第33話 部室へ
高校 PM4:00
まったく同じ内容の授業を聞くというのはつまらない。
途中で気を抜いて、居眠りしそうになったがなんとか堪えた。
日ごろ散々茉莉の授業態度を心配している俺が、同じ過ちを犯すわけにはいかないだろう。
午前、午後と、何とか一日分のスケジュールをこなした俺はさっそく桐谷先輩のいる部室へと向かった。
基地に顔を出すどころではないので、茉莉にはメールでその事を前もって伝えておいた。当然突発的な夕立の事もだ。寄り道しないで帰れ、という具合に送信。
「ん、未来か。珍しいな」
尋ねると、先輩は部屋の中で部員たちと共に、忙しそうに活動していた。
先輩が生きてそこにいる。
その事にほまずっとした。
部屋の中では、他の人達は俺の様な来客に気を向ける余裕がないようだった。
彼等が活動しているのは、基本構造部とかいうなかなか耳にしないような珍しい部活動だ。
この世のありとあらゆる物質の基本構造について把握するというマニアックな活動内容を続ける彼らは、二か月後に控えた大層なコンクールへの発表準備に追われて、猫の手も借りたいような状況らしい。
会社の仕事までしてるのに、桐谷先輩は手がまわっているのだろうか。
忙しく動き回り、何かの基本構造だのとかいうよくわからない模型やら何やらをいじくりながら情報をまとめている人達の中で、先輩の時間を割いて話していると、段々申し訳ないような気持ちになって来る。
だが、先輩を守るためなのだ。
気にしてはいられない。
「大したもてなしもできなくてすまないね。何か用かい?」
「いえ、こちらこそ、急に押しかけてすみません」
そんな中で嫌な顔一つせず、こちらの事を気にかけてくれる先輩は、本当に円とは大違いだ。
爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
あいつだったら、適当にしっしと手をふって犬でも追い払うようにするだろうし。
あんまりこういう事はいいたくないが、俺は小声で先輩に要件を伝えた。
「実はあの……先輩、今夜先輩の家に泊めていただけませんか?」
「……ん? 構わないが、何故だい?」
若干の無言を置いて思案した先輩は、不思議そうに小首を傾げる動作をする。
後輩の意外な頼み事に驚くのも無理はないだろう。
だが、これしか方法はないのだ。
「先輩にちょっと課題の事で教えてもらいたい事があって」
「何か分からない事でもあるのかい?」
「はい、どうしても……」
「ふむ、力になれるかどうかは分からないが、私でよければ。ざっとで良いからどんな所なのか教えてもらえないだろうか」
部室に来るまでにあらかじめ考えておいた、小難しそうな問題を口に出しながら、先輩の様子を伺う。
言い訳についてはあらかじめ考えておいたので、ボロはでていないはず。
見た所不審がられてはいないようだから、大丈夫そうだが……。
「先輩の今日の予定とか、大丈夫ですかね。学校の後に、何かあるとか行くとか……」
これなら自然な流れで、先輩の予定が聞けるはず、とそう思って耳を傾けるのだが、そこに第三者が乱入してきた。
部員ではない。
扉を入って来たのは一年上の一応先輩女子生徒、というか円だ。




