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one・days 「1.10」始まりの日の先へ  作者: 仲仁へび
第7章

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第58話 宝探しに行こう



「未来、あのね。あたし未来が大好き。だから、もうちょっとだけがんばろ? 大丈夫だよ、何とかなるもん。未来は凄いんだよー。あたしの正義の味方だもん」

「正義の味方、か」


「大好き」と「大丈夫」の言葉が繋がっていないような気がするのだが、いつもの事だ。

 事情を分からないなりに、茉莉は俺の事を励ましてくれている様だった。

 だが、その言葉を素直に受け取る気にはなれない。


 顔を背ける俺の視線を追いかけるように、茉莉がこちらの視界に入る様に体を移動させた。

 そして、もう一度顔を背けられないように、手のひらを伸ばしてしっかりこちらを固定してきた。


 ネコのように丸くて大きな目と、視線が合う。


「あたしがしてあげられるのは、こうやって未来を励ます事くらいしかできないけど。本当の意味で皆を助けてあげる事なんてできないかもしれないけど……」

「そんな事ないだろ」


 そこだけははっきり断言できる。

 確かに桐谷先輩ほど頭がいいわけでも、円ほど運動神経があるわけでもないけれど、茉莉は茉莉なりに十分に俺達の力になってくれている。

 だから、俺はここまで来れたんだ。

 茉莉がいなかったら、とっくの前の段階で終わっていたはずだ。


 俺の言葉を受け取った茉莉は頷いて見せる。


「うん、でも……それでも大丈夫です。あたしはあたしにできる事を見つけてします! あたしはずっと未来の傍についてるよ。皆と一緒にいるからね」

「それ……うるさそうだな」


 大真面目に言われた言葉に、俺はほんの少しだけ茶化すように言葉を返した。

 案の定茉莉はふくれ面だ。

 そういえば、こんな馬鹿馬鹿しいやり取り、最近してなかったな。


「あー、未来ひどいんだー。どんな時でもあたし達ずっと一緒!」


 それじゃあまるで背後霊とか幽霊みたいだ、と思う。

 ここ最近は自立してきたと思っていたのに、まだまだ先は長いのかもしれない。


「……茉莉?」


 そんな事を考えていたら、いつの間にか部屋の中から茉莉の姿が消えていた。


 動く気配も足音もしながった。

 まるで唐突にその場から消えてしまったように。


 俺は基地の中で一人きりでいる。


「どこに行ったんだ、茉莉……?」


 呼びかけても返事はない。


「おい」


 基地の中には、誰の気配も感じない。


 まるでそこには最初から、他の人間なんていなかったように。


「……」


 脳裏に蘇るのは最近聞いたものではない、過去からの茉莉の声。


『未来! 来ちゃだめ!』


 助けてと言う感情をのせて、最初に俺の名前を呼んだくせに、その後で拒絶する。


 数秒後。

 いつもの標識の……だけど「曲がっていない」標識の前に立った茉莉に、一台の車が突っ込んでいった。


 それは、少し前のできごと。

 浅野待ち合わせ場所で、実際にあった出来事だ。


 茉莉に告白されて、その少し後の悲劇。

 いつもの待ち合わせ場所で俺を待っていた茉莉は、車の事故にあって死んだのだ。


 本当は、もう生きていない。

 この世には、いないのだ。


 そんな現実を受け止められなかったから、俺は……。


 基地の中を見回すと、茉莉の落書き帳が目に入った。

 手に取って、外へ出る。


 ヒントは猫。


 ループの脱出にはまるで関係ない事だ。

 寄り道もいいところだろう。

 けど、宝探しをしてみようと思った。

 


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