第38話 先輩の部屋
部屋は俺の部屋の三倍くらい広いし、家具の大きさとかもそうだし、学生の普通の部屋にはないような仕事用なのか高そうな機械があちこち置いてあるし。
「広い、ですね」
「そうかい? 基地と同じくらいだろう」
いや、基地も普通じゃないくらい広いですから。
遠慮なくと言われてこれで本当に遠慮なく過ごせるのは、茉莉や円ぐらいだろう。
……思ったより、結構いたようだ。
とにかく気後れしながらも、適当なところにある椅子に腰かける。
先輩は、学校の鞄を開けて整理をしているところだ。
その後ろ姿を見つめながら、考えを整理する。
今までの1月10日で、先輩から最後のメールが来たのは、おそらく時刻にして日付が変わるちょっとまえごろだったと思う。
俺が気が付かなかったとしても、円の職業を考えると、先輩の最後はたぶん最初は円に伝わるはずだ。
だが、それで俺の所に知らせが来ても、全てが終わった後だ。
最初の1月10日には、出られなかった着信音が下のを覚えている。おそらく先輩から眠りにつく前にメールが来たはず。
二度目の1月10日は、眠れなくって茉莉とずっとやりとりしていて、それどころではなかった。
三度目の1月10日では、ちゃんとメールを受け取れた。
四度目の1月10日には、その場にいたからメールを受け取る必要がなかった。
ほんの少し前の出来事だ。今もあの時背中に背負っていた先輩の温もりを思い出せる。最後の言葉を伝えた先輩の声も。
もうあんな事にしてはいけない。
先輩が襲われるだろうその時間に、なるべく一人にしないようにしなければならない。
前の世界では、先輩がどうして襲われる事になったのかについて、その事情を詳しく聞けなかった。だが、本日の先輩の予定については下校時に本人に聞いておいたので、俺が関係しなかった世界で先輩が襲われた時の状況なら、何となく推測できた。
家にやってくるまでに聞き出した情報によれば、先輩の今日の予定は、九時ごろに会社に行って、忘れ物を取りに行く為に外出するつもりだったらしい。
だから、何かあるとすれば、家の外で巻き込まれるという線が高い。
前の世界も空き家ならぬ空き施設同然だった基地にいて巻き込まれた。
なので、とりあえずは外出させない対策をとるべきだろう……。
一言家を出ないように言えば良いだけかもしれないが、まだ家の外でどんな事があるのか具体的な事が分かったわけではないし、それにちゃんと先輩の事を見て置かないと不安だったから。
もう一度時間を遡れるとは限らない。
今までとは巻き戻りの仕方が違う。
俺が1月10日今日を経験できるのは、これっきりかもしれないのだ。
だから、できることは何でもするべきだろう。




