第44話 二人目の思い
その後の細かいやり取りは、覚えていなくてもいい事ばかりだった。
俺は大事な記憶だけ、頭に刻み込んだ。
結論だけ言う。
俺は巻き戻る事にした。
巻き戻る事が、できた。
これで何度目のループになるのか、そろそろ回数把握が難しくなってきたが、巻き戻らないという選択はどこにもなかった。
今度こそ先輩を救って見せる。
絶対に。
だが、前回と同じ轍を二度も踏む気はない、巻き戻る前に出来る限りの情報を集めることにした。
先輩はすぐに病院に運ばれたらしいが、玄関ホールで見た時にはもうすでに息が無かったらしい。
俺は、とった行動の何がいけなかったのかを考えていく。
家の中にいても先輩は死んでしまった。
だが、前回と違って情報はある程度入って来た。
ライバル製薬会社がやった可能性が高いと、そう執事である龍打さんから情報を得られた事は大きい。
そいつらが雇ったエージェントが、本物となり替わって先輩の前に現れたらしい。
先輩は元から多くの人に恨まれていた。
人の為になる行いが必ず、人から喜ばれる事とは限らない。
学校生活を見ていただけでは分からなかった事だが、多くの権利や利益が動く大人の社会の中では、聡明で頼りになる先輩の存在は、必ずしも歓迎できる人間ではなかったらしい。
新薬の開発を妨害しようとするものや、その成果を横取りしようとするものが、業界には多くいて、先輩に日常的に細かな嫌がらせはされてきていたらしいのだ。
最初の時もおそらくその人が先輩を殺したのだろう。
そこまでやるか、と思う。
はっきり言って理解できない。
人殺しだ。
人が死んでいるのだ。
理由が分かってもすぐには信じられなかった。
でも、現に事件は起こっている。
犯人は明らかに、先輩をターゲットに定めていて、狙ってきている。
一度ならずも何度までも俺の知人を手にかけた。
前々から計画を練っていたのだろう。
顔も知らない誰かに怒りがこみあげてくる。
なぜ桐谷先輩が狙われなければならない。
何も悪い事なんてしていないというのに。
先輩は立派だ。
いつも誰かの助けになれるよう、部活動の事も会社の事の頑張っていたというのに。
そう何度も相手の思う通りにするわけにはいかない。
今度こそは、先輩を守らなければ。
そう、決意した瞬間……俺の記憶の蓋が、少し開いて過去に起こった出来事を思い出せるようになった。
巻き戻りを引き起こす為の道具がなぜ銃だったのか、分かったのだ。
あの後、先輩に付き添った病院の外へと出て、赤い銃の事を考えれば手の中に固い感触が生まれていた。
それを俺は、躊躇いなく自分のこめかみへと突きつける。
俺には分かるのだ、その銃が他でもない俺の為に存在していると言う事が。
正確には俺の願いの為にだが。
悪いようにはならないという不思議な信頼感があった。
しかし、
引き金を引く直前に、一通のメールが届いたのだ。
「え……」
その文面は俺に衝撃をもたらすものだった。
「何でお前が……」




