第14話
そこに声をかけてくるのは先輩だ。
「足元に十分に気を付けることだ。それと獣にもね。ここらはまだ人の生活域に近い方だが、野犬などが出てくるかもしれない。周辺には十分に気を配るように」
そうやって、彼女は自分が懸念している事を、俺達に注意するのを忘れない。
先輩はどんな時でも、いつでも他の仲間の事に気を配れる良い人だった。
「それと未来、何かあっても一人で何とかしようと思わない事だ。君には私達がついている、その事をいつでも忘れないでほしい」
「先輩」
桐谷先輩は本当にいつだって、揺るぎなくて頼りがいのある先輩だ。
どんな時でも彼女がそうやってどんと構えていてくれるから、俺達は安心していられるのだ。
二人ともずっと通常営業だった。
逆に俺が情けなさ過ぎて、二人が冷静になっているという説もあるのかもしれないけれど。
そうでなくとも、彼女達はこんな俺なんかには勿体ない人達だろう。
きっと、俺が土に埋まっていた時だって、取り乱したりはしていなかったはずだ。
反対に俺は、今日一日だけでもかなりひどい所ばかりを、見せている気がする。
もうずっと思ってる事だが、この二人は何で俺の事を好いてくれるのだろうか。
少し照れ臭かったが、ぼかして聞いてみる事にした。
「なあ、円は……ええと……人を好きになるとしたらどんな所を見るんだ?」
「はぁ? こんな時に恋バナ? アンタって意外と肝座ってるときがあんのね」
茶化すなよ。真面目に聞いてるんだからな。
「そうね、優しい所かしら。幼なじみを助けるのに夢中になって我を忘れちゃうような、そんな真っすぐな所が結構ポイント高いわね……って、別にアンタの事言ってるんじゃないわよ、勘違いしないでよね」
時々描いたようなツンデレになるよな、お前。
次いで先輩に視線を向けると、彼女も俺が何かを聞きたがっている事に気が付いたようだ。
油断なく周囲に視線をむけながらも、先輩も俺の言葉に答えてくれた。
「ふむ、私の場合も円と似たようなものだね。身近な人に対して一生懸命になれる所があれば、それは素敵な人の条件だと思っているよ。そうだな、そういう人は色恋には少々うといのだろうから、できればその強い思いをこちらにも向けて欲しいと思う事も、あったりはしそうだがね」
先輩はこともなげにそんな事を述べてくる。
円のものより、より直接的な内容に聞こえてきたので、顔が赤くなってしまう所だった。
しかし今のを聞いていると、二人が評価しているのは、ただ茉莉に振り回されている俺が、その場その場を何とかしようと一生懸命になってるだけの所のように聞こえるのだが……。
そんなので良いのだろうか。
俺の顔色を呼んだように先輩が言葉を付け足してくる。
「究極の所、それはきっかけに過ぎないのかもしれないな。人が人を好く事に大それた理由などないよ。でなけれな「一目ぼれ」や「運命の人」という言葉の存在が危うくなってしまう」
俺としては大いに疑問の残るところだが、恋愛とはそういうものなのだろうか。
そういうのを意識した事が無いから、よく分からない話だったが。
大それた理由がいらないとしたら、例えば俺が妹のように思っている茉莉に恋することだって、ありえなくはない……のだろうか。
いや、今はそんな事考えてる場合じゃないか、終わった後、ゆっくり考えればいいだろう。
そんなありふれた問題に悩む時間を守る為にも、今目の前にある問題を何とかするべきだろう。
俺は石探しに集中する事にした。
「逃げたわね」
「まあ、彼は一度に色々な事を考えられない体質なのだろう」
ちょっと背景に何か言われてるような気もするが、気にしない事にした。




