第53話 円の家
篠塚家 PM5:00
茉莉と別れ、一旦家に帰って着替えた俺は、再び外へ出てその足で円の家へと向かった。
着いた先。
目的地である円の家は桐谷先輩の家とは違って、普通の一軒家だった。
広さはおそらく俺の家と同じくらいだ。
始めてくるので真新しさはあるが、緊張感がないのは少し救いだった。
見慣れた規格の家に安堵が込み上げてくる
「普通だな」
「普通で悪かったわね」
そんな事を言ったら、出迎えに出てきた円に文句を言われてしまった。
口に気を付けなければならない。
今日はケンカをしに来たわけではないのだから。
円に連れられて、家の中へと入っていく。
父親は警察の仕事があるのだろう。家にはいなかった。
主婦である母親には出迎えられたので、簡単な挨拶を交わした。
前に何度か会った事があるので知っているが、人の良さそうな母親だった。
円の部屋に案内されて入ると、ファンシーな内装が目につく。
桃色の壁紙が貼られていて、棚やベッドには可愛らしいヌイグルミがいくつも置かれている。
円がそういうの好きなことは知っていたが、改めてギャップを感じざるをえない。
桐谷先輩の時とは違って、今度は座布団に座る様に進められて、俺と円は腰を落ち着ける。
適当にそこらから引っ張り出してきた奴だ。
円は対面に俺より先に腰を下ろした。
なんかいつも通りすぎて逆に安心する。
「そ、それで話って……?」
でも、円の態度が若干ぎこちないのが気になる。
そわそわした様子の彼女から、話をきりだされるが、中身が無いのは今回も同じ事だ。
「それよりまず、聞きたい事がある」
「な、なに?」
声をうわずらせる円の事に突っ込みをいれるか悩みつつも、俺は話題を口にした。
やる事はあるが、茉莉と約束した事もあるので、少しだけ脱線させてもらう。
それは、前々から気になっていた事だ。
「円、お前は茉莉の事が嫌いじゃないんだよな?」
「……」
茉莉とのやり取りもあったから、先に済ませておこうかと思ったのだが、失敗だっただろうか。




