第37話 屋敷
九条邸 PM6:00
その後は、あぜんとしながらわなわなしている円を部屋から追い払い、先輩の部活が終わるのを待って、下校。
十数分かけて、目当ての場所へと辿り着いた。
先輩の家だ。
身の丈以上の高さのある門を見上げる。
門がこれだから、家もそれだ。
つまりでかい。
桐谷先輩の家はそれなりの規模だった。
まさか家に向かって規模だのという言葉を使う日がくるとは。
先輩は製薬会社のアドバイザーをしていて、学生でありながらも日常的に会社の有用な立場を任されるくらいだから、ある程度は裕福な生活を送っているのだろうと想像していたのだが。
まさか家の規模が、屋敷と形容できてしまえるサイズだったとは。
部屋数とかどうなっているのだろう。
「む? どうした未来」
「い、いえ」
先輩に促されて、門を通って庭へ。
で、門から実際のその屋敷まで歩いた時間と距離に驚かされ、玄関にはいって執事らしき人に出迎えられたのも驚いた。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ああ、ただいま」
しかも、お嬢様。
住む世界が違う。
普段見ている分には、先輩に対してお嬢様なんて言葉はまるで浮かばないので、凄いギャップだ。
「このまま部屋に行くよ。こちらは私の友人の……」
呆けている間に先輩が自己紹介をしてしまった。
俺はかろうじて最後に、執事らしき人に会釈をする。
人の良さそうな白髪の老人だ。
それで、歩き出した先輩についていって、広い通路を通ったり長い階段を昇ったりしていたら、いつの間にか先輩の私室へと着いてしまっていた。
大きな扉を開いて、迎え入れられる。
「ふむ、ようこそと言っておこうか。人を出迎えた経験はあまりないので、失礼があったらすまない。好きな所にかけてくれたまえ」
「失礼なんてないですよ」
円あたりだったら、「さっさと入んなさい」とか「適当に座っといて」とか言いそうだけど、先輩はやはりそんな事はなかった。
促されて桐谷先輩の部屋に入るのだが、正直落ち着かない。
眼の前にある光景が、俺の思ってる部屋じゃない気がするのだ。




