第51話 帰り道
高校を出て、円の家に向かう前に家に帰って着替えようと思っていたら、途中で茉莉と一緒になった。
そういえば、朝はやる事があったので顔を合わせなかったのだ。
見慣れた幼なじみの少女が手を振って駆け寄って来る。
「未来ー、学校終わったー? これから円さんの所にお泊りだよねー。いいなー、うらやましいなー」
そんなに良いものでもない。
……とか言ったのを後で本人に聞かれたら、怒られそうなので喉から出かかった言葉を我慢した。
「知ってるのか、円だな」
「えへへー」
きっと円が携帯で茉莉に話したんだろう。
これから色々としなければいけない事はあるが、その事をいま茉莉に話してもしょうがない。
俺は小声で茉莉に注意する。
「夕立が来るから気をつけて帰れよ。俺は言った通り円の家に行くからな。先輩も今日は基地にいないと思うぞ。まっすぐ家に帰れ」
「えー」
「えーじゃない。お前は円に嫌われてるんだろ。今はまだ行かない方が良いんじゃないか」
「そっかー。じゃあしょうがないねー」
「悪いな」
「どうして未来が謝るのー? あたしは分かんないです。あたしは平気だし、円さんはきっとあたしの事嫌ってないと思うよー」
「そうか」
そうだったらいいんだけどな。
いやきっとそうだ、心の底ではあいつは茉莉の事を今でも思っていてくれるはず。でないと罪在の森であんな会話はできない。
やはり茉莉も俺が悪いって分かってるんだろうな。
それでも言葉にしないのは、こいつの優しさなのか、それとも厳しさなのか。
このぽやんとした幼なじみがただ、甘いだけの人間でない事は長い付き合いでよく分かっている。
茉莉は、できる事なら俺に自分で気づいてほしいと思ってるのかもしれない。
「ふんふんんふーん、かんせつかんせつ……」
茉莉は人の気も知らないで茉莉は奇妙な歌を歌っている。
いや本当に良く分からん歌だな。
そんな珍妙な音楽がオープニングのアニメは最近放送されている番組にはなかったはずだが?
「何だそれ」
「関節くんの歌だよー。交通標識です!」
「ああ、あれだったのか」
いつもの待ち合わせ場所にある折れ曲がったやつの事らしい。
「変な歌だな」
「えー。変じゃないよー。とっても可愛いお歌ねって、未来のお母さんに褒めてもらったもん」
「茉莉、それはお世辞だ」
「あー、未来ひどいんだー」
そういえば似たような鼻歌を一か月前に母親が歌っていたような気がする。
最近は聞いた事がないが、確かに記憶に残っている。俺の母親はつくづく影響されやすい人だ。
茉莉は俺の指摘が腹に据えかねたのかふくれっ面になって、歌うのを止めてしまった。




