第25話 彼だけがその意味を知らない
あやふやな姿の声の主が消えて、その場にもう一つ声がかかった。
俺達の背後から聞こえるのは、聞きなれた声だ。
「あーっ! 未来石ころ集めちゃったのー? あたしが集めて魔法使いになりたかったのにー、ずるいよー」
「茉莉」
「え、茉莉ちゃん……?」
子供じみた願い事を言って、頬を膨らませる幼なじみはすぐこちらまで歩いて来て、円に声をかけた。
「円さん、だいじょうぶー? げんき?」
「え、ええ。アタシは……そうね。大丈夫だったわ。そこのヘタレほどじゃないもの」
「そっかー、良かったー。未来もだいじょうぶ?」
「何がだ」
「もー。心配してるんだから、こういう時は素直に心配してくれてありがとうって言うんだよー」
唐突にそんな事を言われてもな。
俺が大丈夫なのは見て分かるだろう。
いや、そういうことを聞きに来たんじゃないんだろうな。
「桐谷さんと円さんとちゃんと話をしてあげてねー? 逃げちゃったらあたしは嫌です」
茉莉には全部お見通しみたいだ。
それを言うならまず一番に返さなくちゃいけないのは、お前だろ。
「あたしは大丈夫です! 未来の事は、何か大体わかるから!」
だいたいで決めつけて良い内容じゃないだろ、そういうの重要な事は。
だけど、そうかお見通しか。
俺は茉莉の頭をいつものように撫でた。
いつもは嬉しそうにする茉莉だが、今は不満げな表情をしている。
「選んでやれなくて悪かった」
「むー、子供あつかいしたー。あたし、せっかくぼかしたのにー」
俺は意地悪らしいからな。
しかし、妹のように接していた幼なじみにこんなに心配されるなんて、俺はどこまで意気地なしなんだろうな。
「未来がしっかりしてる様に見えるのって、見た目だけー?」
言い返すのが難しい事をずばり言うな。
だけど、これできっと、1月10日のループから抜け出せる。
仲直りできて、前みたいな日常が戻って来る。
俺を見て、笑みを浮かべた茉莉は、円に向き直る。
「あのねー円さん、桐谷さんによろしくって伝えてほしいなー。あたしはお話し合いには行けません」
「分かったわ。任せてちょうだい、茉莉ちゃん」
敬礼の動作で頼み事をした茉莉は、元来たであろう道へ振り返る。
そして、学校へと戻る前に。
「未来。これから先、どうしても躓いたら宝探ししてね。見つけてくれるの、あたし待ってます! えへへ、大好きだよ」
そんな事を言い残して去って行った。




