第37話:隣のサーバーが炎上中? 救援要請(リクエスト)は突然に
「終わった……ついに税制(課金システム)のバグ取りが完遂したぞ……!」
俺、海斗は難波宮のオフィスでデスク(ただの床)に突っ伏していた。戸籍だの班田収授だの、現代の役所でも発狂しそうな事務作業を16歳の高校生にやらせるこの時代、ブラックすぎんだろ。
「貴様、いつまで死んでいる。次は外征(海外出張)の準備だ」
冷たい声の主は、俺のボスことプリンス(中大兄皇子)。相変わらずイケメンだが、目が「24時間働けますか?」と言っている。
「は? 海外? 無理無理、パスポート持ってないし」
「黙れ。母上がお呼びだ」
連行された先には、ド派手な衣装に身を包み、酒を煽りながら地図を睨みつける美女がいた。この国のアプデを加速させている現トップ、斉明天皇である。
「おっ、来たわね海斗! あんたの噂は聞いてるわよ。いい面構えね!」
豪快に笑いながら肩を叩いてくる。骨が折れるかと思った。この人、めちゃくちゃイケイケなアクティブ女帝じゃん……。
「母上、海斗に百済の救援計画を」
「あらぁ〜っ! 中大兄ちゃん、今日も一段と凛々(りり)しいわねぇ! さすが私の息子、世界一カッコいいわ! よしよし、お母様が全部解決してあげるからね!」
……え。さっきまで戦の指揮官みたいな顔してたのに、プリンスを見た瞬間、溶けそうなくらいデレデレの親バカモードに。この温度差、風邪ひくわ。
「……話が逸れました。不比等、説明を」
プリンスが真顔で促すと、事務方の不比等がスッと仕様書(木簡)を出した。
「要するに、同盟先の百済が唐と新羅の連合軍にボコられて、国が消滅(サービス終了)しかけています。このまま放置すれば、次は我々のサーバーが乗っ取られます」
「ってことで海斗、あんたも九州まで行くわよ! 私が先陣切って戦ってやるんだから!」
斉明天皇のイケイケな宣言。え、天皇自ら現地に行くの? 正気かよ。
絶望する俺を、車持娘が廊下で待っていた。
「……海斗、本当に行くの? 危険だって聞いたわ」
「まあ、なんとかなるっしょ。俺、一応歴史の知識(うろ覚え)あるし。戻ってきたら、ゆっくりどっか遊びに行こうぜ」
少し頬を赤らめる彼女を見て、俺は「あ、これフラグ立てちゃったかな?」なんて呑気に考えていた。この時、隣で不比等が「……戻ってきたら、ね」と意味深に呟いたことに、気づく由もなかった。
【今回の学習ポイント】
斉明天皇の親征: 百済救援のため、斉明天皇は自ら軍を率いて九州(筑紫)まで移動した。非常にエネルギッシュな女帝だった。
百済滅亡: 660年、唐・新羅連合軍によって百済の首都・泗沘城が陥落。これが白村江の戦いへの直接的な原因となった。
称制: 天皇が亡くなった後、皇太子(中大兄皇子)が即位せずに政治を行うスタイル。この後の激動の予兆である。




