第38話:九州(最前線)への強制送還(テレポート)は船酔いと共に
「……マジで無理。これ、ただの拷問(ブラック研修)じゃん」
難波宮を出てから数日、俺こと海斗は、瀬戸内海を進む船の甲板で、胃の中のものを全て「リリース」しそうになっていた。
横では斉明天皇が「海風が気持ちよいわね! 中大兄、見てごらんなさい、あの島を!」と、遠足を控えた小学生並みのテンションで中大兄皇子に絡んでいる。皇子は「母上、危ないですから……」と、冷徹なリーダー(ボス)の面影ゼロで、完全にお世話係(介護スタッフ)状態だ。
「不比等、お前はなんでそんなに平気なんだよ……」
「海斗、貴様の三半規管が仕様不足なだけです。私はこの間に、九州での補給物資配分のリストを作らねばならないので」
不比等は相変わらずの慇懃無礼さで、揺れる船の上でも筆を動かしている。
今回の目的地は、九州の筑紫。百済からのSOS(救援要請)に応えるための「前線基地」作りだ。
その時、前方の船に乗っていた脳筋の同僚、子麻呂が叫んだ。
「海斗! 前方に『新羅』の偵察船らしき影が見える! 緊張で……うっ、吐きそうだ!」
「お前は緊張で吐くな! 俺は船酔いで吐くんだよ!」
不比等が冷ややかに付け加える。
「……どうやら、ただの出張(移動)では済まないようですね。これより、白村江に至るカウントダウン(予兆)の始まりです」
俺は遠のく意識の中で、「……なんとかなるっしょ」と呟くのが精一杯だった。
【今回の学習ポイント】
・斉明天皇の筑紫行: 百済救援のために自ら九州へと向かった、当時の緊迫した国際情勢を象徴する行動。
・伊予の湯(道後温泉): 九州への移動の際、斉明天皇一行は温泉に立ち寄って休息したという記録がある(当時のリフレッシュ)。
・百済復興運動: 首都が陥落してもなお、各地で抵抗を続ける百済の遺臣たちが、日本(倭国)に最強の助っ人を求めていた状況。




