第7話
一人であれこれ悩んでたってまた袋小路に迷い込むだけだ。
まず先輩達にこれまでのループ世界の事を話して、その後で、改めてヒントについて考え直してみた。
先輩も円も真剣に考えてくれている。
俺が口にしたのはきっと到底信じられない内容だっただろうが、二人とも最後には事実だとのみ込んで、理解してくれたようだった。
俺が話し忘れた細部の時間経過や矛盾の指摘、各人の行動などについては、先輩たちの方で仮説を立てたり推測で埋めたりして、ざっとやりとりをした後、改めて茉莉の居場所についての話し合いを再開した。
桐谷先輩は携帯で表示した町の地図を見せながら、自分の考えを述べていく。
先輩らしい落ち着いた色合いの携帯画面に映るのは、見慣れたこの町の地図だ。
「場所を表す時は、NとEは収容な記号になるNはnorthで北、Eはeastで東だ。だから北東を指す可能性もあるな」
それを受けて喋るのは、横から地図を覗き込む円だ。
「となるとCOは何かしらね。Cとゼロ? それとも「コ」って読むのかしら」
二人共、俺には思いつかないような事ばかり口に出している。
やっぱり一人で考えてても碌な力は出せなかっただろう。
二人を頼って正解だっただ。
「ふむ、コの字型の建物とも意味がとれるね。あとは元素記号か何かかな……」
「うーん、これじゃあ候補が絞れないわ。いったん、基地に戻ってみましょ? 未来が言う茉莉ちゃんの落書き帳があるかもしれないし」
その後は、円の提案で基地に戻って、全員で茉莉の落書き帳を探す事になった。
何度も同じ一日をくりかえしていたから、胴にも実感にかけるがこの世界の基地に三人がまとまって存在するのは珍しい事だった。
記憶にある限りループ世界と本当の世界の違いは1月10日の顛末がだけで、それ以外は同じだ。
俺は茉莉に告白された後、皆と距離をとっていたから……。
基地でこうして揃うこと自体がすくなかったのだ。
それが茉莉を巡って再び終結している。
不思議な気分だった。
あいつはやっぱり、俺達にはなくてはならない存在なんだろうな。
俺達を結び合わせてくれている力みたいなものなんだ。
探していた落書き帳自体は、簡単に見つかった。
忘れ物として机の上に放り出されていたからだ。
中を開いてみると、夢の中で見たのとは細部が違うが、マスで区切られた地図があった。
大ざっっぱに線画引かれて、地図は四つの区画に区切られている。
そして、後から付け足したように書かれているのは……。
「調味料……か?」
醤油瓶だの、胡椒瓶だのの落書きが描かれていた。
中学生の女の子が、こんな物を普通書くか?
結構長い付き合いをしてきたつもりだが、あいつのツボやらこだわりやらは未だによく分からない所がある。
もしかしてこれが、第三のヒントなんだろうか?
攫われなかったら、こっちでも俺に宝探しをさせるつもりだったようだが、
あいつは一体俺に何を探させるつもりだったんだ。
ともかく。
CO。
シーオー。
あれか?
あれなのか、この流れで言うと。
円が微妙な顔をして、落書き帳を見た俺と同じ回答を口にした。
色々候補は出ていたが、これを見ると答えは一つしかないだろう。
「……塩、かしらね」
「うむ、塩なんじゃないか?」
駄洒落か。
どうやら茉莉は茉莉でしかなかったようだ。
あいつに難しい暗号を期待した俺達が間違いだった。
あまりの馬鹿らしさに一瞬力が抜けそうになるが、せっかく見つけた手がかりだ。
有効活用しなければならない。
「塩を生産している工場なら、隣町に目立つのが一個あったわね。そこで良いのかしら」
その工場は結構地元では有名な工場であって、地域には必ずあちこちに看板が立っている。
付近の住民なら大体の人が知っているので、連想するうえでの間違いは少なそうだ。
ともかく、これで大体の居場所に検討がついた。
なら、話は早い。
先輩が後で確認する為に落書き帳を手にして、その場をまとめる。
「とりあえず、メドが付いたようだ、詳しい場所はまた後でだ。向かってみようか未来」
「はい」
「そうね、ここでじっとしてても仕方ないわ」
もうじき昼の12時になる。
織香はどうなっただろうか。
どうなるにせよ、俺はあいつに死んでほしいなんて思わない。
できれば最後に駆けつけたかったが、そうしているとその間に茉莉の身に何かが起きるかもしれないし、救出に間に合わなくなるかもしれない。
我慢するしかなかった。
でないと、織香の思いも無駄になってしまう。
込み上げて来た思いをのみ込んで、俺達は急ぎ足で基地を出た。




