表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぶっちゃけ大化の改新って何?ってレベルの俺が、当時のドロドロ権力抗争を最前線で見守ることになったんだが。  作者: 五稜 司


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/57

第53話:近江(おうみ)の洗礼と、得体の知れない先遣隊

「おーい、誰かいないっすかー! 調査に来ましたよー!」

琵琶湖びわこのほとり。海斗かいとの声が、人気のない岸辺に響く。

そこは、飛鳥あすかの喧騒とはかけ離れた、静かで少し寂れた場所だった。


「海斗殿、そんな大声を出さないでください……。我々は極秘ごくひ先遣隊せんけんたいなのですよ」

子麻呂こまろが胃を押さえながらたしなめる。中大兄皇子プリンスの命による遷都せんとの下見だ。不用意に情報を漏らせば、飛鳥の保守派が黙っていない。


「えー、でも誰かに聞かないと、どこが都にいい場所かなんて分かんないじゃん。あ、あそこに網を直してるおじいさんがいる」

海斗はトボトボと歩き、一人の老人に声をかけた。


「あ、そこのおじいさん! ここらへんで、一番地盤が固くて、景色がいい場所ってどこっすか?」

老人はゆっくりと顔を上げた。その目は、都から来た身なりの良い、しかしチャラついた若者を冷ややかに見つめている。

「……都の役人か。近頃、貴様らのような手合いがうろついておるが、今度は何だ。ここに大きな屋敷でも建てるつもりか?」


老人の言葉には、警戒心けいかいしんが滲んでいた。まだ公にはなっていないが、「近江おうみに何かができる」という不穏な噂は、すでに鋭い地元民の間で広まりつつあるようだ。


「屋敷っていうか……もっとデカい、こう、ドーンとした街ができるかもって感じで……」

「海斗殿! 余計なことを!」

子麻呂が慌てて割って入るが、海斗はどこ吹く風で続ける。

「でもさ、おじいさん。もしここに偉い人たちが来たら、魚もたくさん売れるようになるし、案外悪くないかもよ? ま、最初は工事とかでバタバタするだろうけど」

「……フン。わしら地元の民は、静かに暮らせればそれでいい。斉明さいめい様が生きておられた頃も、あちこち掘り返して民を困らせたと聞く。その息子(中大兄皇子)も同じか」

老人は鼻で笑い、また網に目を落とした。海斗は「あー、やっぱり歓迎されてないなぁ」と頭をかく。


「ま、とりあえず今日は様子見ってことで。子麻呂くん、お腹空いたから琵琶湖の魚でも食べに行こうよ」

海斗の能天気な調査は、地元民の静かな反発を肌で感じるところから始まった。


【今回の学習ポイント】


近江遷都おうみせんとは超不評: 667年に中大兄皇子が強行したこの引っ越し、実は当時の人たちからは「なんでわざわざあんな遠いところへ!」と大ブーイングだったんだ。『日本書紀』にも、不満を持った人たちが夜な夜な火をつけたなんて記録が残っているくらい、超ガチな反対運動があったんだよ。


・負け戦がきっかけ: なんでそんなに嫌がられても移りたかったかというと、数年前の「白村江はくすきのえの戦い」で唐・新羅連合軍にボロ負けしちゃったから。いつ攻めてこられるかビクビクしてたから、山に囲まれていて琵琶湖の水運も使える近江おうみは、防御を固めるには最高の場所だったんだね。


・都の名前は「大津おおつ」: その名の通り「大きな港」という意味。琵琶湖は当時の超重要ハイウェイみたいなもので、物資を運ぶのにめちゃくちゃ便利だったんだ。実は当時の最先端を行く軍事・物流拠点だったというわけだね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ