第34話 ややこしい乱入者
部屋に侵入してくるなり円は、いきなり俺に文句をぶつけてくる。
「ちょ、ちょっと何勝手に話進めてるのよ、未来が桐谷の所に泊まるぅ? 駄目に決まってんじゃないの!」
「何で知ってる」
事情の把握が早すぎだろ。
今、話したばかりの話題なのに。
なんて邪魔な奴なんだお前。
そして、何でこう大事な時に邪魔をする。
恨みがましい目線で見つめるが、相手が動揺するような気配は全くない。
円は腰に手をあてて仁王立ちになりながら、なおも言葉をぶつけてくる。
「クラスメイトから聞いたのよ。未来いない? って、聞いたら、なんか色々言いながら部室へ行ったって」
「……」
どうやら俺が墓穴を掘っていたようだ。
そういえば、教室でアイデアを考えるのに必死なあまり二、三言内容を漏らしてしまった気がする。
ノートにもメモしてしまった。
それを聞かれていたか、見られていたのだろう。
迂闊だったかもしれない。
男勝りな円には、同性のファンが結構いる。
さばさばした性格に、警察官も顔負けの護身術をたしなんでいるとあって、我が高校の女生徒たちからはヒーローみたいな扱いを受けていた。
停学食らった過去を持ってて、全校生徒から満遍なく距離を置かれている俺とは大違いだ。
円は、俺にはよくつっかかってくるが、他の人間ならちょっとした頼み事も快く引き受けるし、女性の悩み相談でも頼りになるらしい。そういうわけなので、彼女に不都合な事があると自然と情報が向かってしまう。
俺が先輩の家に泊まる事が、どう円の不都合に繋がるのかは知らないが、俺とよく一緒にいる円の品位が落ちるとか懸念されているような感じだろう。
しかし、円が基地に向かわずまだ学校に残っていたとは。
もうてっきり学校を出たばかりだと思っていた。やはりそうそう同じ行動ばかりする奴ではないらしい。俺の身の回りにいる連中は。
考えている内にも、円は大口を開けて次から次へと質問をぶつけてきていた。
どことなく焦っているようなそんな様子で。
「まったく良識を疑うわ。常識もね。一つ屋根の下で、男女で寝泊まりするとか。未来、本気なのかしら?」
声が大きい。
噂になったらどうしてくれる。
しかし、これで彼女が何を懸念しているのか分かってしまった。
それは不安にもなる。
けれど、今この状況で円や先輩の気持ちに気がついているなんて言ったところで、話がややこしくなるだけだ。
「何だよ、円。いつもはけしかけてくる方だろ。気があるだの、そういう趣味があるだのって……」
「それは冗談だから良いのよ。本当にやるって言ってたら、むしろアタシは止める方だわ。アンタを信じてないとか、間違いが起こるとか、これはそういう問題じゃないの、アタシが言いたいのは。そんな事して人にどう見られるかってこと、悪い噂が立ったらどうすんのよ」
てっきり信用されてないとか、自分の事を考えていたのだとばかりに思っていたが、そういう話ではなかったらしい。
一応俺達の事を心配してくれていたようだった。
だが、円が大声で言っているせいで今現在、話が大きくなりかけている事には気が付かないのだろうか。
そんな俺の顔色を、承諾しかねて憮然としているものだと見たのか、円は眉を吊り上げながら俺に詰め寄って来た。




