第45話:爆誕! 難波風(現代風)インスタント雑炊
「海斗、何をニヤニヤしているのです。早くその怪しい袋を片付けなさい」
不比等が呆れる中、俺は現地の百済の人たちと、即席の炊き出しを開始していた。
用意したのは、筑紫で内職しておいた「糒」、細かく刻んだ「干し肉」、それに「乾燥ワカメ」と「粉末状の醤」を混ぜた特製パックだ。
「いいから見てろって、不比等くん。おーい、誰か熱いお湯持ってきて!」
俺は大きな土器に、特製パックの中身をドサッとぶちまけた。そこに熱湯を注いで数分。
「……よし、完成! 海斗特製『カップ雑炊・百済エディション』だ!」
立ち上る湯気と共に、お米の香ばしい匂いと、肉と海草の出汁の香りがテントの中に広がった。
恐る恐る口にした百済の民が、目を見開く。
「……!?(うまい! なんだこれ、一気に力が湧いてくるぞ!)」
言葉は通じなくても、顔を見ればわかる。疲れ切っていた彼らの表情に、少しだけ「色」が戻った。
「ほう。別々に食べる手間を省き、味を一つに凝縮したというわけか。……合理的ですね」
不比等も、少しだけ関心したように顎をなでた。
「だろ? 戦場でちまちま料理してる暇なんてないし、これなら歩きながらでも……」
その時、中大兄皇子が、一人の男を連れて現れた。
男の名は、鬼室福信。百済復興軍のリーダーだ。
「海斗、その『兵糧』は貴様が考えたのか。福信殿が、兵の士気を高めるための策として、その製法を教えてほしいと言っている」
「え、俺!? いや、ただ混ぜただけなんですけど……」
「いいから教えろ。……あとで、私にも一膳持ってこい」
皇子は少しだけ顔を背けながら、ボソッと言い残して去っていった。……あの人、実は食べたかっただけじゃね?
だが、和やかな時間はそこまでだった。
遠くで、不気味な太鼓の音が響き始める。
「……来たか。唐・新羅の連合軍、パトロール隊(索敵部隊)のお出ましだ」
不比等の目が、一瞬で冷徹な軍師のそれに切り替わった。
【今回の学習ポイント】
・鬼室福信:百済滅亡後、日本にいた王族の「豊璋」を呼び戻して、国を再興しようと戦った百済の英雄だよ。日本軍と一緒に戦うメインキャラクターの一人だね。
・士気と食事:昔の戦争では、お腹が空くと兵士はすぐに逃げ出したり、裏切ったりしたんだ。だから「美味しい・早い・温かい」食事が提供できるっていうのは、最強の武器になったんだよ。
・当時の非常食の食べ方:実際に当時では干し肉なんかを水戻し(器に糒と水を入れて、ふやかして食べる。)お湯戻し(余裕がある時は、お湯を入れて戻す。)煮戻し(水と一緒に火にかけて、おかゆ(粥)状にする。)っていう食べ方をしてたんだよ。ただし海斗がやったような混ぜて食べるという習慣はなかったんだ。




