第24話「演技力」
ショパンは音楽学校に大きな劇場を作る計画を立てていた。
ラフマニノフ「生前は役者としても結構イケてたって噂だが、どうなんだ?」
ショパン「今、台本を書きまくっているからそれが完成したら劇場で生徒たちに発表してみたい。ラフマにも出演させるけどね」ラフマニノフ「えっ?俺も?」
ショパン「音楽家ばかりじゃなくて、俳優の演技も極めていこうよ。僕、俳優の世界にものすごい興味が昔からあったんだ。生前では、ピアノ音楽の作曲の道に進んだから、役者として活躍できなかっただけで、役者として本格的に頑張ったら、名俳優になるとまで言われていたらしい」
ラフマニノフ「お前の名演技か・・・期待はずれにならないようにな」
ショパン「期待していていいよ。自信があるからね」
ラフマニノフ「じゃあ、今、ここで何か演技してみろ」
ショパン「わかった。行くよ!」
「ああ、神様!!!なぜ?なぜ私はオーケストレーションがこんなにも下手なんでしょうか。なぜ?ああああああ!!!私より彼のピアノ協奏曲のほうが評価されている。こんなの悔しくないわけないではないかーーーー!ピアノ曲だけ上手かったと言われるのはもうこりごりなのにーー!ウウウウウ『できれば涙を流す』。神よ、何かを得るということは何かを失うということなのか。ピアノ曲が得意な代わりに、オーケストラが苦手。いやいや、待てよ」
ラフマニノフ「もういい!ショパン」
ショパン「まだ、途中だよ?ラフマ。せっかくこれからいいセリフが出てくるのに」
ラフマニノフ「期待外れで俺を楽しませてはくれないらしいな」
ショパン「じゃあ、ラフマはできるんだろうね。やってみせてよ!今のセリフをもう一度⋯⋯」
ラフマニノフ「いや、俺は俺の考えたセリフでいく!」
「怒涛なる静かな難しい和音から始まる私のピアノコンチェルト。今や地上では世界で最も人気で評価されている最高峰のコンチェルト。全て私のおかげなのだ。しかし、その曲のアイデアは神が与えてくれたのではないかと。才能も結局は神の気まぐれ。運なのだという輩がいる。しかし、断じてちがーーーーう!すべて私の実力なのだ!私がこのピアノコンチェルトを完成させるまでに払った犠牲、使用した時間、酷使した精神力は計り知れないだろう!!!だから、神のおかげではないーーー!」
ショパン「なっ⋯⋯⋯。ラフマ。お前!!!なんて演技力だ!圧巻だった。ラフマはオーケストレーションだけでなく、演技力でも俺の上を行くのか!!!ふざけるな!僕は認めない!認めないぞーーーー!」
ラフマニノフ「今の自然の『認めないぞー!!』だけ俺と引けを取らないな。自然に叫ぶようにしないといい演技にはならないよ。本番だと力みすぎなんだよ。俺のは迫力がお前とは違うだろ?どうだ?参ったか?」
ショパン「いつからそんな上手くなったの?どのくらい練習したんだ?」
ラフマニノフ「まだ1年も経ってない。お前と付き合い始めてから、いつかお前をビックリさせてやろうと披露するのを楽しみにしていたんだよ。まさか、お前から機会をくれるとは夢にも思わなかったけどな」
ショパン「僕は長年、演技の研究をし、自分なりに才能を磨いてきたのに。たった興味を持ち始めて1年弱のラフマにもう抜かされてしまうとは⋯なんでーーーーーー!」
ショパンは悔しがって、這いつくばって、床を手でどんどん叩いて、喚いた。
ラフマニノフ「俺がこだわっているのは、いかに短時間、少ない練習量で、少ない努力量で向上するか、才能を伸ばせるか、上達スピードを最も気にしている。やはり、何となく工夫もしないで考えないで練習していても全く上達は遅くなってしまうだろう。ショパンより俺の方が努力の質が高かったということかな。ショパンには絶対に負けたくない。勝ちたいと常に思ってきたからな。何事もお前には勝ちたいんだよ!お前にその気概はあるのか?自分は演技が上手い!と油断して、満足しながら、全力じゃなく、手を少し抜いていた。甘い努力の仕方をしていたんじゃないのかな」
ショパン「言い返せない⋯まさかラフマが陰でそんな下積みをしていたなんてね⋯これからは油断しないよ。ラフマ。君は最高のライバルだ!見直したし、君は大したものだ!!!」
ラフマニノフ「俺が負けたくない。負けてたまるか。絶対に勝ちたい!この強い感情が湧き上がるのはショパンくらいしか今のところいない。うぬぼれるのはやめたほうがいいが、お前こそ、俺にそう思わせるのは大したものだな!」
アゲハ「お互いに認め合っていて、競い合っていて、最高のダチじゃない」
ショパン「ゲッ!アゲハ。いつの間に。神出鬼没だな。毎回」
アゲハ「私もその劇に出させてくれないかしら?ギャラはいらないわ」
ラフマニノフ「この劇はショパンと2人で行う神聖なものだ。手出しはさせん」
ショパン「でも、3人の方がより面白くなるから、アゲハにも役をあげよう。今、台本を書き直すから」
ラフマニノフ「決して、アゲハを俺ら2人が奪い合うみたいな三角関係愛憎劇にしないでくれよ?」
ショパン「そんなのあり得ないよ。アゲハにそんな奪い合いされるほど魅力ないし、美人でもないし」
アゲハ「あら、そんなこと言っていいの?ショパン。ラフマにあのことバラすわよ?」
ショパン「それだけはやめて」
ラフマニノフ「なんだ?あのことって??」
アゲハ「実は⋯」
ショパン「わかったよ。アゲハも主役にしてあげる。3人が主役ってことでいこう」
アゲハ「はーーーーー。楽しみだわーーー!!!」




