第22話 分裂のきっかけ
刺激された記憶が、次から次へと関連する思い出を再生して、情報の束をひもといていく。
相変わらず、それが一体いつの出来事なのか、まったく記憶が定かではない。
けれど、それは確かに起こった出来事だ。
夢の中の事ではないことぐらいは、区別がついた。
大事な事、とても大切な事だ。
どうして忘れていたのだろう。
「あたし、未来と一緒にまわりたいです!」
「む、未来は確か、学校の勉強に関して私に聞きたい事があったのではなかったかな」
「え、えっと。アタシだってこいつに用があるのよ。色々普段言えない文句とか文句とか、この際に。とにかく話があるの!」
それは地元の公園で祭りが行われていた時の事だ。
周囲では出店が多く出ている。周囲にはにぎやかな雰囲気があった。
この辺では結構有名な祭りで、それゆえにその日は多くの人が訪れる。
夜中。
公園の中でごったがえす人ごみの中、俺達は出店をまわることを約束していた。
だが、なぜか茉莉も先輩も円も、狙ったかのように俺と回りたがった。
三人は勝手に盛り上がって、「一時間未来と一緒に屋台を練り歩く権利」とやらをかけて、出店で勝負し回っている。
権利を賭けて勝負している間に、歩き回る地域をほぼ一周してしまっている事にも気が付かないような白熱ぶりだった。
戦況は拮抗状態で、誰が勝つのか分からない様子だった。
茉莉はゲーム好きの知識を生かして、先輩は科学的・物理的な知識を生かして、円は掃除やら炊事やらを難なくこなす持ち前の器用さを生かして、見事な手腕を見せている。
だが、最後の方では、茉莉が思わぬ頑張りを見せて権利を獲得してみせるのだった。
「やったー。やたー。あたし勝ちました。未来ー。一緒にまわろー」
俺は、そういって無邪気に喜んで見せる茉莉を連れて、二周目の屋台巡りをすることになったのだった。
その時の俺は、茉莉のその喜びの理由は、お気に入りの頼れるお兄さんを楽しいイベントで独り占めできるからだとそう思っていた。
でも、それは違ったのだ。
「あたしねー。未来のことが好きだよー。えーと、愛してます?」
ほとんどの出店をまわった最後に、妹のように思っていた幼なじみの少女からそんな告白をされた。
最初は信じられなかった。
けれど、茉莉は本気だった。
俺は、その言葉に何て返したのだろう。
思い出せない。
けど、本気で取り合おうとしなかった事だけは確かだった。
そんな事になったら、きっと俺達は元の関係には戻れなくなる。そう思ったからだ。今も反射的にそう思っている自分がいるのだから、間違いない。
俺は、気に入っていたのだ。
桐谷先輩がいて、円がいて、茉莉がいる。
頼れる先輩を頼って、友人と悪態をつきあって、頼りない幼なじみの面倒をみるという、そんな関係が。
だから、俺は……きっと。
告白の返事をしていない。




