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第21話「ドッグラン野原」

ショパン、ラフマニノフ、アゲハ、ノブ、ジンサの5人は霊界で犬と戯れるのを楽しむためにドッグラン野原に遊びに来ていた。


ノブ「僕は犬のことを心から可愛いと感じています。こんなに愛らしい生き物だとは思いませんでした」



アゲハ「強がらなくていいわよ。ノブ。犬の鳴き声が苦手ってあれほど言ってたくせに」


ノブ「それはみんなには内緒という約束だったはずです」


アゲハ「内緒にしなくていいわよ。正直なほうが愛されるわよ」


ノブ「本当にそうでしょうか。それより、ピアノでショパンの子犬のワルツを弾きたいですが。犬たちがどんな反応をするのか知りたいんです」


アゲハ「いつも思うけど、ピアノのことばかりね。何十年もピアノばかり執着しちゃって」


ジンサ「おい、アゲハ。ノブはピアノを弾くことが使命なんだよ。許してやれ」


ショパン「ノブさん。目が見えるようになってよかったですね。まあ、霊界にいるときしか見えないでしょうけど。肉体に戻れば、目が見えなくなってしまうのは辛いですね」


ラフマニノフ「ノブのショパンのバラード4番を聞いたが、もっと味わうように弾いた方がよかったな。ノブもまだまだだな」


ノブ「天下のラフマニノフさんにそんなこと言ってもらえるなんて、光栄で、嬉しいです」


ショパン「ラフマ、もっと具体的にどういう演奏をしたほうがいいか述べたほうがいいよ。僕は、あの一番盛り上がる場所ではアダージョで音の力を最大限にまで引き出して演奏したほうがいいという感想を持ったけれど。前半部分のあのいきなり幻想的な雰囲気になる部分ももっと遅く、音を伸ばした方がいいと思う」


ノブ「アダージョって何でしたっけ?」


ショパン「ゆっくりとって意味ですよ。音楽用語をど忘れするなんて、まだまだ未熟ですね」


ノブ「ショパンさんにまでそんなことを言ってもらえるなんて、とっても光栄で、感激です」


アゲハ「あなた、内心バカにされているのよ?喜ぶより、悔しがりなさいよ。成長しないわよ?」


 ラフマニノフはいきなりドッグラン野原にグランドピアノを設置した。


ラフマニノフ「さあ、子犬のワルツを思う存分弾いてくれ。弾きたいなら、弾くべきだ!」


ノブ「ラフマニノフさん。この御恩は一生忘れません」



アゲハ「大袈裟よ」


 ノブは静かに歩いて、椅子に手をかけ、クセになっているお辞儀をして、座った。


「タン、タンタンタン」


 ノブの子犬のワルツが響いた。顔をフリフリさせながら弾いている。


 犬たちが一斉に駆け足で近寄ってきた。ほとんどの犬がノブとピアノの周辺を取り囲みだした。


「ワン!ワン!ワン!ワンワンワン!」


 ヨークシャーテリアからマルチーズ、柴犬、チワワ、トイプードルなど多数。様々な犬種だ。20匹はいる。


 一匹のトイプードルが鍵盤を触り、子犬のワルツはトイプードルとノブの共演とかした。


 まさに真の意味での「子犬のワルツ」だ。


 トイプードルが弾くから。


 約2分くらいの演奏で、犬たちは大興奮して、ノブは満足した。


 犬たちに喜びを与えられたという感覚が、自分の存在価値を高めたのだとノブは体を震わせて感激の涙が静かに流した。


ノブ「こんなに犬たちに喜んでもらえるとは思いませんでした。犬たちも満足しているみたいです。これが、ピアニスト冥利なのかもしれません」


ショパン「僕が作曲したんだから、犬たちは僕にも感謝して、尻尾を振りながら、僕の足にまとわりついて、喜んでくれてもいいのに。僕が作曲したことは皮肉にも分かってないんだよね」


ノブ「ショパンさん。あなたが作曲してくれたおかげで、僕は犬たちに演奏でき、喜びを得ることができました。ありがとうございました」


ショパン「ノブさん。犬の鳴き声が苦手じゃなかったんですか」


ノブ「今は目が見えてるので、怖くないです。目が見えないと、いきなり吠えられてビックリしてしまうことが多々あります」


ジンサ「なあ、サプライズなんだが今日は全員分の弁当を用意したんだ。食べるか?オリジナルのとんかつ弁当だ」


アゲハ「まあ、とんかつは大好物なのよ!早く食べましょうよ!」


ラフマニノフ「俺も何か食べたいと思っていたところなんだ」


ショパン「霊界では犬たちは排せつ物を出さないから助かったよ。霊界は地上の不快なものがほとんどないから嬉しいよね。蚊とか蛾とか害虫が」


ラフマニノフ「せっかくのサンジの弁当がまずくなるだろう。空気読めないのか、ショパン」


ノブ「でも、霊界では排泄することがないのが逆に可哀想な気もします。あの体内から不要物を出す精神的満足感や喜びや快感が僕はうれしいと感じます」


アゲハ「地上には地上の良さがあるのよね。霊界では味わえない幸せがあるのよね」

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