパン「えっ!芳樹?僕が冷たくあしらったことのある、あの⋯」


芳樹「ラフマニノフさん。ショパンを驚かせることができました。大成功です!!」


ラフマニノフ「今までにないタイプの演奏スタイルを確立させている最中だからな。ショパンが足を止めて、芳樹にどういう反応を示すか興味あったが、やっぱり予想通りにの結末になったな」


ショパン「芳樹!お前の演奏スタイルは芸術にドロを塗る行為だ。気を付けたほうがいい!!」


芳樹「やっぱり、ショパンは意地が悪いな。さっきまで褒めてくれたと思いきや、正体が知れた瞬間に意見を変えやがった!それに別れの曲はショパンが作曲した当初は、ヴィヴァーチェで明るく快速にってはずだった。最初の思惑どおりに弾いてもらえただけありがたいと思え!別れの曲を早く激しく弾くは僕だけだから価値の高い貴重な個性だろ?」


 そう、ショパンが足を止めたのはエチュード10-3「別れの曲」を芳樹があり得ない快速に激しく弾いていたからである。


ラフマニノフ「俺がたくさん指導した甲斐があって、ショパンを少しでも驚かせることができてよかった。芳樹も内心、嬉しいんじゃないの?」


芳樹「ショパンは結構、心が狭いので、認められてもラフマニノフ師匠に褒められることよりは嬉しくありません」


ショパン「ラフマ。芳樹を一流のピアニストに育て上げるって言っていたもんね。そうか。まあ、君の演奏は私の足を止めさせるほどの個性を持っていたことは確かだった。斬新で意外性の塊だ。それは認めるよ。せいぜい、頑張りたまえよ」


芳樹「彰一はすぐ隣にいたんですよ?ラフマニノフさん、気づきました?」


ラフマニノフ「いや、気づかなかった。あまり、私が注目するような演奏はしてなかったからかな。顔を見るのを忘れていた」


ショパン「そうだよ。僕は彰一をレッスンしたんだけど、ラフマにその気にさせるピアノは弾けなかったみたいだね。僕も実は、ラフマに彰一の演奏を興味持ってもらえるか内心ワクワクしていたんだけどね。ガッカリかな」


 すると、すぐ隣でまだ演奏していた彰一が演奏を止め、近づいてきた。


彰一「こんにちは。ショパンさん。ラフマニノフさん。今日はいつもの才能確認偵察に来たのですね!僕はショパンさんの演奏を真似ばかりしてきました。でも、ショパンさんの演奏はあくまで参考にして、自分のオリジナリティをしっかり身につけないといけないと思いました。ラフマニノフさんに興味持ってもらえなかったのは、ショパンさんの演奏に似せて演奏していたからですよね。いつも聞いているショパンさんのだから、、聞き流してしまったんですよね。。今度からは、自分だけの演奏の強みを作っていきたいと思います」


ラフマニノフ「彰一、、ショパンと同じ演奏だったらビックリして、、すぐに君に声をかけていたはずだ。。ショパンのような演奏は10分の1すらできていないぞ?? 勘違いしているみたいだな。。」


彰一「すいません。。そういう意味では……」


ショパン「でも、、いい子でしょ?ラフマ。芳樹と違ってひねくれてない!」


芳樹「どっちがひねくれているのかな?」


 周りの生徒たちはずっと同じ場所でなにやら話し込んでるショパンたちを見て、気になって集まってきていた。


「こらー。しっかり席について演奏してなさい!」


 先生が周りに注意していた。


ラフマニノフ「どうだ!ショパン!芳樹は!生意気だが、成長したろ?」


ショパン「いや、実はますます芳樹が可愛く思えてきたよ。あのトゲがあって、少し反抗してくる所に可能性を感じさせる。僕は入学式で言ったはず。自分たちを憧れと思わないこと。超えてやるくらいの反抗的な負けじ魂を持て!みたいなことを。芳樹は貴重な人材だよ。天下の音楽家の私にあそこまでの態度を出せるのは度胸があるし、面白いよ。初めて僕に本音でぶつかってきてくれたんだからね。ただ、謙遜して、謙虚で、自分の腹を出さないで、無難な態度しか出さない、本音を隠す生徒よりは何億倍もマシだよ」


ラフマニノフ「彰一にも頑張ってもらわないとな」


ショパン「彰一は、型にはめられてしまうからな。好青年すぎてね。芳樹のが面白いな。反抗してくるだけ」


ラフマニノフ「面白いというか、熱いよな。人間、熱さがないとな」


ショパン「ラフマがかなり熱いから、芳樹も熱くなった。まさに類友の法則だね。」

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