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one・days 「1.10」始まりの日の先へ  作者: 仲仁へび
第7章

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第57話 つまづき




 それから何度も巻き戻った。

 何度も同じ一月十日を繰り返した。


 でも、駄目だった。

 うまくいかなかった。


 何回目かは、円と一緒に桐谷先輩の家に泊まりに行った。

 忘れ物を届けに来た人間を警戒していたけれど、俺と円が凶行を阻止すれば、そいつは遠隔で爆弾を爆発させて、部屋ごと先輩を殺した。


 だからある世界では、先輩に忘れ物を放っておくように言った。

 けれど、何も言ってないのに、会社の人間を名乗る偽物が忘れ物を届けに来た。

 それでも無視したら、屋敷内に集団で侵入されて、桐谷先輩と巻き添えで円も殺された。

 円を殺したストーカーがその中にいた。


 別の世界では、一人で先輩の家の周囲を張っていたが、桐谷先輩に気づかれて失敗した。後はいわずもがなだ。


 そのまた他の回では、先輩と円を誘って別の町へ行ったが、また失敗した。

 居場所は誰にも伝えていないのに、バレて襲われた。

 どういうコネクションを持っているのか、相手はプロの暗殺者みたいな連中だった。今までと面子が違っていた。


 他にも色々な事をやった。


 人の多い所にいって先輩と夜を明かそうとしたがこれも失敗した。

 大掛かりな爆発事件を起こされて、他の人も巻き添えにしてしまった。

 その中には小さな赤子も、老人もいた。


 それからは、覚えてない。

 何度もあったが、守れなかった。








 そして何回目か分からない1月10日が来た。

 同じ日をこう何度も何度も、回数が分からなくなるほど経験する事になるとは思わなかった。

 一回だけでも相当な衝撃だったのに、それが何十回もだ。

 さすがに何百回は言ってないと思うが、このままだと余裕で三桁にもいきそうで怖い。


 俺は今、学校をさぼって基地にひきこもっている。


 学校で同じ内容の授業を律儀に受け続けるなんて、ずいぶん前からやめてしまっている。

 意味のない事を繰り返しても無駄だ。ただの苦痛になるだけなのだから。


 俺は少し荒事慣れしているだけの普通の人間だ。

 ライトノベルの主人公じゃないなんだから、百回も二百回も同じ一日を繰り返せるわけがない。

 たかが数十回で、俺の気力はつきかけていた。


「……」


 何かをしようにもやる気が湧かない。


 基地の中でぼうっとしていたら、いつの間にか眠っていて、目の前に茉莉の姿があった。


 来てからどれくらい経ったのだろう。

 今は何時だ。

 こいつ、学校に行ってないのか?


 それとももう終わったのだろうか。


「みらい、起きてー。お昼だよー」


 まだ昼だったらしい。

 時間が過ぎるのが遅い。

 動かない俺をせかすように、茉莉はこちらの肩を揺さぶってくる。


 仕方がないので、体を起こした。

 そういえば巻き戻った時は、ちゃんと眠ったという感じがしなかったので、ずいぶんと久しぶりに睡眠をとった気がする。


 眠気をひきずりながらぼうっとしていると、茉莉がこちらを叱るような口調で言葉をかけてくる。


「学校さぼったのー? いけないんだー。不良はだめだよー」


 お前こそ、いけない事してるだろう。


「えへへ、おそろいだねー」

「ほめてない」


 どうしてそういう反応になる。

 何が面白いのか、茉莉は楽しそうに笑い声をあげた。

 そういえば、ずっと先輩と円の事ばかりに関わっていたから、茉莉とゆっくり話すのは久しぶりだった。


「あのね、宝探ししよーよー」


 だが、いつもの様に茉莉を構ってやれるほどの心の余裕は、こちらにはない。

 一人にしといてくれ、と断ろうとするのだが、茉莉は人差し指を立てて言葉を続けてくる。


「あのねー。未来は大切な事忘れてます。だから、思い出す為にがんばろー」

「忘れてる?」


 またそれだ。

 先輩も円も隠し事して、俺が何かに気づいていないと態度で言葉で言って来る。

 茉莉もそうなのか。


 だが、何度言われても俺はその内容を思い出せないのだ。

 それに、今考えるべき事はそんな事ではないはず。


「そうかなー」


 けれど、茉莉はこちらの考えている事が分かっているかのようにそんな発言をする。


「それはとってもとっても、大事な事です。未来がちゃんと思い出してくれたら、あたしも嬉しいし、円さんも嬉しい、桐谷さんも喜んじゃうよー」

「だったら、その中身を教えてくれよ」

「やだー」


 我が儘娘め。


「我がままじゃないもん。ひつよーな事です。きょーいくてきしどーです!」


 またも心を読んだ茉莉が、怒ったようにそう抗議してくる。

 若干言葉の意味が違うのだが、訂正する気も起きなかった。



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