第15話
「ここって一応神様がいる森なのよねぇ、アタシにはなーにんも感じないけど、未来は会った事があるのよね。夢の中で」
「……あ、ああ」
考え事をしていた為反応が遅れたが、話しかけて来た円は不審には思わなかったらしい。
「どんな人だったのよ」
「どんなって、姿なんて全然見えなかったぞ」
見えた事は見えたけど、なんかぼんやりした輪郭だけしか分からなかったしな。
背格好や声から小さな女の子という感じではなったが。
「神様が女の子って、それってあんたのロリコン趣味が反映されただけじゃないの?」
誰がロリコンだ。
失礼な事を言うな。
茉莉の事はそれは微笑ましい存在だと思うが、別に俺はそういうのを愛でる趣味があるとか、特別好きっていう事はないからな。
「む、滅多な事を言うものではないよ。円。ロリコンとは別に蔑称としてだけある単語ではなく、単に個人の趣味趣向を言葉にしたものではないかい?」
「それはそうかもしれないけどね、桐谷はかっちりし過ぎだと思うわ」
仲裁してくれた先輩にありがたく思う。
そもそも今は円のアホな話に付き合ってる暇はないのだ。次おかしな話題をふっかけてきたら無視する事にしよう。
「アンタの方から変な話、最初に振って来たくせに」
……それを言われると弱いな。
身にもならない下らないやりとりだ。
だが、切羽詰まった状況で話が脱線してしまうのは、それだけのストレスから逃れたいという心理が働いているため……とかなんとか前に先輩が言っていた。
そうなのかもしれない。
こんな状況だからこそ、余裕を持ちたいんだろうな、俺はきっと。
そう思った時、俺の携帯がメールの着信を知らせてきた。
発信者は、茉莉からだ。
あいつ、何やってるんだ。
大人しく寝てろっていったのに。
『未来、誕生日ケーキ、また作るから絶対食べてねー』
それで、そんな事をわざわざ伝えるために寄越したのか。
熱で辛いだろうに、選ぶ内容がそれか。
『分かった、ちゃんと食ってやる。いくらでも食ってやるから、大人しくしてろ。ちゃんと寝てろ、いいな! 夜更かししてたら怒るぞ!』
『もう怒ってるよー。でも、ちょっと疲れたから寝るね。おやすみー』
そういえば、あの世界にいた茉莉からもケーキのメールをもらったよな。
だから俺は……、今みたいにこんなメールを返して。
約束したんだ。
俺は茉莉の兄代わりなんだから、言った事は守らないといけない。
だから全部さっさと終わらせてしまわなければ。
「先輩、茉莉の病気って、このままにしておいたら、やっぱり治らないんですか?」
俺は、確認の意味を込めて、先輩へ尋ねる。
ここに来る前に、自然治癒に任せてはどうかと話したのだが、それでは遅すぎると、彼女に言われていたのだった。
「いや、どう考えても無理がある。一日も、持たないだろうな」
「そうですか」
改めて聞いた先輩の内容はその時と同じ物だった。
やはり、どうやっても石を探し出して願いを叶えるしかなさそうだった。
問題は、夜の12時までに見つけられるかどうか、だ。
ここにきて、奇跡だのみとか。
本当にこの世界もあの世界も思い通りにはならないな。
きっと生きるってそういう事ばっかりなんだろう。
嫌気がさすな。冗談じゃない。
大人しく世界なんかに踊らされててたまるか。




