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one・days 「1.10」始まりの日の先へ  作者: 仲仁へび
第6章

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第56話 また失った



 倒れた円の元へ、駆け寄る。

 しゃがんで、彼女の体を抱えて身を起こす。


「う……」


 円は、動いた。

 生きている。

 でもまだ生きているだけで、死んでしまうかもしれない。


 刺された傷から真っ赤な血が流れだしていた。


「円、おい。しっかりしろ。大丈夫か!」

「っ。これが、大丈夫な、ように……見える?」


 傷口が深い。

 大量に流れだしていた血が、すぐに血だまりとなった。


 駄目かもしれない。

 そんな悪い考えが頭をよぎる。


「何て顔してんのよ。ほら、しゃんとしなさい。男でしょう、救急車……と警察。呼びなさいよ」


 痛くないのか。

 いや、そんなはずはない。


 円はだけど、それでもしっかりした態度で、俺の行動を促してくる。


 そこで俺はやっと、携帯を取り出した。


 目の前で友人が大変な事になってるなんて、そんな場面にそうそう遭遇した事がないから、何をどうすればいいのか分からなくなりそうだった。


 ぼうっとしそうになる頭を必死で働かせて操作していく。


「あいつ、……例のストーカーだわ。諦めたと思ったのに、邪魔なアタシを、排除するために……」

「だから前に、そう何でもかんでも頼み事引き受けるなって言っただろ」

「うっさい……わね」


 息をするように悪態をつきながら、救急車へ電話をかける。

 今回は……繋がった。


 俺は応答に出た人に、伝えるべき内容を喋って切った。

 次は警察か。


 そんな中でその存在に気が付いたのは、偶然だったのか。

 携帯の画面を見て、新しいメールを受信している事に気が付いた。


 嫌な予感がして、目の前で円が大変な事になっているにも関わらず、俺はつい開いてしまう。


 メールは桐谷先輩からだった。


『円の家で待っているよ』『手紙の悪戯の事で話がしたい』


 内容はその二つ。


 そして、最後には最初の日に貰ったメールの内容、それと同じ物が……。


『私は、君が気に入って』


 途中で送信されていた。


 内容はたったそれだけだ。

 それだけのメールを、意味もなく先輩がわざわざ送るはずもない。

 円の時と同じだ。


「何で……」


 悟ってしまった。

 桐谷先輩はまた死んでしまったのだ。

 最期の告白をして、円の家で命を落としたのだ。


「何でだ。何でなんだよ。何でなんだ」

「みらい……?」


 俺は浅はかだった。

 俺が書いた手紙を、桐谷先輩は誰がやったのかすぐに見破っていたのだ。

 だから、三人で相談するために円の家までやってきたのだろう。

 俺が何かに悩んでいるんだと思って。

 どうしてそこまで想像できなかった!

 考えられなかったんだ!


 馬鹿だ。

 俺は大馬鹿だ。


「みらい、……しっかりしなさい。アンタがそんなんじゃ残される桐谷が悲しむじゃない」


 その桐谷先輩はもういない。


「傷、深いわね。自分でも分かるわ……。アタシはもう助からないかもしれない。だから最後にあんたに伝えとくわ」


 やめろ。

 やめてくれ。


 お前まで、俺にそんな事言うのか。

 死ぬと決まったわけじゃないだろ。


 何で俺なんかを。

 何もできない俺なんかを。


「あたしは……アンタが、好きよ、未来」


 円はそう言って、それきり喋らなくなった。

 いつだったのか分からない。


 だが、気が付いた時には円はもう死んでいた。

 遠くから救急車のサイレンが聞こえてくるが、俺にできる事はもうない。


 急いで返事を伝えればまだ届いたかもしれないのに。

 俺は何も言えなかった。

 円の最後の言葉に応える事ができなかった。

 桐谷先輩が目の前で、同じ状況にいたとしても同じだっただろう

 俺はただ、何もできずに見ている事しかできなかった。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



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