第62話 意外な人物
九条邸 PM7:00
二人に話を打ち明けた後。
俺達はすぐに行動に移した。
一応の打開策はある。
それが上手く機能するかどうかを確かめる為に、ある人物に話をつける事にした。
「龍打、まさか君が裏切り者だったとはね」
先輩の屋敷の中で、問い詰められているのは執事の龍打さんだった。
桐谷先輩は、特に普段と変わった様子ではない。
だが、問い詰められている方はかなり狼狽していた。
これまでのループの中でも短い時間しか接した事がないが、この人が慌てた姿何て見た事が無かった。
それだけ予想外だったのだろう。
だが、それはありえない事を言われてからではなく、明らかになってはいけないことが露見してしまったからに見えた。
「お嬢様、どうしてそれを……」
先輩が手に持っているのは、屋敷の警備システム……警報やセンサーをコントロールするための部屋の鍵だ。
それは、つい先ほどごみ箱に入れられていたものを発見したのだ。
捨てた人間は、目の前にいる先輩の執事だ。
先輩の家で警報機器の類いが活躍した記憶は、俺の中ではない。
けれど、これだけの規模の屋敷があって、それだけの資産があるのに監視カメラの一つもないと言うのはおかしな話だ。
だから、今まで一切それらの話が上がらなかったのは、最初から無力化されていたからだ。
それで、警報機器を調べてみようとしたら鍵が無くて、探していたら今回の件が発覚した。
俺が経験した1月10日の中には、先輩のいる部屋が爆弾で爆破された事もあった。
いくら何でも、今日中にそんなものを仕掛けられるとは思えない。
だから前もって誰かが仕掛けていたとしか考えられないのだ。
内部にいる誰かが協力していたとしか、考えれない。
「まあ、この鍵の紛失に気が付いたきっかけに関しては謝罪するよ、私一人の力ではないのだからね。本来、この家の主である私が気が付かなければならなかった物なんだ。申し訳ない」
「い、いえそんな」
先輩の堂々とした態度に、龍打さんは戸惑っている
俺と円はそろってお互い見合わせるしかない。
俺達だったら、こんな事があったら裏切り者だと罵ってしまうだろう。
こんな風に冷静に対処できるわけがない。
事実先程までは、俺達二人は完全に血が上っていたのだし。
「君の裏切りの事はズルをして、知ってしまってね。それに関しては聞かないでほしい。では確認しようか、屋敷内の警備システムを切ったのは、君だね。そして、確認ができないように、一時的に部屋の鍵を紛失していた」
「はい、おっしゃる通りです」
龍打さんは、悄然と肩を落としてうなだれるのみだった。
あらかじめ確認しにいった部屋の監視カメラや警報が切られていたのは、俺達も確認していた事だった。
龍打さんは言い逃れできないと思ったのか、素直に認めた。




