第24話 奇跡の石
円は空をあおいで、生い茂る派の隙間から見える空をぼんやりと眺めている。
いつもいい加減な事しか言わない口だが、今は至極真剣に話を続けている。
「罪と向き合う事ができた人間は、災の寵愛を受け特別な力をもらい受ける。人それぞれ解釈が違っていて、超能力が使えるようになるとかいう奴もいるけど、アタシは願いが叶うって解釈かしらね」
「願い?」
視線を戻した円は、俺の胸板を軽く叩いてみせた。
「あら、もう忘れたのかしら、未来おじいちゃん。茉莉ちゃんにつきあって、噂話を確かめるため、この森を歩き回った事があるでしょう」
ああ、そういえば、七つの綺麗な石を集めれば、何でも願いが叶うとかっていう話だった。
それで円と先輩と一緒に、この森で見つかりもしないものを散々探し回ったのだった。
収穫はゼロだった。
石?
そういえば、最近気になる物を見たような気がしたな。
確か二回目の1月10日を過ごしていた時に。
学校サボって基地にいた時に見つけたんだったか。
それで、桐谷先輩に持ち主を教えてもらったのだ。
「クマの箱に石が五つ入ってたな」
「んなっ、アンタなんでそれを。も、も、もしかしてしまい忘れてた……?」
言えば、円がすごい勢いでこちらに近寄って来て、どもりながら詰問してきた。
やはりあれは円のだったか。
前に来た時は結構探し回っても、一つも見つけられなかったのに、それを一人で五つも見つけたのか。
とすると、円自身はこの森に何度も来ているのかもしれない。
そうまでして、何か叶えたい願いでもあったのか? こいつに。
「も、目的なんて言わないからね。聞かれたってアンタなんかに教えるもんですか」
円は必死の形相でそんな事を喚いている。
そんなに慌てるほど隠したい願いなんだろうか。
赤くなったり、青くなったりせわしない事だ。
普段やられている分を返す為に、もう少しそんな円を見ていたくはあるが、そこまで意地悪をするのはさすがに気が引ける。
先程思い出した事を考えれば、余計にな。
俺は言うべき事を思い浮かべたまま、円に一歩距離を詰める。
「円……」
「な、何よ。口が裂けても言わないわよ」
被害妄想もたいがいにしろ。
呆れてくるが、そんな言葉は口から出てこなかった。
なぜなら、足元に何か違和感を感じたからだ。
今までとは違う固い感触に眉をひそめて、視線を落とすと。
そこに二つの石が落ちていた。
円が驚いて拾い上げる。
「え、これって」
持ってきていたのか、それ。
驚く彼女は基地から持参してきたのか、懐から見覚えのあるクマの箱を取り出した。
前に見た通りの同じ箱だ。
丁寧に開けられたその箱の中に入っているのは、五つの石だ。
俺の足もとに落ちていたものと同じような物の。
見たところ、ただ綺麗なだけの石にしかみえない。
それぞれ色は違っていて、不純物の交ざっていないような石なので、綺麗だとは思うが。
特に何の変哲もない物体だ。
けれど、見つめていると妙に心が惹かれるというか、目に留まるようなそんな感じがする。
円が信じられないものを見る様な目で見つめていると、周囲が光に満ちた。
「な、何よ!」
キョロキョロと辺りを見回して及び腰になる円だが、無理もない。
俺も結構驚いた。
同じ一日を何度も繰り返してさえいなかったら、無様な悲鳴くらいは上げていたかもしれない。
驚く俺達を置き去りにして、状況は変化する。
目の前に小さな人影が現れた。
少女の様な姿をしたそれは、輪郭がぼやけていて、姿、形、色もよく視認できない。
『――罪の懺悔を……待ってる』




