第41話:飲みニケーション最強伝説! 斉明ママの豪快接待(おもてなし)
「ほらほら! 筑紫のおじさまたち、飲みが足りないわよ! はい、一気!」
テントの中は、一瞬で「居酒屋・さいめい」と化していた。
さっきまで殺気立っていた筑紫君たちが、斉明天皇に巨大な盃を差し出され、顔を真っ赤にしながら必死に飲み干している。
「て、天皇陛下……さすがに、もう……」
「何言ってるの! 百済を救うのは体力勝負よ! 飲めない男に船は出せないわ!」
ガハハと笑いながら、おじさんの背中をバシバシ叩く斉明ママ。
……マジかよ。あの人、さっきまで泥だらけで工事現場にいたよね? どこにそんなスタミナあんだよ。
「海斗、貴様も見ていないで、あちらの若手たちに『現代の遊び』でも教えてきなさい」
不比等が、酒の入っていない小さな器を片手に、スッと俺の隣に並んだ。
「いや、『現代の遊び』って言われても……スマホもないし、カードゲームも持ってきてねーよ」
「何でもいいのです。彼らの警戒心を解くことが、今の最大の手順ですから」
不比等の目は笑っていない。相変わらず、宴会の最中も「次の一手」を計算しているらしい。
俺は仕方なく、近くでムスッとしている若手豪族たちの輪に加わった。
「な、なあ、君たち。……『山手線ゲーム』って知ってる?」
「……やまのて? 戦か、それは?」
「いや、戦じゃないんだけど。えーっと、筑紫の名産品を順番に言っていくゲーム! 言えなかったら、この変な顔した不比等くんが変顔の刑を執行するから!」
「ちょっと海斗、何を勝手に……」
不比等を巻き込んで無理やり盛り上げていると、意外にも若手たちが食いついてきた。
「明太子!」「あ、それはまだないか!」「アワビ!」「真珠!」
気づけば、テントの中は笑い声でいっぱいになっていた。
「……海斗、案外やるな」
いつの間にか隣に来ていた中大兄皇子が、少しだけ口角を上げた。
「まぁ遊びなら得意なんで(笑)。 難しい話はあとにして、まずは仲良くならないとね」
俺がドヤ顔で答えたその時。
宴会の喧騒を切り裂くように、一人の伝令がテントに飛び込んできた。
「も、申し上げます! 百済の救援軍より緊急報告! 敵船、すでに玄界灘に現れた模様です!」
一瞬で、酔いが冷めるような沈黙が流れた。
斉明天皇の目が、一瞬で「母親」から「統治者」の鋭さに変わったのを、俺は見逃さなかった。
【今回の学習ポイント】
・斉明天皇のカリスマ:史実でもかなりの情熱家。68歳という当時では超高齢(!)でありながら、自ら軍を率いて九州までやってくるバイタリティは、現代のブラック企業の社長も真っ青だよ。
・筑紫の協力体制:「飲みニケーション」は冗談抜きで大事だったかも。地元の協力がないと、船を出すことも、食料を集めることもできないからね。海斗の適当さが、意外とクッション材になってるんだ。
・玄界灘の緊張感:九州の北側の海だね。ここを越えれば朝鮮半島。当時、ここを敵の船がうろついているっていうのは、現代で言えば「隣の家の庭に不審者がいる」レベルの超緊急事態だったんだ。




