第26話 襲撃者
星降りの丘 秘密基地 PM11:00
それからは積もる話がたくさんあったので、久々に先輩と円との三人で基地に集まった。
恥ずかしい話だったり、悲しい話だったり、嬉しい話だったり、色々としたが、そうやってただ三人で話せること自体が嬉しかった。
ひと段落ついたところで、俺は夜風に当たる為に基地の外に出た。
冬の夜だけあって、空気は凍りつきそうな程に冷たい。
けど、浮かれた心を冷やすには、それくらいでちょうど良かった。
明日、いつもの場所で茉莉と出会ったら、あいつに礼を言っておかなければならない。
妹のようにずっと接してきたあいつだけど、結局あいつはいつだって大事な所で、行ってはいけないところにいかないように、俺を引き留めてくれる。
行動も言語も幼稚なやつだが、間違いなく俺よりあいつの方が大人のようだった。
「メールで一言くらい礼言っとくか」
起きてるかどうか分からないが、今までの世界だったら起きていたのだから、多分その可能性は低くないだろう。
あいつのお気に入りの深夜アニメでもやっていたんだろうか。
視るなら録画して視ろって口を酸っぱくして何度も言ってるというのに。
携帯を取り出して、操作しようとすると、基地の方から、窓ガラスが割れる音がした。
次いで盛大に物が壊れたような派手な音がいくつもする。
「何だ?」
物騒な気配に、俺はあわてて基地に戻った。
先程まで三人で揃って話していた、広間はこの短時間で何者かに荒らされたかのようにぐちゃぐちゃになっていた。
「一体何が……」
言いながら、部屋の中を見まわしていると。
大勢の黒服たちと向きあう円が立っていた。
怪我をしたのか、彼女は肩から血を流している。
その近くで、桐谷が血だまりの中で倒れていた。
「――先輩!」
声を上げたことで、黒服達がこちらに気が付いて、襲い掛かってこようとする。
だが、連中の進路を阻む様に円が立ちはだかり、持っていた警棒で相手を打ち据える。
警棒?
何でそんな物を持ってるんだ。
いや、そんな事より。これは一体どういう状況だ。
何でアクション映画みたいな事が現実で起きてる。
俺が言うべき台詞じゃないだろうが。
円はこちらを振り向きもせずに、短く話しかけてきた。
「未来! 桐谷を連れて逃げなさい。こいつらの狙いは桐谷よ!」
「先輩が? 何でだよ!」
「そんなのこっちが聞きたいわよ。とにかく逃げろって言ってんの!」
「できるわけないだろ!」
自慢ではないが、俺は無駄にただひねくれたたわけじゃない。この町に生息している不良共のほぼ全員にケンカを吹っかけて回った記憶があるからな。
普通の高校生よりは、立派に荒事慣れしている。
俺は円を助ける為に隣に立った。
襲い掛かって来る黒服の立ち回りは、素人のする動きじゃなかった。プロという程じゃないけれど、よくこういう事に縁があるような人間の、独特の動きをしていた。
「馬鹿、アタシは大丈夫だってのに。桐谷を病院に運ばなくちゃ駄目じゃない」
「先輩が助かってもお前に何かあったら意味がないだろ」
「あら、アタシはそんなにやわじゃないわよ」
いくらやかましくド根性大根みたいにたくましい精神してても、一応女だろ。
円を放っておいて、俺だけ逃げるなんてできるか。




